表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第2章 美女と復讐
16/130

第8話

 一通りの打ち合わせが終わり一息ついたところでヨシュが空腹を訴えたため、俺達は一旦昼食を取っていた。

 色々な出来事が一気にあった事で忘れかけていたが、俺達がブレンダンを倒しウルム基地から脱出したのは、今日の午前中の話だったのだ。そりゃあ、町に着けば緊張も解けて腹も空くというものだ。

 慣れない事をして必要以上に疲弊していた俺を含めた他の面々も同様に緊張が解けたらしく、俺が拾われた直後の昼食とは比べ物にならない量の料理を行儀良く掻っ込んでいくニールの姿などは、なかなかに印象的だった。ちなみに俺は小柄な少女なだけあって、元の体の頃ほどは食べられないようである。


「……ええと……出発はいつにするの?」

「明日の朝かな。買い出しとか、準備もあるし」


 ニールの容姿と物腰からは予想できない状況が眼下に広がっていたことに呆気に取られたのか、しばし呆然としていたメディナだったが、咳払いをするとなんとか声を掛けていた。そういう気の抜けた反応が出来るほど、彼女もようやく肩の力を抜くことが出来たのだろう。


「それはよかった。なら、私は少し出掛けてくるわ」

「あ。じゃあ、わたしも一緒に――」

「一人で行くわ」


 食事を終えたメディナが席を立つとフィーも後を追うように腰を上げたが、それを素っ気なく制しメディナは背を向けてしまう。彼女がそんな態度を取る理由を知っていた俺とアキは思わず目を合わせたものの、考えることは同じだったのかおもむろに頷かれた。まあ、ここは見た目だけでも同じ女の俺が動くべきなのだろう。


「フィー、俺の買い物に付き合ってくれよ。他に着替えがないからさ」

「あ……う、うん。分かった! メディナも気を付けてね!」

「……ええ、また夜に」


 そんなもっともらしい理由でフィーを引き留めれば、彼女も深く突っ込んではいけないことだと察したのか、大人しく引き下がる。それでも納得自体は出来ていないらしくフィーは僅かに表情を曇らせたが、メディナに対しては笑顔で見送っていた。

 そして当のメディナは、フィーの声に僅かに眉尻を下げながら宿を後にしたのだった。


「……ねぇ、一緒に行かなくて大丈夫だったの?」


 メディナの姿が見えなくなると、不満げなフィーの視線が俺に向けられる。フィーはフィーなりにメディナを心配しているのだろうから、その反応はもっともだろうが、今回は俺達の判断の方が正しい筈だ。


「彼女、お墓に行きたかったんじゃないでしょうか」

「あ、そっか……この近くなんだっけ……」


 アキがそう口を挟んだことで、大人しく俺達のやりとりを見守っていたニールとヨシュも含めた三人は、俺とメディナの態度の理由をようやく理解したらしい。

 そう、メディナの恋人であるダリルの遺体はこの町付近で発見され、町外れの墓地に埋葬されているのだ。もっとも、ゲーム中では墓地の明確な位置は示唆されていないため詳しい事は俺にも分からないが、メディナが墓参りに行ったことだけは知っていた。だからこそ、アキも俺にフォローを促したのだろう。こいつも、なかなかやり込んでいるようだ。


「そうそう、だからつっつくのはやめとこうぜ。あと、俺の着替えがないのは本当だから」

「そうだったわね……よーし、任せて! とびっきり可愛いのを選んであげる!」

「お、お手柔らかにな……」

「じゃあ、ボク達でアイテムの補充をしておくね」


 仕方がなかったとはいえ、昨日の時点でフィーの買い物が長いことを知ってしまった俺は、異様に張り切っている少女の様子を見て後悔の念に駆られ始めていた。またあれ(・・)を体験しなければいけないのか――と身震いすらしてしまったが、幸いにもフィー自身は気付いていない。

 一方、俺にフォローを振ったアキは小声で謝罪を入れてきたものの、こればかりは俺の話の振り方にも問題があった上、着替えについては死活問題だからこいつに文句は言えなかった。


「ありがと。次は私がするから、今回はお願いね」

「夕方までには戻ってこいよー」

「……そうだな……そうできれば、いいな」


 そんな俺の腕を掴んで宿の扉に向かうフィーにヨシュが声を掛けたが、そのありがたい忠告が実を結ぶことはなく、心配したアキとニールが呼びに来るまで――具体的には、閉店間際まで俺達は各店を回り続けることになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ