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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第10章 世界の中心はリゾート地
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第1話

 クランドを出た俺達は、以前は通れなかった街道を通り魔物を倒しながらウルムへ辿り着くと、そこから予定通り船に乗りポルトビに到着したのだった。


「……あづい」

「ここは年中暖かくて、気候も穏やかだからね」


 ポルトビは、大陸から独立した孤島に浮かぶリゾート地である。位置としては世界地図の丁度ど真ん中にあり、ドーナツ状に形成された大陸の輪っかの中にあると言えば分かりやすいだろうか。その特殊な位置と年中気候が穏やかで暖かい事を気に入ったのか、三十年程前に島を買い取ったある富豪によって海水浴場の整備や他のリゾート施設が建設され、現在ではリゾート地としての地位を確立した場所である。

 ちなみに、この島の中には“ウェートル”と呼ばれるカジノ街も存在する。


「あんなことがあったのに、結構賑わってるんだね。すごいなぁ」

「このご時勢に遊ぶような連中は、貴族や金持ちぐらいだろうからな。ここに別荘も持っているだろうし、特に不安もないんだろう」

「は~……ノンキなもんだな……」


 町の中を一通り見渡したニールの言葉通り、各地が魔王に襲われているにもかかわらず、ここでは多くの人間が呑気に遊んでいるのだ。この島が一切被害に遭っていないことも関係しているだろうが、それにしたって人が多すぎる。これでは、ヨシュが呆れるのも無理はないだろう。


「……で、どうするよ。聞き込みでもするのか?」

「そうだな、利用客を装ってそれとなく話を聞いてみるしかないだろう」

「なら、水着を買っておかないと。ここのビーチは、水着を着てないと入れないからね」


 そんな場所で聞き込みをしようというのだが、他の所はともかく、ビーチだけはこの格好のまま入ることはできない設定だ。つまり、シナリオ上必ず訪れる、水着イベント用の場所なのである。


「み、水着……」


 他人の水着姿を見る分には良いが、今の俺はそう呑気なことを言ってられる立場ではない。なにせ、俺も見られる側になってしまうからだ。しかも、両胸にたわわなものを付けた美少女として、である。

 自分が女の子の服を着るという行為自体には嫌々ながらも慣れてしまったが、水着で外を歩くなんてとんでもない。しかも女の子の水着は可愛いが、物によっては下着レベルのものもあるだろう。見た目はともかく、中身は成人済みの男である俺が、女の子の水着を着て、公衆の面前に晒される――そんな恥ずかしい話があるだろうか。

 ということで、思わず声が上擦るほど動揺してしまったのである。


「ふふ、選んであげるわよ。ハル」

「なんでそんな楽しそうなんだよ……」

「あら、なら自分で選ぶ?」

「…………いや、お願いします」


 そんな俺の心情を知ってか知らずか、メディナは嬉々として俺の腕を掴むと、女性陣を引き連れて店に入ってしまったのだった。


 ◆◆◆


「なに恥ずかしがってるのよ。ほら、大丈夫だから出てきなさいって!」


 メディナとフィーに選ばれた水着を持たされ試着室にぶち込まれた俺は渋々それを着たのだが、試着室内に設置されている鏡でうっかり自分の姿を見た瞬間に猛烈な羞恥心に襲われ、外に出ることができなくなってしまった。

 ビキニ、ビキニである。白のビキニである。白のレースがふんだんに使われ、あちこちにリボンも見える少女趣味のビキニなのである。我ながら似合いすぎているが、恥ずかしくないわけがない。


「恥ずかしいに決まってんだろ! なんだよこれ! 下着じゃん!」

「いや、水着だから」

「貴女、普段大雑把なわりに、変なところで恥ずかしがるわよね……」


 試着室のカーテンを無理やり開けようとするフィーに抵抗しながら喚いた俺だったが、カーテンを破壊しないように力加減をしている時点で勝ち目はない。あと、水色の可愛らしいワンピース水着に着替えたロアに至ってはカーテンの隙間から試着室に入り込んで、「おねえちゃんかわいいね!」なんて無邪気に褒めてくる始末だ。やかましい、可愛いのはお前だよ。

 恥ずかしがる俺とは対照的に、セクシーな黒のビキニを着ても堂々としているメディナと、健康的なビキニタイプのスポーツ水着を着ているフィーは、既にビーチに行く気満々の気合いの入れようである。なんでそんなに堂々としているのかは分からないが、その豪胆さは見習うべきなんだろうか。


「じゃあ、こっちにする?」

「紐じゃん!」

「もう、いいからそれで諦めちゃいなさいよ! ほら、時間なくなるから早く出て!」

「いーやー!!」


 だからといって、痴女丸出しの布面積の小さすぎる水着を使って、俺を諦めさせようという考えまでは見習いたくないものだが。

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