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プロローグ

ストーリーは他の作品と被らずに執筆しますが、もし、あの作品と展開が似てるなと思ったら、こっそり教えてください。お願いします。

 駅前のコンビニエンスストア。仕事前の会社員が数多く利用している。

 鳴り止まない入店のチャイムにイライラしているコンビニ店員。

 今は午前八時。一日で一番混む時間にこのコンビニ店員は一人で対応していた。

 

「お会計七百二十五円です。お箸はお付けしますか?」

「当たり前だろ」

「は、はいすいません」

「他に店員はいねーのか!遅刻するぞー!」

 

 店内に飛び交う数々の怒号や文句に彼はイライラした。

 もう…我慢出来ねぇ…。

 彼はゆっくり目を閉じると、ゴムのように両腕が伸び、レジのスキャナーを左手に収めた。

「次にお待ちの方どうぞー」笑顔で言う。

 うわー、キャーと叫び声。妖怪だ!と例える者もいるなか、レジに並んでいる客は次々と出入り口から飛び出し、店内にいる者は彼と、事務所にいる店長のみとなった。

 出店のチャイムは長く、当分途絶えない。

 そんな状態を目の当たりにして目を丸くする彼に「石井君…君ねー…」と店長が呆れ顔で呟いた。

 

「石井君、言ったでしょ。もう腕を伸ばさないでくれって…」

「店長が悪いんでしょうが!シフトをいつも俺一人にするから!」

「だってね、みんな怖いんだって、君の腕。一緒に入るの嫌だって…」

 それならレジ手伝えよ。一番混む時間帯に入れるなよ…。などまだまだ言いたい事はあったが、全てをまとめるとある結果に導かれた。

「もう辞めてやる!」

 石井はそう叫び、制服を脱ぎ捨て、退職した。

 

 居間で寝転がりテレビを見ていたが、ふと喉が渇き、冷蔵庫にある緑茶を取ろうとした。だが再放送していたドラマは展開が早く、一秒たりとも見逃せないため、彼は再びあの能力を使う。

 伸びた右手はペットボトルの緑茶を手放さず持ち主の下へと戻る。

「あー、楽だ。本当に楽だ」

 石井はわざとらしく叫ぶが、その叫びが彼を虚しくさせ、テレビへと集中させる。

 脳内が激しく光る。

 まただ。

 いきなり襲いかかる光は、彼の地獄のような日々を映し出す。

 

 生まれた時から腕が自由自在に伸びていた石井和之(いしいかずゆき)

 そんな彼を両親は妖怪を生んでしまったと悲しみ、将来に怯え、気が付けば養護施設にまだ生まれたばかりの石井を置いていった。

 腕が伸びる以外、彼は普通の人。それを知った養護施設、ひまわり園の園長、富澤伸江(とみざわのぶえ)は石井を普通の子のように接し、育ててくれた。

 だが、富澤以外は彼をちゃんと見なかった。

 学校では同級生に『ゴム人間』とからかわれ、避けられ、肩身の狭い思いをしていた。

 そのいじめは、高校一年の時に終わりを告げる。

「君のその能力、俺に託してくれないか?」

 一人寂しく屋上で昼飯を食べていた石井をそう言って野球部に誘ったのは、野球部顧問の林原(はやしばら)だった。

 どんなフライも腕を伸ばせば、簡単に取れ、確実にアウトになる距離でも腕を伸ばせばすぐにホームベースに届く。

 そう、最強だ。

 石井の活躍でいい成績を残せずにいた野球部は、見事甲子園出場を決めた。

 だが、高野連は石井の能力は反則と訴え、甲子園出場は取り消し、石井を誘った林原は懲戒免職。石井も責任を取られ、退学処分を受ける。

 もう普通の生活は送れないと悟った石井は見せ物小屋を開き、自分の能力を見せ物にし、金を稼ぐ生活を送っていた。

 それを見ていたコンビニの店長、町田(まちだ)が、彼をコンビニへと導いた。

 

 その結果が、今だ。

 見せ物小屋じゃ安定した収入は得られないだろ?時給も他のバイトより高くする。だが、実際は同じだ。

 みんな受け入れてくれるよ。どこがだよ。結局一緒に入るのが嫌とか言うだろ。

 次第に石井の苛立ちが最大限に達し、ある決意をし、立ち上がった。

 

 店長を殺そう。

 

 石井は裏口付近に身を潜め、腕時計で時刻を確認する。

 午後七時。店長が自宅に一時帰宅する時間だ。

 裏口から店長が夕刊を片手に出てくる。今がチャンスだ。

 狙いを定め、刃が出たカッターを右手に握り、店長の胸目掛けて伸びた。

 

 そこからは時間が早く感じた。

 気付けば三台ものパトカーが、パトライトで辺りを照らし、石井は捜査官に手を引かれパトカーの後部座席に座った。


 石井和之。殺人の罪により逮捕。懲役十八年。


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