2
よろしくお願いいたします。
-ある日 AM10:03-
「鞍無しの箒でタートルの外縁のミィーの家から飛んでくるなんて、男だったらタマ潰れちゃってるよ!バカだなぁ!笑いこらえるの必死だって!」
「いやいや、女でも裂けるかと思っちゃったよ!まだヒリヒリするしさぁ…第一ダニエルは起こしてくれないし、第二に電車は時間過ぎてたし…」
作戦講習が終わった直後、ミィは幼なじみのリンと、朝の出来事について語り合っていた。
リンは翠眼の色白でスレンダーな体型をしており、
ミィよりも少し背が高く、
ショートレイヤーの薄い蒼髪はよく手入れされているのか、淡く輝いている。
腰には、刃の無い剣の柄が仕舞われている。
話をしているミィ達以外にも、講習後の教室のすぐ外のピロティは、他のクラスの新入生達が入り乱れ、仲間どうし挨拶をしたり、再会を分かち合ったり、知り合った者たちでリンクカフスを重ねて連絡先を交換したりしている。
ピロティを囲む4の教室は、それぞれ40人規模の教室であり、このフロアだけでも160人は顔を合わせることになった。
500m級の超特大魔法樹をくりぬいて作られたアントヒル中腹のこの空間は、ネヴァクラスを含む4クラスの他、それ以下の成績のクラスの兵員育成区画となっている。
これより下の根本側は商業区間であり、有事の際は市民シェルターとしても機能する。
また、これより上の先端部分は魔鉱石やレンガを組み合わせて作られた、"戦闘箒"の射出区間や魔法式砲台の置かれた戦術区間となっている。
広い空間で、移動都市タートルを見渡せるロケーションでありながら、ミィとリンの二人は開放的にはなれず、他の新入生からもやや浮いたような様子で接近することはなかった。
「全然知らない子しかいないからなぁ」
ミィが沢山の新入生を見ながら話す。
皆、ミィ達の事を見ながら、やや不思議そうな顔をしている。
誰も話しかけてこない様子を見て、
「まあこの都市自体は10万人規模の小さな国だけど、あんたと私のいる魔具工業地帯は、そもそもが人が少ないからね。
多分ほとんど居住地域か、アントヒル周辺の貴族の子が、6歳から16歳まで一貫の魔法学校からのエレベーター組だろうね。」
リンがため息混じりに話す。
「そっかぁー、そしたらちょっと空気は違うかな。
あたしたちは親の手前、魔具学科のある学校卒業しなきゃならなかった訳だし、そこから魔術兵になること自体が珍しい事なんだよね。
どちらかといえば、こっちが"知らない子"枠なのかな。
あーやだねーアントヒルに近い内縁中縁の奴等は。ギャーギャー言っちゃってさぁー。」
ミィはじとっとした目で語らう彼らを見て話すと、さらにため息をついた。
それをみたリンはクスクスと笑いながら、
「だけどさ、この160人は魔力が強いと見込まれて集められてるんだ。この下のクラスは1000人ぐらいいるけど、集団障壁魔法の後方支援を学ぶクラスだから、ここに残れてるってだけで上が目指せる。そう思ったらアイツらとはなにもかわらないはずだと思う。」
と、落ち着かせるように、落ち着いた様子で、強く言う。
リンの言葉にハッとしたミィは、うん、そうだね、とだけ返し
リンを見つめた。
「リンはなってよね。"魔女"に。」
ミィはリンに願うように言った。
リンはまた、クスっとだけ笑い、
「あんたもだよ。"魔女"になるために此処に来たんだろ。」
と返した。
「あたしは…」
と、ミィが話始めた時、
「工業地帯の油臭い奴等は、夢見がちで何よりだねぇ」
ありがとうございました。
書き留めたら、また。