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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第10章 世界の中心はリゾート地
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第7話

 なだれ込むように部屋に入ってきたニール達は、あっという間に気を失っているスティプルドンを縛り上げる。


「俺合図してねぇのに、みんなせっかちだなぁ……」

「ニールがいきり立っちゃってね。兵士達を倒して、真っ先にそっちに飛び込んだのよ」


 確かメディナの時もニールは比較的慌てて助けに向かったが、肩で息をしながら突っ込んできた奴のこの様子だと、恐らくゲームとは比にならないほど慌てていたんだろう。勿論、そんな状況なら、メディナが俺に合図を指示していたことも聞いていなかったに違いない。


「ご、ごめんね……そんな約束してたなんて、知らなくて……」

「いや、タイミングとしてはばっちりだったぜ。ありがとう」

「あ……うん!」


 しかし、健気というかなんというか。見た目と中身が違う俺を助けるためにそこまでしてくれるのは嬉しいんだが、そろそろ可哀想で仕方がなくなってきてしまう。

 これで俺が大人の男だと知ったら、目の前ではにかんでいるこいつはどんな顔をするんだろうか――などと一瞬考えたが、あまりにも俺が畜生過ぎるし、ニールが不憫過ぎて想像するのを止めた。何があろうとも、こいつにだけは絶対に言えない。


「それで、情報は?」

「エディのパトロンなんだってよ、こいつ。あと、魔王ともばっちり繋がってるぜ。俺達のこと捧げものにする――なんて言ってたし」


 部屋に人が近づかないように扉の位置に氷の壁を作ったメディナは、スティプルドンの様子を窺いながら首尾を問うが、俺の得た情報はゲーム通りの情報だけだ。それをそっくりそのまま打ち明ければ、三人はそれぞれ程度に差がありながらも目を見開き、スティプルドンに対する警戒を強める。


「うっわ~……驚くほど、真っ黒じゃない」

「でもよ、流石にちょっと妙じゃねぇか? こいつ、俺にのされるぐらい普通の人間なのに」

「……ニール、分かる?」

「あ……ちょっと待ってね……」


 スティプルドンの異常も本来メディナが指摘する話だったが、俺が呼ばれた以上は俺が違和感を訴えるしかない。それも結局メディナ経由で本来の流れに戻ったのだから、一安心である。

 ちなみに、スティプルドンの異常とは、普通の人間なら魔王に肩入れする理由がない――というものである。が、スティプルドンが元々悪人だった場合、身の安全の確保のためにいくらでも金ぐらいだすだろうから、正確には異常というほどのものでもない。とはいえ、勧善懲悪をテーマにしているこのゲームには、目に見えて悪い人間という存在はほぼいないが。


「……うん。この人、エディさんの力を感じる。何かされてるのかも」

「浄化できる?」

「やってみるね……」


 じっと何かを探るようにスティプルドンの前に座り込んでいたニールは、複雑な表情を見せながら浄化の力を使い始める。何を考えているのかは何となく分かるが、それを行動に移さない辺りは流石善人を象徴する主人公だ。


 それから数分後、一応拘束を解いたスティプルドンの様子を見守っていた俺達の耳に、一人の男の声が届く。


「うう……ん……? 君達は、なんだね……?」


 それは、目を覚ましたスティプルドンの声だったが、さっきまでとは様子が違う。それと殺気や邪気のような嫌な感じもないことから、ニールの浄化が上手くいったのだろう。ほっと息を吐いたニールも、それを示唆するようにこちらに振り向き微笑んだ。


「それに、この部屋は……」

「貴方の部屋よ、スティプルドン」

「私の部屋、だと……? ……な、なんて悪趣味な……!」


 メディナの言葉を素直に信じたスティプルドンは、この金ぴかルームを見渡しショックを受けているようだ。まあ、俺も自分の部屋がこんな装飾で埋め尽くされていたら同じような反応をする自信があるから、この男に対しては同情しか湧かない。

 今までとは全く違う反応をしていることにやっぱり悪人じゃなかったんだと安堵しながら、顔を見合わせた俺達を見上げ、狼狽しているスティプルドンは恐る恐る声を上げた。


「い、一体何があったのだ……」

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