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WITCH   作者: アゴ神
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よろしくお願いいたします。



「工業地帯の油臭い奴等は、夢見がちで何よりだねぇ」

正面からケラケラと笑いながら、制服ではなく教官服をきた新入生らしい青年が近づいて話しかけてきた。



教官ラヴィと似た形状の教官服だが、一般新入生と同じ黒地に金の装飾をあしらったものを中肉中背の体型にピッタリ合うよう仕立てられている。

短髪の金髪は前髪がかき揚げられており、切れ長の翠眼はやや笑みを浮かべて、ミィとリンを見ていた。

腰には、グレーの一本物の長杖がかけられている。



背後には同じ配色の教官服を着た同世代の男女数名がこちらを見て何かボソボソと言っている様子。

皆同じように体型にあわせて仕立てられた教官服を来ている。

あんたは、と聞くリンに対し、

「僕はマテオ・ロードマン。ロードマンってのを知らない訳じゃないだろ?」

と、マテオと名乗った青年は語った。



「"雷の魔人 レオ・ロードマン"の、息子だろ?差別的な言葉は悪趣味だよ。なんのために話しかけてきたのさ。」

リンは呆れたように返した。さらに続ける。



「レオ・ロードマンから"雷の聖霊"を継承契約しただけのボンボンだろ。私たちに絡んでる暇ないなら、他を当たってくれていいんだよ。」

リンはなにか、呆れたように話している。



マテオはややムッとした様子だったが、すぐにまた笑みを戻し話す。

「別になんてことも無いんだ。だけど工業地帯の普通の学校からわざわざ汗水垂らしてきた君たちの口から"魔女"って言葉が出てきたから忠告にきたんだよ。」

と、話す。マテオは続ける。



「魔女、魔人は特別な存在だ。

炎を操る者、水を操る者、

ああリン、君のように聖霊を媒体にした刃を操る者、

そんなやつらは山のようにいるが、それぞれの種族属性の聖霊を駆る魔術師のうち、

もっともすぐれた魔力と功績を持つものだけが冠する称号なんだ。」

「入学時の魔力診断で8位に食い込んでるリン、君が言うならまだわかるんだがね。君のご友人の、掃除箒突っ込みバカはどうかな?」

マテオはミィを笑いながら見つめ、語りかける。



「君、本当に魔法が使えるのか?」



ミィは、それを受け、

「魔法が使えない奴が、どうやって地上400mもあるここまで単独で飛んでこれると思ってんの?」

と、呆れたように答える。



マテオは、ああそうなんだが、と前置き、

「だが、それしか出来ないだろ?君は。」

と、話す。

「魔法の種類は、基礎的な事をいっちまえば、"浮かせる、蓄える、放出する"しかない。それを高速で行ったり、付加価値として自然の摂理を加えたりすることが出来るのは、"聖霊の力や補助があるから"なんだよ。」



ミィがやや、マテオを睨む。

マテオは構わず、笑って言う。



「君、聖霊と契約をしていないだろう?

聖霊がいないとそもそも基礎的な魔力が一般人とかわらない。

契約があれば炎の聖霊ならば大地や相手を焼き殺せるし、水の聖霊なら圧力を生んで圧殺出来る上に、使いようによったら切断なんてのも出来る。僕の聖霊の場合なら狙った敵を雷の力で内側から壊せるしね。

だが聖霊がいないんじゃ、浮かせ、蓄え、放出することしか出来ない。精度も速度も威力も、聖霊の補助がなければ安定しない。精々、出来るのは飛んでノロノロ移動することと、まあ言えば放出する力でその辺の歩いてる奴をどついてやるぐらいは出来るだろうが、それぐらいのもんだろう?

そもそも、生まれて魔力があった時点で、聖霊と契約するための儀式を受けるだろうに、何故それすら-」



「おい、あんた」

にらみ合うミィと捲し立てるマテオの間に、たまらずリンが割ってはいる。



「ミィは正当な評価を得て此処にいる。あんたと同じく試験をパスしてね。

親の七光りでここに来た可能性もあるあんたと違って、ミィは実力でここにいる。

つっかかるなら"模擬戦"でとことん試したらいいだろ。

それが出来ないなら、何も言えないよ。」

リンは苛立ちを隠そうとしない。



ミィはリンの肩を触れ、マテオをまた睨んだ。

「あたしは、契約聖霊がいない。契約の儀式は行ったけど、聖霊とは契約できなかった。でも、模擬戦をするなら受けてたつよ。」

「せや!ワイら二人のチームワークに四角はあらへんで!」



突如、高くざらついた声が一同の間に響いた。

見れば、ミィの被っている魔女帽子がしゃべっている。



マテオはそれを見るや否や、大声で笑い始めた。

「おいおい、本当かよ。聖霊と契約が出来なかったからって君、野良魔獣をペットにしてるのかい!?

寂しすぎるだろ!?」



魔女帽子ダニエルは、なんやてぇー、と怒る。

「誰が野良魔獣や!

ワイは世にも珍しい質量を持った魔法生物やぞ!

絶滅危惧種やっちゅーねんぞ!」



マテオはなお、笑いながら話す。

「聖霊と魔獣の違いは質量を持っているかどうかだろう?

聖霊は魔力だけで出来上がった存在だ。

魔獣は何らかの質量をもって、血液のようなものもある。なにかはわかっていないけどね。

魔法生物っていうのは大昔にはわんさかいたらしいけど、もうほとんどいないなら、魔獣とおなじ括りでいいじゃないか」



それを聞いたミィはさらに怒りを露にした。

「あたし達をバカにしてダニエルもバカにするなら、もう容赦しないよ!」



ミィの言葉を聞き、目の色を変えてマテオが突っかかろうとした瞬間、マテオの取り巻きが

「ダメです!マテオさん!」

と、マテオを止めた。次の瞬間、



「やあ、マテオ。僕の友人達に、何をしようとしているのかな。」

マテオの目の前には睨みあっていたミィとリンではなく、1人の青年が立っていた。



青年は短めのウルフヘアーの白髪で、

全身を覆う荒い真っ黒な生地のマントをしている。

グレーの瞳は笑みを浮かべて、怪しくマテオを見つめている。

マントの下は見えず、杖は確認できない。



「リ、リュート…

なんだよ、魔力診断成績トップが何の用だよ。」



リュートと呼ばれた青年は、マテオから目を離さない。

「トップから3位までに召集だよ。僕と、副学年長、そして3位の君は、ネヴァ教官とアンダーソン教官と面談だってさ。」



マテオは目線をそらしつつ、そうか、と頷き、

取り巻きを連れて、そそくさとリュートが指定した場所に向かおうとした。リュートは、その背中に向けて。



「僕のミィに、次に何かしたなら、模擬戦じゃなく、決闘に誘う。」

と、優しい口調で言った。

マテオは、軽くリュートを睨むと、舌打ちをして去っていった。



深く深呼吸をして、リュートはミィとリンに向き合った。

「気にしちゃダメだよ。アイツら、何かを下につけて、群れていたいだけなんだ。

リン、深呼吸して。

ミィ、イライラしちゃだめだよ。

ダニエル、ほら、興奮するとミィの頭から落ちちゃうだろ。」



リュートは2人と1枚に声をかけ、改めてミィと向き合った。

にっこりと笑みを見せるリュートに対して、

「誰が"僕の"なんだよ。」

とボソボソ話し、やや赤い顔でじとっとした目を向けた。



「入学前から忙しそうだね、リュート。私、席を外そうか?」

リンは、ニヤニヤしながらリュートに声をかける。



「リン、そう思ってくれるのはありがたいんだけど、召集なんだよ。いかないとね。」

リュートは照れもせず、困ったような笑みを見せた。



「ねぇ!あんたのじゃないよ、あたしは!変なこと言わないでよ!どこでも!あんたのじゃだから!」

今度はボソボソとは言わず、ミィはしっかりとリュートに声をかけたが、リュートは、えぇー、と笑いながら答えず、そのまま去っていった。



「お暑うございますねぇ」

リンがニヤニヤしている。



「何が。次にそれ、言ったら蹴るよ!?」

ミィはなにか、テンパっている様子になっていた。



「まだ付き合ってないのか、もう。

おかしいよあんたら。

リュートはあれだけ男前で魔術の才能に溢れてるのに、なんであんたがいいのかわかんないし、

あんたは、あんたで、何でリュートはダメなんだよ。」

リンはため息をつき疲れるよ、と、ミィをいじった。



「昔から知り合いってだけだよ。

リュートはああやって、昔から、からかって来るやつなんだよ。」

ミィは、呆れたように言葉で返した。



二人は、ほんとか、なんだよ、と、

他愛もない話をまた始める。

すると、しばらくして、



-ヴーーーーーーーーーーーーーー…!!-



校内の至るところに設置されている、大型のリンクポータルが振動し始めた。続いて、ポータルから警告が鳴り響いた。


『タートル全ての住民に注意勧告。

小型の魔獣多数、中型の魔獣少数を、先行部隊が発見。

避難の必要は無し。但し、注意されたし。

魔術兵員は第66から76小隊まで発進されたし。

尚、この会敵は魔獣嵐ではない。繰り返す---』



魔獣との会敵時は、ポータルがそれを知らせる仕組みになっている。

注意勧告のため、生活活動への制限はないが、

「ようするに、タートルが揺れたりするかもよ、って事でしょ。

毎回思うけど、伝える意味ある?これ?」

リンが冷笑する。



まあまあ、と、ミィはリンをなだめ、

「ねぇ、イライラしたからさ、体を動かしにいこうよ」

と、リンを誘った。



なにすんの、と言うリンは、言った途端にニヤけた。

「なるほど、あたしたちといったら、それしかないね。」

リンは察したように、ミィに言った。



ミィは言った。軽やかに。

「殴りあおうぜ、親友よ。」

ありがとうございました。

書き留めたら、また。

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