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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第5章 火山と温泉街を越えて
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第9話

 翌朝、対マイタイト要員のメディナ、アキ。そして戦闘要員のニール、ヨシュ、俺の五人は、エディと邂逅した場所を目指し、樹海を歩いていた(フィーとグレイはロアの付き添いで留守番中である)。

 昨日メディナが付けていた目印は今も残っており、目的地へは難なくたどり着けたとはいえ、岩や木の根で足場の悪いこの森を何度も歩くのは骨が折れる。そんな道を昨日は全速力で走ったのだから、火事場の馬鹿力とは凄いものだと感心するばかりだ。


「この辺だったっけか?」

「そうね。印はここで止まっているし、あの男の魔力の残滓も感じる……」

「……でも、何もなさそうだね」


 件の開けた場所にたどり着くと各々警戒しながら周囲を確認していたが、ぱっと見た感じでは特に変わった所は見当たらない。とはいえ、遺跡でもマイタイトは物陰に隠されていたことから、念のため十数分ほどは手分けして探し回っていたのだが、それでもやはりマイタイトも魔物も出てくる気配はなかった。

 どちらもないことは分かっていたし、当然ない方がありがたいが、それでも肩透かしを食らったような感覚だけはどうしても感じてしまうあたり、俺も感情移入をしすぎている感はある。


「うーん……魔物も集まってくる様子はなさそうですね」

「じゃ、マーキングはされてねぇってことかな」


 俺とアキも白々しい反応を返しながら周囲を眺めていたのだが、この中で唯一ほとんどその場を動いていない人物がいたため、次第に俺達の視線はそちらに向けられていく。

 何かを考えている様子もなくただ森の中を眺め呆けているそいつは、近付いた俺の存在にも気付いていなかった。


「おーい。ニール、大丈夫か?」


 目の前に手のひらを出し振ってみても数秒は反応がなく、俺が本気で心配し始めた頃にようやく焦点が定まり瞬きを繰り返したニールは、まるで状況を理解していないと言わんばかりに目を丸くしている。


「……あ……ご、ごめん。何か言ってた?」

「いや、お前がぼうっとしてるから気になっただけだよ」

「そっか……えへへ、ありがとう」


 意識を取り戻した途端に謝りはしたものの、はにかみながら礼を言ってくるその様子に緊張感はなかった。たしか、この時は本人も不調の理由を自覚はしていなかったんだったか。


 実のところ、いくらこのゲームのオリジナル版は子供の頃に何度かプレイしたとはいえ、リメイク後は一度しかクリアしていない上、こっちに来てから半月は経過している事から、ゲーム中の細かいところが最近あやふやになってきている。今後はもっと忘れていくことを考えれば不要な干渉をしないよう、よりいっそう気を付けなければいけないところだが、その辺を自覚できる自信が段々なくなってきていたのが怖いところだ。

 一方、アキの奴は頭が良いからか若さ故かは知らないが記憶力もあるらしく、俺よりも長いことこっちにいる割には俺よりも細かいところを覚えているように見える。今後はアキに見張っていてもらった方が良いんじゃないかと思うほどだが、そこで負担をかけて良いものかどうか。思いつきはしたものの、あまりの情けなさで打ち明ける勇気まではまだ持てなかった。


「――なあ、こんなもんが落ちてたけど」


 その後、ニールが心配なのかそわそわと落ち着きのないアキにそいつを任せて周囲を探索していたその時、ヨシュが何かを見つけたらしく、片腕でそれを軽く掲げながら俺達の方へ戻ってくる。


「短剣? あの男の持ち物かしら?」

「…………それ、エディって人の力を感じるよ」

「本当? ……私には分からないみたい。魔力じゃないのかしら」


 それは短剣だったが、白い刀身や鞘が彫りや宝石で装飾されており、武器に詳しくない俺の目から見ても実用的なものというよりは儀式用のものに見えた。

 ここに来て全く予想だにしない物体の出現で興味を引かれたのか、みんなは作業を止め短剣をまじまじと眺めていたが、俺が声を掛けた後もやや呆けていたニールがそんなことを言い出したため、興味は警戒に変わっていった。


「ちょっと貸してくれる?」

「おう、気を付けろよ」


 ヨシュから短剣を受け取ったニールは少しの間それをじっと見つめていただけだったが、そばにいてもほとんど聞き取れない程の小さな声で何かを呟く。


「っ、なに……!?」


 その瞬間、短剣が輝き出しあまりの眩しさに俺は目を閉じた。しかしその光もすぐに収まり、その場は元の通り短剣を握ったニールと目を瞑った俺達だけが佇んでいたのだった。

 今のは、浄化の術を使った際の光だった筈だ。ニールは浄化師としてはまだまだ未熟だが、それでも浄化そのものを出来ないわけではない。そして、そんなニールが浄化の術を使ったということは、この短剣には浄化しなければいけない程の何かがあるという事だ。


「…………やっぱり、魔物と同じ、ちから……」

「ニール!?」


 だが、それを問いただす前にニールは意識を失い、その場に倒れてしまった。

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