表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第3章 洞窟とハンサムと幼女
25/130

第9話

 町に戻った俺達が少女とグレイを連れている事を知ると、出入り口付近で待ち構えていた自警団や町民達は歓声を上げて出迎えてくれた。まるで祭りでも始まりそうな程の騒ぎになりかけたが、少女が疲労と睡魔を訴えたためそれは未然に防がれたのだった。

 そういえば、二人は早朝から洞窟にいた筈だ。その上敵に捕まって神経をすり減らしたのだから、緊張が解けた今、舟を漕いでしまうのも無理はないだろう。


「あの子は?」

「寝ちゃったわ。疲れてたみたいだし、しばらく休ませてあげなきゃ」


 そんなわけで、宿に戻るなり少女を休ませ、俺達も一旦休憩となったのだった。


「――で、アンタの名前聞いてなかったな」


 流石に一部屋に集まるには人が増え過ぎた一行は、宿のロビーのソファーを陣取りたむろしていた。宿からのサービスで出されていた紅茶を飲みながら一息ついていたところで、遂にヨシュがグレイと意思疎通を図り始めたのだった。

 なお、メディナだけは少女の様子を見る為に部屋に残っている。


「ああ、そうだったな。俺はグレイだ、弟を探して旅をしている」

「弟を……?」

「一年ほど前に親父と喧嘩して、家出したまま戻ってこなくてな。親父とお袋が心配するもんだから、俺が探しに出てきたってわけだ」

「な、なんだか大変ね……」


 そもそも少女を守るために共に旅をしていたこと、また、グレイが大人らしい落ち着きを見せながら気さくな態度で接していたからか、ニールとヨシュは既に大人の男としてグレイを信頼し始めているようだ。実際信頼に足る男であることは俺も知っているため、いくら簡単に信用し過ぎだと言いたい気持ちはあっても、直接文句を口にするつもりはなかった。


「そっちは、どうして旅をしているんだ?」

「えっと……」


 ◆◆◆


 主にニールとフィーにより、俺達はここまでの経緯を改めて聞かされていた。

 迷いの森で行き倒れていた俺はそれ以前の話をゲームでしか知らないのだが、最序盤にアキが合流している事で多少出来事が変わっているところもあるようだ。

 例えば、チュニスの基地に潜入した際、アキの魔法によりゲームよりも楽に魔物を殲滅出来た――とか、同じ基地で合流したヨシュが、アキの存在によりゲーム以上にニール達を警戒した――といった具合だ。メディナと邂逅した際もアキの存在で展開に少し違いがあったことから、ここまではアキが干渉したことで少なからず影響を及ぼしているようである。


 なら、俺の存在で変わったことはあるんだろうか。などと、ちょっとした対抗意識で今までの事を思い返してみたものの、思い出せば思い出すほど何とも言えない記憶にぶち当たってしまったため、記憶にそっと蓋をしたのだった。


「ほう、魔王の本拠地を……」


 一方、静かに耳を傾けていたグレイは、ニール達の旅の目的を聞かされ神妙そうに口元を押さえたが、俺達がアピに向かっている事を知ると何かを察したかのように軽く頷いて見せる。


「まだ、ちょっとの手掛かりも得られてないんだけどね」

「……なら、砂漠の遺跡に地図が残っているという話を聞いて、ここまで来たのか?」

「地図……?」


 砂漠の遺跡の地図というのは、現代のように紙に描かれたものではなく、遺跡の壁に描かれた地図の事である。といっても現在はその壁も崩壊しており、普通の手段で内容を読み解くことは不可能だ。

 そこで活躍するのが、我らがメディナというわけである。仲間になってからはずっと俺達を導いてくれている彼女だが、万能過ぎてまともな戦闘能力を奪われたのではないかと邪推するほどにはシナリオ上重要な人物なのだ。


「なんだ、知らないのか?」

「う、うん……」

「メディナは、そこまで知ってる様子じゃなかったな」


 メディナがアピの遺跡を候補として挙げたのは、あくまで魔王の本拠地に関する情報があるという可能性を示したからである。決して、確実に何かあると思ってのことではなかったため、地図の情報など知らなかっただろう。ニール達も、情報があれば助かる程度の認識でここまで足を運んでいたため、思いもよらぬ展開に目を輝かせた。


「なるほどな……なら、助けてもらった礼だ。丁度向かうところだったから、アピまで案内しよう」

「え、いいの?」

「ああ。命の恩人に対する礼としては、安すぎるぐらいだがな」

「じゃあ、お言葉に甘えるぜ」


 グレイと少女は、アピで探し人についての情報を集めるつもりだったらしい。少女に断りも入れずにそんな提案をしてもいいのかと俺も突っ込んではみたが、あの子も同性の仲間が増えれば喜ぶだろう――とのことである。

 なお、この問答の間一言も言葉を発しなかったアキは見事な作法で紅茶を楽しんでおり、お喋りは完全にこっちに任せていた。良いところのボンボンなのかは知らないが、形だけでも会話には参加しろよ。という文句と、様になり過ぎるから止めろ。という文句のどちらを口にするかで悩んでいた結果、俺は文句を言うタイミングを逃してしまった。


 その後、メディナが合流しグレイが同行する旨を伝えたところ、少女抜きで勝手に決めるなと少しばかり苦言を呈されてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ