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偽善者の正義  作者: カリカリ唐揚げ
狂っているのは世界か、少女か
2/6

白い夕焼け

 一週間に一回の投稿にするつもりですがあらすじまでは話を進めたかったので投稿しました。


 展開の進みが速いと思いますが次からはもっとゆっくりと進みます。

 修一の通う高校付近になってくると明らかに道を行き交う人相の種類が変わっていく。

 修一程顔の形が歪に変化してはいないが鼻に光を反射する銀色のピアスが施されていたり目の焦点が合っていない物、明らかに野球部ではないのに鉄バットを裸で地面に引き釣りながら歩く者までいる。


 鉄とアスファルトが奏でる不協和音にいら立ちを感じ背後から速足で近づきその後頭部に腕を勢いよく引き腰を回し足取りを気にしながら空気を切りながら突く。

 腰、肩から溜められた力を腕の回転を生かし後頭部を打ち付けた少年は体制を崩し振り返り際に手に持っていた鉄バットを振り上げ相手の頭上に振り下ろすために鬼のような形相で睨み叫ぶ。


 「んだよテメェ!!!」

 「うっせぇんだよ朝っぱらからよぉ!!!」


 鉄バットを強く握る腕を蹴り上げると鈍い音がし少年は苦痛の余り顔を歪ませて鉄バットを落としけられた腕を抱えて膝を落とす。

 力が入らずに痙攣している腕を抱えた少年の顔の横を回し蹴りで吹き飛ばし少年の顔が地面にぶつかり鈍い音が周りに響き渡る。


 目を赤く血走らせて少年に馬乗りになった修一は腕を振り上げて顔に下ろそうとするが突然腕を捕まられてその動きを止める。

 周りで口笛を吹いたりヤジを飛ばしていた少年少女はその途端つまらなさそうに歩みを再開させて修一と少年を通り過ぎていく。


 修一からしたらこの状況で止めに来られる人物には一人しか心当たりが無く、舌打ちを鳴らして後ろを振り返る事すらなく肩を回して掴まれた肩を外そうとするが決して離れることは無く手の力が増したところで修一は重く閉じた口を開く。


 「…クソッ、しねぇよもう………だから離せ」

 「朝っぱらから物騒だねぇ修一、もっと笑顔でいようぜ?」

 「黙れ白豚」


 スマホの数字を押して病院に電話をかける色白の少年に修一は今度は先ほどより強く腕を振り拘束から逃れるとつまらなさそうに地面で眠っている少年を一瞥すると学校に向けて歩いていき、電話をしながらその後を追う少年。

 丸っこい顔に力が抜けた笑顔を張り付けた少年はスマホで何事か話していてその声をBGMに修一は先ほどの激情が去った虚無感に身を任せて力なく歩いて行く。


 後ろを歩く少年は先程の問題行動を起こしたのと同一人物に見えず笑みを深くして粗方説明し終えて通話を切るとわざとらしくため息を深く付き肩をあげて首を左右に振って両手を肩の位置に上げる。


 「また謹慎処分にあうぞ?」

 「構わねぇよ」

 「鈴奈ちゃんと愛を心配させても良いのか?」

 「それこそ俺の知ったことじゃねぇ」


 肩を怒らせて歩幅を広くする親友に少年は解りやすいと呆れながら遠くから鳴るサイレンを聞いて二人の視野に入る何人かの人物は歩幅を速める。

 中には走り出していて何をそこまで怯えているのかと思いながら少年は修一に声をかける。


 「何であんなに大慌てするかね」

 「癖なんだろ」

 「ははっ、そいつは酷い癖だ…」


 救急車とパトカーのサイレンの違いを聞き分けられないというのは少し問題なのではないだろうか、苦笑しながら少年はふとそんな疑問を頭に浮かべたがサイレン自体に警戒をしているのかもしれないと思い直しアスファルトを踏みしめていく。


 少年の熱い二次元愛を聞き流しながら遠くに見えていた学校の校内に入ると修一は乱雑にズレた列になっている席の一つに座りカバンから筆記用具に教科書、ノート等の文房具を出して机の中に押し入れていく。

 成人雑誌の一面を切り取り壁に画鋲で貼る者や机に落書きをしだす女子生徒、糞の掃きだめだなんだと言われるだけはあるなと内心思いポケットに入っているメリケンサックを布越しになぞり首を真後ろに下げて気を抜く。


 真後ろで机に落書きをしていた何人かの女子生徒と視線がぶつかり何人かは若干怯えた表情で手を止め修一を見つめる。

 口を開けて力なく見つめていると一人の少女が嫌らしい笑みを浮かべて修一に声をかける。


 「なに? そんなに見つめて、私らに惚れちゃったとか?」

 「あ?」

 「マジに取んなよ、軽い冗談じゃん?」

 「センスねぇよボケ」


 嫌悪感を色濃く出して顔を歪ませる修一に少女は憎たらしい笑みを深め、そんな二人のやり取りに内心怯える少女達。

 ゆっくりと首を前に持って行き首を軽く横に動かすと白くて丸い少年が大量の菓子パンの空き袋を机に置いたまま修一を眺めていて、視線がぶつかると何事もなく首を前に移動させて何事もなかったように青色の大きいカバンに手を入れて新しいアンパンの袋を開けていく。


 修一と少年以外の手元にカバンは無く、ロッカーを含めてもまともにカバンが入っている確率は少ない。

 カバンの中に筆記用具が入っているだけまだまともな生徒の部類に少年は入る。


 透明な袋を大量に抱えて少年は立ち上がりゴミ箱に近づきその中に大量に落とすと満足気に微笑み自分の席に音を立てて勢いよく座る。

 その音に内心いら立ちを募らせながら黒板を力なく見つめる。周りの白い物体が自分の周りを行きかう事が腹立たしい、少年はそう思うがそれで腹を立てて暴れまわっていたら精神病棟に入れられても何も文句は言えない為ぐっと腹の中にため込む。


 チャイムが鳴って数分が経ち教員が室内に入ってくる、チャイムが鳴る前にいることはそうそう無い為周りの生徒の反応は無く、それが当然と言う認識で教員に生徒は自然に出席を取る行為を流してく。

 席に座っている者はいても自分の席に座っている者は少なく出席には声で反応するだけ、教員も深く本人かの有無を確認せずペンを走らせる。







 修一が目を覚ますと辺りが白に深い白が重なり合った光景を見て夕暮れかと思い時計を見上げる。

 短い針が5、長い針が1を射しているのを見て鬱陶し気に顔を顰めて腕を上に伸ばそうと向けると右手が何かに当たる。


 驚き手を引っ込めてそちらに視線を向けると何時からいたのか解らないが少女が修一を静かに見下ろしていた。

 真っ黒の瞳が修一にはどこまでも済んだ白に見えて一瞬呆けるが眉に鋭い切れ長の瞳を釣り上げた少女に修一は睨み返しながらゆっくりと立ち上がり少女を見下ろす。


 「んだよなんか用か?」

 「………今日放火に遭うから外で見張ってて」

 「は? ちょおい待てゴラァ!!!」


 それだけ言うと少女は勢いよく走って修一から逃げ出す、何時もなら逃がすはずのない速度だが寝起きの修一が追いつくことが出来ずふらつく足取りでこれ以上走ると無駄に怪我をするだろうと忌々しそうに走り去る背中を見送る。

 慌てて飛び出したからか教室に戻ろうと振り返ると嫌らしい笑みを浮かべた少年を見かけ修一は鬼の表情で近寄り腹部に重い一撃を入れる。


 今朝の突きより鋭い一撃に少年は唾を吐きだして悶絶する中修一は胸元を両手で掴み少年を持ち上げて下から睨む。


 「テメェの差し金か白豚ぁ………! いい度胸だなおい」

 「お、落ち着け俺は頼まれたんだよ!!!」

 「なに?」


 突然開かれた手に対応できず少年は落下し勢いよく尻もちを搗くと修一を見上げて息を軽く整えると立ち上がり修一に視線を合わせて嫌らしい笑みを浮かべなおす。


 「いやぁどんな話だったんだ? ん? ようやく修一にも春が訪れたな」

 「………どうやら本当にお前じゃねぇみたいだな」

 「あれ? 告白じゃなかったの? 修一と話があるから起こさないでって頼まれたんだけど」

 「なんのつもりだあのアマ」


 放火があると言われても何も対処できない、何より本当に起きる可能性の方が少ないしあったとしても少女が放火をしに来る可能性の方が高い。

 本人がしに来るならあえて修一に伝える意味が無い、何よりそこまで恨まれる覚えが修一には無かった。


 喧嘩に明け暮れてはいる為以前病院送りにした誰かという可能性は捨てきれないがそれでも放火をされるほどかというとそうでもない。

 良くも悪くも喧嘩両成敗になっているはず、修一はそう思いながら質問をかぶせてくる少年を軽く叩きロッカーに入れたカバンを取り出し自分の机の中に手を入れて筆記用具を取り出しカバンに仕舞う。


 「で? どういう話だったんだよ」

 「俺が聞きてぇよんなの」

 「何も言わなかったのか? そんな雰囲気には見えなかったけど…」

 「…っていうか誰だよあいつ、あんな奴いたか?」

 「クラスメイトぐらい覚えておけよ…石黒萌さんだよ、まぁ確かに大人しい子だから印象には残らないかもしれないけど」


 様はいるかいないか解らない空気みたいな存在、そんな少女が自分にあんな悪戯をするだろうか。

 修一はそう思いながらも放火の部分について考えを巡らせる。


 「アニメで良くある光景だ」と面白そうに言い出す少年に軽く裏拳をして教室の外に出て薄汚れた廊下を歩く。

 淡い夕焼けの陽を廊下が照らしオレンジ色のカーペットの様な廊下を修一と少年は歩いて行く。

 笑顔溢れる学校です(憤怒)

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