銀翼連ねて
銀翼を煌めかせ爆撃機の群れが敵地に向けて飛ぶ。
俺はその中の1機、ブルーローズの副操縦士。
乗機している爆撃機の機首の直ぐ後ろに、青いバラの花束を抱えた妖精の可愛い女の子が描かれている。
ブルーローズの名付け親は機長の大尉、なんでも大尉の奥さんが園芸家で、ブルーローズを作り出そうと血道を上げているらしい。
群れの1000メートル程上空では護衛の戦闘機が飛行隊毎に編隊を組み、スネークダンスを舞っている。
スネークダンスを眺めていた目が太陽の方向で何かがキラキラと煌めいたのを捉えた。
警告の声を発する前に、ブルーローズの上部銃座が太陽に向けてドドドドドド!と銃撃を始める。
上空の戦闘機隊もダンスを止め太陽の方角から現れた数機の敵機に向けて突っ込んで行く。
ジェット機が2機、ジェット機特有の轟音を響かせ群れの真ん中を下方から上方へ駆け抜ける。
上方に駆け抜けた2機のジェット機の代わりに、それぞれ片翼をもぎ取られた2機の爆撃機が地上に落ちて行く。
2機のジェット機は太陽の方角から現れた数機の敵機を追い回している戦闘機隊に突っ込んで行った。
途端に戦闘機のパイロットが発する悲鳴が上がる。
「後ろを取られた、助けてくれー! ワアアァァー」…………
「速すぎる! 追い付けないぞ、振りきられたぁー……」
ジェット機に翻弄される戦闘機隊の隙をつき敵機が群がり集まって来た。
正面から突っ込んで来たメッサーにコクピット付近を銃撃された僚機が、パイロットが2人共戦死したのか操縦出来ない程の傷を負ったのか、機首を明後日の方角に向け飛び去って行く。
群がり集まり爆撃機の群れを狩っていた敵機が突然次々と機首を返す。
護衛の戦闘機隊を翻弄していたジェット機も何時の間にか姿を消していた。
高射砲エリアに入ったのだ。
高射砲弾がブルーローズの前後左右で次々と炸裂し、破片を周囲に撒き散らす。
高射砲弾に直撃された機が火だるまになった直後、爆散。
この高射砲エリアを抜ければ爆弾を投下する目的地だ。
爆撃を終えて高射砲エリアを抜け、一路味方の勢力圏を目指す。
だが幸運は復路で使い果たしていたようだ、高射砲エリアを抜けたブルーローズは、右翼の2基のエンジンから炎が噴き出し真っ黒な煙りが後方に長く伸び、左翼の1基も咳き込み何時止まってもおかしく無い状況。
編隊を組んでいた僚機には置いて行かれ、護衛の戦闘機の姿は何処にも見えず、敵機に見つかれば終わりだ。
大尉が怒鳴る。
「全員脱出しろ!」
俺はパラシュートを背負い、太陽光を反射して煌めいている真っ白な大地に向けてブルーローズから飛び降りた。