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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第6章 黒髪イケメンの正体
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第5話

「ハルさんこそ、どうなんですか?」

「ど、どうって?」

「女風呂、大変だったんじゃありませんか? 今まで嫌がっていたらしいですし」


 頭を抱えていた俺に、アキはそんな疑問をぶつけてくる。大変だったのは聞かなくても分かるだろう――と言いたいところだが、こいつが聞きたいのはそういう話ではない。恐らく、「裸の女に囲まれて冷静でいられたのか」とか、そういうことを聞きたいんだろう。

 それには流石に俺も、言葉を詰まらせてしまった。


「あ、ああ……いや……うん…………実は、それほど……」


 勿論、未成年者が二人もいたことで、いたたまれない気持ちは大いにあった。が、思い返してみると男の頃の性的興奮のようなそういった感情は全く浮かばなかったのだ。しかも、巨乳美女のメディナ相手であってもだ。

 二十代半ばにして既に枯れ始めてしまったのか、もしくは極限状態から来る賢者タイムだったのか。その辺の真相は俺にも分からないが、女の子相手にそういった感情を抱けなくなってきたことには危機感を強めざるを得ない。

 いや、きっと自分のプロポーションが良すぎるから慣れただけに違いない。それに、色々と非日常的なことが続いて疲れているだけだろう――などと考えながら煮え切らない態度を取る俺を見て、何を思ったのかアキは僅かに眉を寄せる。


「……まさか、ホ――」

「ちげぇよ!! ほ、ほら、なんか……俺の体、かなりナイスバディじゃん?」

「そうですね。ボインボインです」

「だから、他人のを見てもあんまり興奮しなくなっちゃってさ……」


 確信はないが、そういうことにしておいた。そもそも興奮したところで、今も俺には何も出来ないしする必要もない。元の世界に帰りたいのに、わざわざ現地人に手を出してる暇なんてないのだ。そう、だから無意識の内に抑えてるんだ。そうなんだ。そうであってくれ、頼む。

 誰に懇願してるのか分からないが、神にでも祈るような気持ちで必死に最悪の可能性を思考の端へ追いやっていた。


「それはそれで心配ですけどね……元の体に戻った時、ちゃんと男性として生きられますか?」

「生きるよ……生きたいんだよ……」


 最近馴染みかけてしまってるとはいえ、俺はこの姿のままなんて絶対に嫌だ。そもそも、年下の女の子にそういうことを心配されるという現状が既に辛い。なんでこんなことになったのかは知らないが、もし誰かのせいで俺達がこんな目に遭ってるんだとしたら、その誰かのことは絶対に許さないからな。

 意気消沈した俺を眺め同意するようにうんうんと頷いていたアキは、ふと顔を上げると真剣な面持ちで俺と視線を合わせる。


「もし、戻れなかったとしても、ニールくんはあげませんからね」


 何を言っているんだこいつは。なんでナチュラルに俺を恋のライバル扱いしているんだ。どれだけ最悪のパターンを引いたとしても、俺が男とどうこうするなんてありえないのに、なに寝ぼけたことを言っているんだ。

 そんな山のような突っ込みが咄嗟に出てこなかった代わりに、俺はその場に立ち上がり声を荒げた。


「いらねぇよ! むしろやるよ!」

「いいんですか? じゃあ、本当に貰いますね!」

「え、あ、いや……ちょっと待て! やるけど、あと四年は待てよ!」


 俺の言葉を聞いた途端、急に興奮しだしたそいつは、未だに挙動不審なまま俺達の様子を窺っているニールの元へ駆け出そうとしたものの、間一髪で捕まえることに成功した。

 明らかに今すぐ何かをしようとしているアキを、何も知らない子供の主人公に近付けるわけにはいかない。幸いにも、頭は上出来だがボディは貧弱なモヤシであるアキは、俺が腰を捕まえただけで一歩も動けなくなったため、拘束自体は容易だった。こういうところでだけは役に立つ怪力である。


「離してください!」

「馬鹿野郎! 相手は子供だぞ、少しは自重しろ!」

「問題ありません、光源氏計画のようなものです!」

「光源氏って、母親似の少女を自分好みに云々ってやつか……なお悪いわ!」


 小声で言い合いながら必死の形相を見せている俺達の姿が周囲の目にどう映ったのかは知らないが、ニールが羨ましがっていたという話をグレイ(づて)に聞かされ、後日俺は盛大に脱力することになるのだった。

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