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エッセイシリーズ

新型コロナウイルスに関するあれこれで心が疲れてしまっている物書きさんたちへ


 こちらは、とあるかたの活動報告とエッセイを見てふと湧きおこった、つれづれなる思いをつづったエッセイです。とりわけ書き手さん向けのつもりなのですが、読み手さまにも参考になることがあるかもしれません。


 さてさて。

 次第に大変なことになってまいりましたね、新型コロナウイルス。

 年が明けた当初は、世界的な流行がここまで深刻なものになるとだれが想像していたでしょうか。

 ここ日本でも休校が始まって一か月が過ぎ、引き続き休校をする地域とそうでない地域とで差が出て、これまた問題になっております。各種イベントも自粛や延期、中止があいつぎ、不要不急の外出は控えるようにとのことで、店舗の営業や生活に直接の影響が出始め、まるでさまざまな苦難が国じゅうにふりそそいでいるかのよう。


 そんな中、お知り合いの書き手さん、読み手さんの中にちらほらと「しんどい」「書けない」「読めない」「感想やレビューも書く気持ちになれない」といったお言葉が聞かれるようになってきました。

 無理もないことです。

 テレビでもネットでも、コロナウイルスとそれに関連する情報が流れてこない日はありません。自分自身もいつどこで罹患するかわからず、先が見えない状況です。いまできることは、とにかく手洗いやうがい、アルコール消毒を励行し、お風呂に入り洗濯をし、なるべく清潔にして栄養のある食事をとり、よく眠ることぐらいですものね。

 子供や年配のご家族がいらっしゃればそちらの心配もせねばなりませんし、私自身、子供がちょうど受験期だったこともあって仕事にも大きな影響が出ていました。

 必要なものが店舗から消えたことによる心理的なストレスだって半端なものではありません。


 もう一度いいます。

 「しんどい」のは無理もないことなのです。

 こんな状態がもう何か月も続いていて、先々の目処(めど)も立たず、正常な精神状態でいられるほうが不思議なぐらいです。


「小説が前のように書けなくなった」

「小説が読めなくなった」

「感想やコメントを書く気力がでない」

 それだって当たり前のことです。

「いや自分はそれでもできる、やってみせる」という方はいいのですが、ここで無理をしすぎれば、あとでやってくる反動が非常におおきなものになります。


 体の不調は目に見えますし、数値化できるので比較的わかりやすいです。ですが、心の疲れ、心の不調はなかなか目には見えません。自分で気づかなければ、他の人が気づいてくれることはほぼないでしょう。

 だから、余計に無理は禁物。

 「しんどい」ときは無理せずに休んで欲しいと思います。


 別にクリスチャンではないのですが、旧約聖書の中にもあります。

「すべてのことには時がある」という有名な言葉の含まれた「伝道の書」の一節です。

 以下、少し引用させていただきます。



「天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。

 生るるに時があり、死ぬるに時があり、植えるに時があり、植えたものを抜くに時があり、

 殺すに時があり、いやすに時があり、こわすに時があり、建てるに時があり、

 泣くに時があり、笑うに時があり、悲しむに時があり、踊るに時があり、

 捜すに時があり、失うに時があり、保つに時があり、捨てるに時があり、

 裂くに時があり、縫うに時があり、黙るに時があり、語るに時があり、

 愛するに時があり、憎むに時があり、戦うに時があり、和らぐに時がある」


 【伝道の書 第三章1~8節「口語旧約聖書」日本聖書協会(1955)より】



 詳しい内容はそれぞれでお調べいただければ結構かと思います。


 要するに何が言いたいかといいますと、今、私たちにとっては「じっとなるべく家にいて、清潔を保ちながら耐える時」だということです。少なくとも、しんどい思いを抱えながら「無理をしてでもいつもどおりにふるまおうとする時」ではない、ということです。

 心が疲れてしまっているのなら、今は心の羽を休める時。

 それはいずれまた羽ばたくために、力を蓄えておくためにどうしても必要なことでしょう。


 いつかしっかりと疲れた心が癒されて、ふたたび読んだり、書いたりできる日がくることでしょう。それまで、まずはご自身とご家族と、身のまわりの方々の命を守るために行動なさってください。

 蘇をつくったりアマビエを描いたり、方違(かたたが)えをしたり物忌(ものい)みをしたりして、古き日本人の知恵を学ぶのもよいかもしれません。


 不必要に不安をあおるような情報源からはなるべく離れ、大事な心を守って参りましょう。政府や医療機関に対する無遠慮で攻撃的な言葉は、それを見るだけでも心を疲弊させる場合があります。そして不必要に、人を攻撃的な精神状態へと(あお)る力も持っています。

 「冷静で客観的な批判・意見」と、むやみに発せられる「ヒステリックな暴言・攻撃」とはまったく別のものです。


 私たちは小説を書く者、つまりは「言葉」を操る者です。

「言葉」のもつ力について、もっとずっと敏感であるべき立場ではないかと思うのです。

 もちろん私も不完全な人間のひとりに過ぎず、できないことは多いのですが、なるべくこんな気持ちでこの難局のもと、静かに自分の為すべきことを為しながら過ごして参りたいと思います。


 乱筆・乱文失礼いたしました。

 拙い駄文ではありますが、心の疲れたかたのお目に少しでも留まり、なにかの励みの一助にでもなれましたら幸いです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 心を保つ。 聖書からの引用でしたが、禅のような感じもしました。 その部分を読むだけでも、落ち着くようです。 言葉って、やっぱりすごいですね。
[一言] 情報を取り入れたいと、ニュースやワイドショーを見ると逆に焦燥感ばかり煽られてしまいます。 だから昼間は見るのを止めてしまいました。 今は「耐えるとき」。本当にそうですね。元々出不精なのでそ…
[良い点] 銘尾友朗様の「笑顔でいこう企画」から拝読させていただきました。 心に響く作品ありがとうございます。 自分では分かっているつもりでも、日々メディアで流される溢れんばかりの情報、そして、いつも…
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