12一夜明けて
結局あの後ラノイはゴブリンを4体討伐し、イカサマすることなく耳を計10個剥ぎ取った。
「や、やっと着いた……」
通常ポラン平原とペイデルはさほど離れていないため、数分もあれば着く。
しかしゴブリン戦が予想より長引き、その上疲労で歩みが年寄り並みになっていたラノイがペイデルについたのは夕方であった。
剣を杖代わりにし、ギルドを目指す。ギルドに到着すると、受付嬢に耳を10個渡した。
「はい、確かに確認しました。こちら報酬の銀貨一枚です」
ラノイは銀貨を手に取りギルドを後にする。最初依頼書を見たときは割りのいい依頼だと思ったが、いざこうして見るとむしろマイナスな気すらする。これじゃ宿に五日泊まっただけで消えてしまう。
もう少し依頼は吟味しよう、そうラノイは心に固く誓った。
最後の力を振り絞り、ラノイは宿屋へ到着した。
「おかえりラノイさん。ご飯はもう食べたのかい?」
「あ、ベラリアさん、どうも。いや、もう寝ます」
何日も同じ宿に泊まり続けた結果、オーナーのベラリアさんにすっかり名前を覚えられてしまった。早々に会話を切り上げ、そそくさと自分の部屋へと入る。
武器も防具も脱ぎ捨て、汗臭さと空腹よりも眠気が勝っていたラノイはベッドに潜るや否や眠ってしまった。
「いででででででで!」
最悪の寝覚めだった。
体をちょこっと起こすだけで、全身の筋肉が悲鳴を上げる。かといって寝転ぼうにも、それはそれで苦痛だ。一挙手一投足がここまで億劫になるなら、日頃から体を鍛えておけば良かったと後悔する。
仕方なく苦痛に耐えながらベッドから起き上がった。さっきから腹の主張が激しく、おまけに体からは酸っぱい臭いがする。流石にこのままでは駄目だと思ったラノイは、まず何か腹に入れるために宿屋を出た。
ラノイは宿屋の近くにある市場に来ていた。前のこともあってなんとなく避けていたが、背に腹は変えられない。
「すいません、これ一本」
「毎度! 銅貨三枚ね」
すぐ近くにあった串焼きを買い、腹の主張を治める。朝からヘビーだな、なんて思いながらフラフラと歩いていると、
「あ、ラノイさん!」
「いでで!」
肩を叩かれ、思わず声を出してしまう。触れられた部分をさすりながら声のする方を振り返る。
そこにいたのはエレリアだった。
「え、あ、ごめんなさい」
「いや、大丈夫。自己責任だから」
ラノイはこれまでの経緯を話した。
「そうでしたか。お疲れ様です」
「いや〜、まさかゴブリンがあんなに強いとは思わなかったよ」
二人は話をしながら市場を歩いた。
「エレリアはなんでここに?」
「私は朝ご飯の材料を買いに。それより、その……」
エレリアは急にモゴモゴし始め、何かを言いたそうだった。
「ん? どうかした?」
「ラノイさん、その、お体が……臭います」
「体……? あっ!」
ラノイは赤面した。
体の酸っぱい臭い問題はまだ未解決のままだった。確かにここまで近いと、嫌でも臭ってしまう。
「ごめんごめん。すぐ洗うから、ほんとごめん」
「あ、あの、ちょっと」
エレリアは何かを言いたげだった。
しかしその時にはもうラノイは、筋肉痛の痛みは何処へやらと言ったような具合で走り去っていた。
「もう、せっかくお風呂ついでにご飯でもお誘いしようと思ったのに」
言うタイミングを逃したエレリアは、大人しく朝食の材料を買い、家へと帰った。
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