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アリサ2

「知らない天井だ・・・」

自分の部屋より明らかに凝った装飾の天井ではあるが、体に痛みがあるので天国ではないようだ。

私が定番の言葉を呟くと、お父様のあきれたような声が聞こえた。

「心配して損をしたかもしれんな・・・」

まだ痛みが残る体を動かしてそちらを見れば、言葉に反して泣きそうな顔のお父様がいた。

「大丈夫よお父様、私強い子」

私はにこりと笑ったつもりだ。

「無理をしなくても良い。神官様を呼んでくるから待っていなさい」

お父様はそう言って部屋から出て行った。

神官!!

私を心配してくれるのはうれしいけど、あの呼ぶだけでお布施をとられる教会の守銭奴を呼び出すなんて。

ああ妹よ、明日から当分の間我が家の朝食はオートミールと具の無いスープになりそうだ。

私が虚ろな思考でいろいろ考えていると、お父様が神官のお爺ちゃんと高位貴族の男性と一緒に戻ってきた。

いろいろと疑問はあるが、ベッドの側まで来た神官のお爺ちゃんが聖印をきったので、胸の前で両手を組み瞳を閉じた。

「大地を司る闇の神よ・・・・」

お爺ちゃんの祈りとともに私の体がぽかぽかしてきた。

うわすご~い、これが神のご加護か。

「お嬢ちゃん、ひどく痛むところはあるかの?」

うっとりしていた私はお爺ちゃんの言葉に意識を戻した。

「さすが神様、リポGより効き目抜群です。痛みなんてほとんどありませんわ」

「?まあ意識はしっかりしておるし痛みが無いのなら大丈夫じゃろう」

私がにこやかに答えるとお爺ちゃんは手首や首筋に軽く触れた後に少し頭をひねりながら席を立った。

入れ替わるように今度は高位貴族の男性が前に出た。

「アリサ嬢、君にはすまないことをした。王宮医官を喚びに行かせた。到着まで食事でもしながらゆっくり休むが良い。他に何か必要であれば遠慮無く言ってくれ」

王宮医官!、そんな人を呼んだら朝食だけじゃ無くて夕食まで具の無いスープになっちゃう。

私はお父様に辞退してお家に帰ろうと目で訴えたがにっこりと笑顔を返された。

いや、大丈夫じゃ無いでしょ、町医者でも結構な金額を請求されるんだよ。

お父様がうつむいて左手でお腹を指さす。

私はお父様が右手でお腹をつねっているのを見て冷静さを取り戻した。

これは昔お母様とよくやったジェスチャーゲームだ。

お腹をつねりながら笑っているので”我らの腹は痛まない”と言う意味だと理解した。

誰が払うのかは分からないが、私たちが金銭的負担を負うことはないようだ。

まあ被害者なのだから当然ではあるのだが。

私は男の人に向き直りにこりと笑う。

「たいした怪我でもございませんのに、過分なご配慮に感謝いたします」

男の人が驚いたような表情を浮かべた。

ようやく思い出したがこの人はガーデンパーティーを主催したメルキオット侯爵だ。

私の言葉に感情制御に長けた高位貴族の表情を変化させるような内容など無かったはずだけれど?

「天への階段をのぼりかけていたというのにたいした怪我では無い・・・モンスターの生息地域と接する地方とはいえ、こんな小さな令嬢にブルシュバーン家ではどんな教育をしているのだ」

メルキオット侯爵が驚愕の表情でお父様を見ている。

え、私死にかけてたの?

途中で意識がなくなって、起きたらちょっと痛いなと思うくらいだったから深く考えていなかったけど。


あのあと誤解を解き、王宮医官の診察を受け、念のため一晩安静にするように言われ、お父様だけ病人食ではなく豪華な晩餐に招かれ、翌日の朝メルキオット侯爵のお屋敷を辞した。

私の晩餐はオートミールと苦いお薬だったのに、お父様は豚の丸焼きを食べたらしい。

うらやましくなんてない。

帰る際に踏まれてボロボロになっていたドレスの代わりに、侯爵様が中古だが似たような感じのドレスを用意してくれた。

返さなくても良いらしい。

まあ中古と言ってもほとんど新品だったし、侯爵家のご令嬢が着るようなドレスである。

池に落としたドレスが金のドレスになって返ってきたような感じだ。

それにお父様もちゃっかりメルキオット侯爵との商談をまとめていたのでブルシュバーン家としてはほくほくである。

今回のことで私は死にかけていたらしいが、自身にはその実感が無いので特に気にせず妹のリメアにドレスをお披露目して楽しんだ。


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