1話 猫の手は可愛い、幽霊の手は潰せ(過激)
どうもこんにちは。
処女作君が一向に話が進まなかったんで、息抜きに書いてみました。
仕方ないやん。
3万文字超えたところで、致命的な設定上の穴の存在に気が付いて全修正することになってみ?
データがうっかり消えちゃうでしょ?
朝。
けたたましく鳴り響く目覚まし時計を半ば殴りつけるように黙らせて、私は布団から体を起こして部屋を見渡す。
飾り気のない白い天井から垂れている足、何かを探してフローリングの床を這いまわっている手、窓の外には本来ならばなかなかの発展を遂げた市街地が見えるはずだが今は頭から血を流した男がニタニタ笑いながら顔を窓に押し付けている。
因みに私の部屋は4階の角部屋で、今男が覗き込んできている窓には足場となるようなものは一切ない。
つまり浮遊している。
まあアレは毎朝決まった時間に部屋を覗き込むだけで何の害も無い。
いったいどんな人生を歩んだら毎日女性の部屋を覗き込む幽霊になるのやら。
ため息をつきながらベッドから立ち上がり、朝食を食べるために行きつけのカフェに向かう準備を始める。
まず洗面台の前に立ち、顔を洗う。
くすんだラピスラズリのように青みがかった瞳、肩甲骨のあたりまで伸びたトパーズのような艶のある金髪、肌の色は日本人より少し白く目元つり目で、口元はふっくらとしる。
十人に訊けば、7人が可愛いと評するような顔だ。
これが私。
結構容姿には自信があるのだ。
それにも関わらず私は鏡を見ることがあまり好きじゃない。
何でかって?
鏡に映るのは異国人風の私の整った顔と、私の肩に手を置きながら『殺ス...アンタサエイナケレバ...殺ス』と不穏なことを呟き続けるびしょ濡れの女性だからね。
彼女には入居初日に殺意マックスで襲われたが結局私を殺すことはできなかった霊だ。
何でも彼女はこのマンションができる前にあった豪邸のご令嬢だったらしい。
婚約者が異国の女性と浮気をしてそれについて問い詰めたが、婚約者は逆上。
抵抗する彼女を無理矢理庭にあった池に生きたまま沈め、殺してしまったらしい。
それ以来この土地にはその御令嬢の怨霊が出るとのうわさだ。
因みに彼女はどうやら浮気相手の女の顔をよく覚えていないようで、イギリス人とのハーフである私をその浮気相手だと勘違いしている。
彼女が私を殺せなかったことを確認した後、懇切丁寧にお話したときに知ったことだ。
何度説明しても一向に納得してくれないので、最近は無視するようにしている。
タオルで顔を拭き、洗濯機に投げ入れつつ彼女を蹴り飛ばしてから服を着替える。
『ア....モットォ...モットハ激シク...』
後ろでやけに色っぽい声が聞こえるが無視して着替える。
シュルシュルと音を立ててネグリジェを脱いだ私は再び鏡を見る。
露わになった自分の体を見下ろしつつ、15年前から一切変わらないことを確認しまたため息をつく。
私の名前は諸星ミア。
今年で31歳になる不老不死者だ。
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そもそも私が不老不死になった経緯を説明しないといけないだろう。
まあ簡単に言うと、自殺をしようとしたら別の自殺願望を持った奴に邪魔されて、挙句自分の分まで生きろと遺言を残されたら不老不死になったのだ。
何言ってるかわからないって?
大丈夫、私もだから。
何なら人の自殺の邪魔をするなと。
それ以来私は私はいろいろな手段を使って死のうとしたが、その悉くが失敗した。
自分を包丁で刺そうとすれば、目に見えない誰かに刃物を手から叩き落される。
飛び降りようとしたら、あと一歩のところで金縛りにあう。
交通事故が頻発する場所で丸一日待機したこともあったけれど、私に向かって突っ込んできた車が不自然な挙動をして避けていく。
偶然だったけれど、通り魔に襲われたことだってある。
大きく振りかぶられたナイフが私の胸に吸い込まれていく様を見たときはやっと死ねると喜んだものだ。
結果は今私が生きていることからもわかる通り、私は死ななかった。
確かに私の胸につきたてられたはずのナイフが、犯人の胸に突き立てられていたのを見た日には乾いた笑いが漏れた。
ある時は首を吊ろうとしたけれど、紐が切れた。
...私の体重が重いわけじゃあないことを念の為に言っておこう。
むしろ一般的な高校生より少し軽いくらいだ。
まあ色々あって、1年経つ頃にはさすがの私も”死ぬ”ことに対して諦観に似た思いを抱いた。
じゃあ何もせずに一日をだらだらと死んだように暮らそうと思ったけれど、そうもいかなかった。
1年にも及んだ死を求める行為。
質が悪いことにそれが私をほんの少しだけだが変えてしまった。
常に何らかの目標に向かって行動していないと無性に落ち着かなくなったのだ。
今までは死を目標にしていたからこそ自覚することがなかったが、その目標が失われて初めて気が付いた。
死んだように生きることは許されず、何回も頭の中で『俺の分まで生きてほしい』という言葉がリピートされた。
今思い出しても腸が煮えくり返る思いをする、私の自殺の邪魔をしたやつの遺言。
その言葉に従うようで癪だが、私は前向きに生きようと思って今の私がいるわけだ。
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さて、私が住んでいるのは一人暮らしには少し贅沢な3LDKの部屋は近所では有名な事故物件だ。
...いや、これは少し語弊がある。
このマンションそのものが事故物件と言った方が正しいか。
ここは近所でも有名な心霊スポット、通称ホラーマンション。
築10年で4階建、総部屋数は17部屋、全部屋オートロックありで一回には共用の集会場がある。
最寄り駅から渋谷まで約25分。
立地は上々、建物自体もそこまで古いわけではなくむしろ新しい。
強いて問題点を挙げるなら、ここの新規入居者のうち7割は3か月以内に何らかの理由で退去し、その退去者の内半分は息が止まった状態で出ていくことだろうか。
後は...そう、やたらと五月蠅い点も追加で。
しかしこれらの点を無視すれば家賃は月2万5千円。
非常に安い。
誰もがこのマンションに入居することを敬遠するが、私にとっては些細な問題。
いやむしろ死ねる可能性があるのならば喜んで飛び込んでいく。
お前前向きに生きるんじゃないのかって?
ハハハ、第一優先事項は今も昔も死のままだよ!
なお、幽霊の力でも私は死ねない模様。
つまり私にとってはただの安いマンション。
何なら近所迷惑なんて考えなくてもいい分騒ぎたい放題。
今の私にとってはこの上なく優良物件なのだ!
清楚系の服を選び、薄く化粧をして、鞄を探す。
「あ~、昨日飲みすぎちゃったかなあ?
ここら辺に放り投げたはずなんだけれどなぁ」
ソファーの上でムムムっと唸りながら昨日のことを必死になって思い出す。
確か昨日は...102号室の室屋さんと共用の集会場で酒盛りをしてそこから何とか部屋まで戻ったんだっけ?
途中で何回か足をつかまれた気がするけど、部屋に入るときに鞄から鍵を取り出したからあの時までは確かに鞄はあった。
そこから部屋に入って鞄を...そう、ソファーに投げて...今見あたらないと。
おかしいなあと思いながらソファーの正面に備え付けたテレビを見る。
最近はパソコンゲームばかりをしていたため少し埃を被り始めたテレビの画面にはソファーでだれている私が映っている。
丁度ソファーの下を朝から這いずり回っている手が鞄を引き摺りながら移動をして...おお”!?
「お前かこらー!」
ゴキィッ!!
ソファーの下から這い出てきた手を全身を使って踏みつける。
手からなってはいけない音が聞こえた気がするけれども、どうせ幽霊関係ない!
何なら私の鞄を盗った罪は重いと知れ!
手は驚いて鞄を離しガサゴソと風呂場へと駆けて(?)いく。
ここであの手を追いかけていくのは初心者がすること。
熟練者の私はここで追いかけようと、既にあの手が姿を消していることなんて容易に予想できる。
フッと鼻で笑いながら鞄の中身を確認、何もなくなっていないことを確認し私は部屋を後にするのだった。
【補足君】
ホラーマンション:結構有名なホラースポット。
現在住民は主人公含め5人。
皆「幽霊なんて関係ねえ!、酒飲むぞ!」って精神性をしてる。
なお、それを見て「何だやっぱり噂は噂か」と思ってはいけない
今でも1か月に一人のペースで肝試しに来た人が亡くなっている。
何でまだこのマンション存在してるんだ。
後書き いやね、違うんですよ。元々異能力バトル系が書きたかったのに、設定を練りすぎて逆に設定に囚われたっていうか...まあいいや。
なお、初心者ですのでまだまだつたない文章ですがご指摘改善点誤字などあればお気軽にどうぞ