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俺は大剣使いの美少女  作者: 天海
第14章 俺は大剣使いの美少女
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最終話

 あの冒険が終わってから、半年程経った。せっかくだから、みんながどうなったか少し纏めておこう。


 グレイは弟のトマスを説得してウルムの実家に戻ったが、トマスの修行の件を巡り親子喧嘩が始まってしまった為、グレイがお目付け役になって兄弟で旅に出たらしい。あの人も、つもつくづく苦労人気質である。

 とはいえ、今回は復讐や人探しといった明確な目的もなく、トマスに付き合っているだけだからか、本人はそれほど不満はなさそうだった。


 フィーは、本人の宣言通りチュルスの親戚の家で世話になっているらしい。元々家族ぐるみの付き合いをしている親戚だったからか、半年も経たずにすっかり本当の家族のように馴染んだというのだから凄いものだ。弓の腕で食費に貢献しているのも大きいらしいが、それはそれで良い事だろう。

 ただひとつ問題があるとすれば、ヨシュとの仲が進展する気配がない――という愚痴が頻繁に届くというところだが。


 そのヨシュの方はというと、この騒ぎの間に魔物に襲われ孤児になった子供たちの面倒を、一家でみることになったらしい。孤児院紛いのことを始めたとはいえ、あのヨシュが育った家なら大丈夫だろう、という謎の信頼感はある。本当のところは、実際に見てみなければ分からないとはいえ、フィーから聞く話では楽しそうだという事だ。


 一方、メディナは一度ブランタの実家に戻った後、ウルムへ向かったらしい。あそこには彼女の恋人の墓があるから、何かしらしたいことがあるんだろう。もしかしたら定住する可能性もあるかもしれないが、それは俺が口出しするような事じゃない。

 なんだかんだ言って、俺の次に色々と引きずっている人だ。


 そして、残りはラルタルに居着いた連中だ。

 まずはロアだが、あの子は両親と三人で仲良く暮らしている。村の住民達とも真っ先に打ち解け、今では子供達のまとめ役として、色々と忙しい大人達の代わりに遊んでやっているのだ。母のヴェロニカも魔物達からは元々評判が良かったため、女性陣からは特に慕われているようだ。


 そして、大人達が忙しくしている理由の元を作っているのが、アキとエディの二人だった。

 この二人は村での生活が落ち着くと、すぐにライフラインの整備に着手を始めたのである。アキと俺の現実世界での一般人程度の知識を元にああでもないこうでもないと実験を繰り返し、(動力はあくまで魔力だが)現実世界の浄水設備のようなものを作り上げてしまったのだ。そのまま上下水道まで作り始めてしまい、それを村中に設置しようとしているから村の大人達は工事に駆り出されているという訳である。井戸から汲み上げるより数倍楽な設備を目にした村人達も、なんだかんだ喜んで協力しているのだから大したものだ。まあ、二人の背後にニールがいたことも大きかったが。


 村の成り立ちから、ラルタルでは最も尊ばれている浄化師のニールは、魔王がいなくなったことにより半端に悪意を失い群れから追われた魔物達を保護し浄化している。たまにグレイ達が魔物を保護して来る事があるから、あいつもなんだかんだ言って忙しい毎日を送っているが、復讐を目標にしていた時に比べれば楽しそうに見えた。

 故郷の実家に置いたままの両親の蔵書などは、いずれこっちに移動するつもりらしい。



 そして、肝心の俺はというと


「次はどっちだ?」

「村の西にお願いします。既に掘ってあるので、作業を確認しつつそのまま埋めていただければ助かります」

「心配でしたら、私も確認しますね」

「悪いな、見ててもらえると助かるよ」


 とりあえず、元トマスの家を使わせてもらいながら、力仕事要員として村の整備の手伝いに精を出していた。暇な時は村の子供達の野遊びにも付き合わされているが、最近はあまり時間がないから遊びの提案をするだけなことが多い。とはいえ、子供達はそれでも満足そうにしているから、遊べればなんでもいいんだろう。

 そんな肉体労働に加えて、この世界の言語は英語だから、とりあえず読み書きができるように夜はエディに頼んで勉強もしているため、俺もそこそこ忙しい生活を送っている。


 そう、結局メディナの助言に従い生きる目標を探すために、俺はまずこの世界で生きる為の知識や能力を身に着けようと思ったのだ。何かしたいと思った時に、選択肢は多ければ多い方が良いだろうから。


「急にそんなに勉強されて、旅にでも出るんですか?」

「まだ決めてねぇけど、それもいいかもな」


 アキの言う通り、平和になった今なら一人旅も悪くはないだろう。まあ、まだまだ魔物は跋扈しているからそう簡単にはいかないだろうが、将来の選択肢に含めて損はない。


「でも、もし行くなら、ひとりでは行かせてもらえないと思いますよ」


 そう笑ったアキの視線の先には、部屋の扉の隙間から勉強中の俺を見つめている子供の影があった。この家には俺だけでなく、アキとニールも住んでいるから、十中八九あの影はニールだろう。

 あいつは、思った以上に奥手らしく未だに告白の一つもしてこない。しかし、そのおかげで俺の心の平穏は保たれているのだから出来る限り刺激はしないでほしいのだが、どうやらアキの奴は楽しんでいるようだ。心底やめてほしい。


「……まあ、その時は考えるよ」

「ふふ、楽しみにしてます」

「お前も来るのか……」


 今後何をするにしても厄介なのがふたりくっついてきそうなのが気になるところではあるものの、これはこれで心強いのかもしれない――などとほんの少し考えながら、案外楽しめるのかもしれないと未来に対し思いを馳せた。

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