第4話
「……パパが、きてたの?」
夕方頃、約束の場所に集合した俺達は、島の宿で情報交換をしていた。この辺りは特にゲームからの変化もないらしく、ヨシュとフィー、グレイとロアのペアは特に情報をえられなかった代わりに、ニールとメディナの二人が大きな情報を得て戻ってきたのである。
それが、ロアの父・エディの目撃情報だった。
「ええ、見かけたわ。この町の中心に位置する、あの建物に入る姿をね」
「……なんなんだ、あれ?」
「スティプルドンって人のお屋敷らしいよ。このリゾートの経営もしているんだって」
スティプルドンという人物はポルトビを開発した人物の息子にあたり、父の跡を継ぎ、現在のこの島の経営全てを任されている人物でもある。要するに、この街のトップだ。
そんな人物の屋敷に、魔王軍の幹部であるエディが出入りしていたなんて、深く考えなくても怪しさしかないだろう。
「エディが来ていたのなら、スティプルドンも魔王の息が掛かっている恐れがあるわ」
「先回りされてたってのか?」
「それはないだろう。俺達がここに来れたのは、運良くあの村にトマスがいたからだ」
「そうだね。トマスさんがいなきゃボクたちは今も立ち往生してただろうし、ここに来たのも偶然だもん」
みんなはエディに存在を感づかれていることを恐れていたようだが、グレイの言葉でその心配は不要だと考え直したようだ。そもそも気付かれていたら、戦力が分散していた昼間に各個撃破されていただろうから今更な気はするが、それは黙っておこう。
「……ということは、私たちの存在は気付かれていない可能性があるんですね」
「スティプルドンが魔王と繋がっていたら、ここまでの道中と今日の動向を知られているかもしれないけど……エディは無防備に町に出ていたから、今なら大丈夫かもね」
「うん、アイス……嬉しそうに食べてたもんね」
二人はエディを見かけた後しばらく尾行していたらしいが、その間エディは観光しており、買い物も食事も目一杯楽しんでから船で帰っていったそうだ。
「の、呑気な奴だな……」
知っていても、思わずそう言いたくなる俺の気持ちも分かるだろう。勿論、俺以外のみんなも肩を竦めて呆れているようだ。
とはいえ、既にエディがこの島にいない以上、彼を捕まえてどうにかすることも出来ない。そうなると、必然的に問い詰める先はスティプルドンの方になるのだが、それには少し問題があった。
「……で、どうするんだ? 潜入するにしても、あの屋敷の警備では難しいぞ」
「うーん……直接殴り込みは、ちょっと危なすぎるわよね」
「お、珍しく慎重だな」
「さすがに今回はね……って、珍しくってどういう意味よ?」
宿からも見えるその屋敷は私兵が常に警備しており、とてもじゃないが無策で潜入するのは難しい。かといって、何か手があるのか、と聞かれればみんな首を捻るしかない。
まあ、俺は知っているのだが。
「まあまあ。とにかく、潜入以外でなにか策を考えましょう」
「………………ねぇ、これ」
そんな中、宿内にある張り紙に気付いたメディナは、それを指差し俺達にも見るよう促した。