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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第6章 黒髪イケメンの正体
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第1話

「ロアの様子はどうだ?」

「うーん……頑張って明るく振る舞おうとはするんだけど、夜は泣いてるな」


 ニールが倒れてから二日後、俺達はまだブランタにいた。そろそろこの街に着いて一週間になるが、一行はまだここを発つつもりはないらしく、今日もニールの体調とロアの様子を気にしながら温泉を楽しんでいる。

 ちなみに、実際のゲームだとこの辺りのあれこれは飛ばされているため、俺にとっては未知のやり取りだ。


「仕方ないでしょうね……」

「ま、フィーが自分に任せろって胸張って言ってたし、あいつに任せようぜ」

「……それほど、心配な話もないわね。私も様子を見てくるわ」

「ああ、よろしく頼むぜ」


 エディとの邂逅以降、フィーはロアに付きっきりで世話を焼いている状態だった。

 俺としては、付きっきりは逆効果ではないかと思うのだが、彼女の考えは違うようだ。当然、男性陣もおおむね俺と同意見なのか、ヨシュなどは「少しぐらい放っておいてもいいだろ」などと言い出す始末である。ただ、そのあたりは男女で受け取り方も違うだろうから、ここは黙って大人の女性であるメディナに任せることにしたのだった。


「彼女も心配性だな。フィーはしっかりした娘だろうに」

「フィーさんは少し無鉄砲なところもありますから、目が離せないんでしょうね」


 グレイの見解も正しいが、アキの見解ももっともである。今までも進んでトラブルに首を突っ込んでいることから分かるように、フィーは正義感が先走って周りが見えなくなることが多々あった。基本的には解決できているからいいのだが、そうでない場合を考慮してメディナが注意することは決して間違いではないだろう。

 まあ、本人がそれを聞き入れるかはまた別の話になるが、それは一旦置いておく。


「あいつなりに気にしてくれてるんじゃねぇか? メディナも優しいしな」

「メディナさんって、お姉さんみたいだもんね。ボクも優しくしてもらってるから、なんだかわかるなぁ」

「子供好きっぽいしな」


 メディナの面倒見の良さは、既にパーティ内でも周知の事実だった。特に可愛がられているのはパーティ最年少のロアとニールであり、いわゆる“母性本能を擽られる”というやつらしい(俺は普段の言動が子供らしからぬという事で、ほどほどに面倒を見られている)。本人は自覚していないだろうが、彼女の言動は姉や母のそれであったため、やけに年上ぶって俺達に構ってくるのも納得である。


「……子ども扱いされてるってこと?」

「ま、俺らは十歳近く離れてるしなぁ」


 ロアもそうだったが、本当の子供は子供扱いをされることを嫌がるらしく、ニールもその例に漏れず不満げに唇を尖らせていた。俺などは、本来一歳差のところが九歳差まで広がってしまったことで諦めがついていたが、これは諦めていいものなのか自分でもよく分からない。ただ、幼稚に足掻くよりは格好は良いだろう、多分。


「そういや、ニールとハルって同い年だったな。全然そんな感じしねーけど」

「どういうことだよ」

「ハルの方が老け込んでるっつーの?」

「お前、もう少し言い方ってもんがあるだろ……」


 言うに事を欠いて、「老け込んでる」とはどんな言い草だ。俺が少女の外見になっていようがいなかろうが、その評価は流石に看過できず、思わず評価した張本人のヨシュを睨み上げてしまった。が、俺の視線ぐらいでは何も感じないらしく、意味を分かっていない顔のまま俺を見下ろすそのデリカシーのなさには呆れ果てるばかりである。

 一方、ヨシュ以外の面々は奴の失言に露骨に表情を歪めており、ニールとアキに至っては珍しく怒りを露わにしている始末だ。


「そんな言い方はダメだよ、ヨシュ……!」

「そうですよ、ハルさんは女の子なんですから」

「いや、そこはいいんだけどよ……」


 ニールはともかくアキが怒る理由に見当がつかないが、たまに俺に対して失礼な発言をするくせに意外とフェミニストなんだろうか――そんな感心を抱きつつ、二人のあまりの剣幕に俺の方が引いてしまい、理由を聞くタイミングを逃してしまった。

 なお、グレイは一瞬眉を動かし注意こそしたものの、その後はただ笑って俺達の様子を見ていただけである。

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