第4話
「ヴェロニカと魔族の融合については、何か掴んでいるの?」
「うーん……それがね、魔王が何者かの技術を模倣してやっていたらしいって事までは掴めたんだけど、原理や対処法までは……」
魔王の目的や魔王軍の現状など、エディは知っている限りの情報を伝えていてくれたが、彼にとっても最も重要な妻・ヴェロニカの異常については、洗脳前も洗脳後も詳細を調べることが出来なかったらしい。とはいえ、洗脳中は調べられないように弄られていたんだろうから、仕方ないと言えば仕方ないだろうが。
「何者かの技術……?」
「この世のどこかには、戯れで生物の精神……というか、魂を複製して生物や人工物に入れている、っていうとんでもない存在がいるらしいんだけど、魔王はそれを模倣していたみたいだね。その実験の一環で、彼女の様に別の生き物に精神を融合させた存在を作り出していたみたいだ」
「魂を複製……嫌な話だな」
異なる精神と異なる肉体の融合とは、ある意味“異質同体”――つまり、“キメラ”のような存在を作るということだろう。実験されたヴェロニカ本人や、その家族がいる前でそう口にするのは憚られたから黙ってはおいたが、後でアキに聞いたところ、実験によって生み出された存在はゲーム中でもキメラという扱いにはなっていたらしい。
勿論、その話は二周目以降にしか出てこないらしいが。
「本当に存在しているかも怪しいけれどね……ただ、魔王は随分とロマンチストみたいだよ。やること全てに、悪意しかないけど」
「ほんと、はた迷惑だわ……とっとと倒さなきゃダメね」
「そうだね。また人里を襲われたら、今度こそ滅んじゃうかもしれないし」
「うん、そう遠くない内にまたやるって言っていたから、行くなら早めがいいね」
今朝の狼狽えようからは想像出来ないほど落ち着いた様子のエディの後押しを受け、言い出したニールとフィーは決意を固めたように深く頷く。
それにみんなが同意し同じように頷くが、ヨシュは何か気になることがあったのか、あ、と声を上げた。
「あんた達はどうするんだ?」
「僕も行くよ、しっかりお礼をしに行きたいからね」
「私も行かせていただきます。それに私が行かないと、皆さんの帰りの足がなくなってしまうでしょう?」
エディとヴェロニカはどちらも笑っていたが、目は笑っていなかった。二人とも復讐に燃えているんだろう。そういう意味では、ニールと仲間達と全く同じ条件に並んだため、まさに彼らも仲間であると言える。
「ロアは……」
「行くよ。おいてかないで」
「ということだから、僕達家族もよろしくね」
「はは、こりゃ頼もしいな。ニール」
勿論ロアも両親と共に来てくれることになった為、こちらの戦力は今までとは比較にならないほど強大になった。翌日に魔王の本拠地に向かうことになった俺達は、その日この冒険最後の夜を過ごしたのだった。