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アリサ7

お父様が呼んでいると会場警固の衛兵たちに連れられて池の中央にあるあずま屋に来てみれば、そこにはオルドリーネがいて、あずま屋に通じる唯一の橋は衛兵たちに塞がれてしまった。

「もう逃げられないわよ。それを返しなさい」

他人の物を堂々と返せという感覚は理解できないが、待合室の時と違ってここには他者の目がなく、いるのは彼女と籠絡されたと思われる衛兵たちだけだ。

”モンスターとの戦いで一番大切なことは生き残ることだ”とお母様はいつも言っていた。

衛兵たちとの距離はある、池は深くない、おそらくオルドリーネに戦闘力はない。

私は首飾りを外して真横に投げてオルドリーネの方へと走り出す。

「なんで捨てるのよ!」

首飾りに気をとられている間に私はオルドリーネの脇をすり抜けて池に突っ込んだ。

腰まで浸かったがドレスでも歩けないほどではない。

「その女はどうでも良いわ。首飾りを拾って」

オルドリーネの言葉に私を追っていた衛兵は立ち止まって向きを変えた。

どうやら追ってくることはないようだ。

池に落ちた首飾りは易々と見つからないだろう。

十分な時間稼ぎになるはずだ。

池からでたら他の衛兵に助けを求めるか?

いや、この状況で衛兵を頼るのは怖い。

では会場に戻ってエミリアに助けを求める?

エミリアとは友達だが状況がまずい。

あの衛兵たちはオルドリーネに有利な証言をするだろう。

ならば騎士団に鍛錬に出かけたお父様のところだ。

図書館に行った後によく付き合わされたから、場所は分かっているしここから近い。

池から這い上がった私は全速力で騎士団の鍛錬場へと走った。

幸いにも誰とも出会うことなくたどり着くことが出来た。

お父様は直ぐに見つかった。

中央や北部の者たちとは違い、モンスター相手に戦う南部の者たちは剣ではなくハルバードなどの長柄で重量のある武器を好み、盾を持たず軽装の鎧を着ているので見つけやすい。

単にモンスターの皮膚が硬い事とその突進が盾では防げないことが理由だ。

「お父様!」

私の姿を見つけたお父様は素早くこちらに駆け寄って私を肩に担ぎ上げた。

「とりあえず逃げるで良いか」

「は、はい」

お父様は馬車止めの方角へ走り出した。

しかし武器を持った男が娘とはいえ女性を肩に担いで走っているのは、傍から見れば誘拐かなにかと勘違いされそうな状況だ。

案の定、すれ違った人たちがいろいろな表情で振り返ったが、笑顔で手を振っておいたから事件とは思わないだろう・・・と期待しておこう。

ガーデンパーティーのため、普段より多くの馬車が馬車止めに並んでおり、我が家の馬車はややでにくい位置に止まっていたがお父様が強引に道を空けさせた。

相手は高位貴族の馬車ではあるが、御者が高位貴族であるわけではない。

男爵であるお父様の言葉に皆道を譲ってくれた。

決してハルバードを持ち、鋭い目つきのお父様を恐れたなどという物騒な事実はないはずである・・・なかったら良いな。

「で、その衛兵たちの顔は覚えているか?」

お父様に担がれていた時に大体の経緯は話している。

「会えば分かるとは思うけれど自信はないです。どちらも明るい金髪で見目がそこそこ良かったわ」

お父様は私を屋敷に送り届けると、再び王宮へ戻っていった。

屋敷に帰ってきたことによって少し余裕が出来たのか、ようやく自分の状態を気にすることが出来た。

例の事件の折に侯爵家からもらった白を基調としたドレスは池の濁った水を吸い込み、見るも無惨な状態になっていた。

おそらく濃い色で染め直せば着られないことはないかもしれないが、諦めた方が良いだろう。

最近、文字通り死ぬ思いをして手に入れたドレスと首飾りを失ってしまった。

結局チョコレートも食べていない。

「この恨み、はらさでおくべきか!」

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