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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第4章 砂漠の遺跡
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第5話

 グレイに連れられてアピの町長の家を訪ねた俺達は、平然と自らを傭兵だと騙るメディナの口の達者さに呆気に取られながら、なんとか遺跡への入場の許可を貰おうとしていた。


「傭兵として参加してくれるのは助かるが……」


 が、勿論同行している俺が子供である事や他にも何人か子供がいるという事が足を引っ張り、町長は俺達が傭兵であるとは信じられないようである。訝し気な視線が向けられると、嘘をついている後ろめたさも相まって思わず視線を逸らしたくなるが、これ以上疑いの種を増やす真似は出来ず、愛想笑いで誤魔化すしかない。


「その武器は、本当に君の得物かね?」

「そ、そうですけど……ほら」


 背に抱えていた大剣を鞘から引き抜き片手で軽く振り回して見せると、町長は大袈裟に驚き後退ってしまう。といっても、絵に描いたような華奢な美少女が身の丈程の大剣を片手で振り回したら、驚くのも無理はないだろう。ちょっとした視覚の暴力だ、と言われても文句は言えない。

 自分でも全く心当たりがないこの怪力の原因も、いずれは解明したいところだ。


「な、なるほど…………分かった。すまないが、討伐を頼む」

「ええ、出来る限りのことはしてきます」


 契約書を受け取りながら軽く頷いたメディナにつられるように俺も頷き、すっかり憔悴している様子の町長に現状について詳しく説明を受けることになった。

 曰く、一週間ほど前から急に数が増えた魔物達は遺跡内のみを跋扈(ばっこ)しており、遺跡の外から新たに侵入してくる魔物はいても、遺跡の外へ積極的に出ることはないらしい。そしてこの地が砂漠ということもあり、四足歩行の獣タイプよりは翼のある鳥タイプのものが多く、討伐に苦労している現状も魔物が宙を飛んでいる事が原因とのことだった。この辺りの下りはゲーム通りのため、まずは一安心だ。


 そうして、十数分ほど説明と契約内容の確認を行った俺達は、町長の家を後にしたのだった。


「――俺がついてっても何とかなったな……この町大丈夫か?」


 町長の家を出て間もなく、あまりに簡単に事が進んでしまったことに思わず本音を零した俺だったが、それは他のみんなも同じように感じていたのか、肩を竦めたり苦笑を見せる。


「猫の手も借りたいってところじゃない? 話を聞く限りじゃ、魔物の数も並じゃないみたいだし」

「雇われた傭兵の中にも、既に死傷者が出ているようですからね……」


 一見穏やかなこの町の現状も、決して楽観視していいものではない。実際に足を運んで分かったことだが、件の遺跡とこの町の距離は子供の足でも三十分程度しかなく、町が魔物に襲われていない事が奇跡といっても過言ではないレベルの近さなのである。


「いつこの町も襲われるか分からんからな。とはいえ、こちらも別件があるのだし無理は出来ないが」

「だな……じゃ、とりあえず宿に戻るか」


 契約した以上、ある程度は魔物も減らさなければいけないとはいえ、俺達の目的はあくまでも地図の方だ。正義感の強いフィーあたりが張り切り過ぎないよう注意しなければ――と打ち合わせしながら、宿を経由し遺跡に向かった。


 ◆◆◆


「町長に傭兵として雇われてきたわ。開けてもらえるかしら」


 数時間で戻ってきた俺達の姿を見て門番の二人は一瞬呆れたような表情を見せたものの、メディナが契約書を出すとその目は驚愕と疑いが交ざったものに変わる。が、正式な許可を得ている以上、文句や疑問を口にするつもりはないようだった。


「な……あ、ああ。そうみたいだな……無理はするなよ」

「おう、思いっきりやってくるぜ」


 威勢よく入場した一行が誇る鉄砲玉・ヨシュの後に続き続々と入場すると、早速視界に映る鳥のような生物。勿論、それは鳥ではなく飛行できるタイプの魔物であり、それらが遺跡の中心部上空付近で飛び回っているのだ。

 そして、あちこちで雇われた傭兵と思わしき人間の声や金属のぶつかる音も聞こえてくる。今この時も、傭兵達は討伐に勤しんでいるようだ。


「あんなに高いところを飛んでるんじゃ、倒すのも大変だね……」


 空を見上げながらそう漏らしたニールの意見には、誰もが頷くばかりだ。

 ここの魔物達は少なくとも三メートル程度は上空を飛んでいるため、俺とニールの剣や、グレイの槍も届かず、対等にやり合うなら魔法か飛び道具が必要だ。そうなると活躍するのが、攻撃魔法を扱うアキ、弓を扱うフィー、そして【魔法銃】という特殊な武器を扱うロアだけである。

 ロアの魔法銃は、彼女の父親が自作したこの世界に一つしかない武器だ。銃の内部に魔石が仕込まれており、魔法を銃弾のように飛ばす飛び道具なのである。勿論、本物の弾丸は使えないため、魔法を扱えない人間には扱うことが出来ない高度な武器だったりもする。当然、これを使いこなすロアは魔法使いの素質があるのだろうが、結局ゲーム中では銃以外で魔法を使うことがないのが少しもったいない。


「なぁ、アンタの魔法で一掃できねーのか?」

「うーん……あんなに動き回られると、私の魔法では一掃は難しいですね」

「そっか。じゃあ、地道に倒しながら地図を探すしかねーな」


 こうして、砂漠の遺跡の探検と魔物討伐が始まってしまったのだった。

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