表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/260

蘇る勇者たち

早速やらかしてしまいました……(;´Д`)


予約投稿の時間を間違えたと思ったら、日付も間違えていました。


気を付けないと駄目ですね。

 ゲートの中継器奪還のため出撃したクレオは、旗艦のブリッジで声を荒げていた。


「たった数年でリアム自身が乗り込んでくるだと……て、撤退!」


 長距離ワープゲートより姿を見せるのは、リアムの旗艦であるアルゴスである。


 率いるとなれば、バンフィールド家の精鋭たちか本軍そのものだろう。


 あるいはその両方か、だ。


 どちらにしても、現状では自分たちの勝利している姿が想像できない。


 クレオは恐怖心から撤退を宣言するのだが、既に戦端は開かれていた。


 補佐をする騎士が、クレオの狼狽振りに顔を歪めている。


「皇太子殿下、司令官がそのような弱腰では部下たちに示しがつきません。それに、撤退するにしてもこのままでは我々は、敵にとってかっこうの餌食となりましょう」


 既に旗艦のブリッジにいるクルーたちは、クレオが敗北を悟って逃げようとしていると知ってしまった。


 このままでは自分たちは負けるのではないか? そんな不安が次第に大きくなり、それはいつしか味方全体へと広がるはずだ。


 自ら勝率を下げた行為に、騎士は歯痒い思いをしているのかもしれない。


「まずは全軍をゆっくりと下げ、それからでなければ多くの味方を失ってしまいます」


 だが、クレオには関係なかった。


「このままでは俺たちが逃げ遅れる! すぐに首都星に撤退だ!」


 味方を見捨てる決定を下したクレオの命令に、騎士は深呼吸をしてからブリッジクルーたちに命令を出す。


「……全員、聞いての通りだ。全軍に撤退しろと伝えろ」


 騎士の言葉にクレオは安堵する。


「最初から俺の命令を聞いていればいいんだよ」


 しかし、騎士はクレオの方に体を向けると騎士礼をして、それから別れを告げる。


「皇太子殿下、私はこれより他の艦に移り撤退の指揮を執ります。ご一緒できるのはここまでです」


 言うだけ言って、騎士は駆け足でブリッジを出て行く。


 旗艦に残っていた方が生き残れるのに、あえて死地に向かう騎士をクレオは理解できなかった。


「お前は俺の補佐役だろ! 優秀だから側に置いていたのに、俺を見捨てるのか!」



 改修が完了したアルゴスのブリッジにて、専用シートに座る俺は脚を組んで戦況を眺めていた。


 簡易的な三次元映像にて戦場の全体図が表示されており、窓から外の景色を見るよりも状況がわかりやすい。


 俺リアム・セラ・バンフィールドは、悪徳領主らしくニタニタと笑って敗走する敵を見ている。


「こうも簡単に崩れると、敵が可哀想になってくるな。指揮官がクレオだったばかりに、首都星防衛を担っていた艦隊までもが足を引っ張られている」


 ティアから共有された情報を確認したが、大半は寄せ集めのパトロール艦隊だ。


 そいつらは敵ではないのだが、帝国でも精鋭と呼ぶべき首都星防衛を担っていた艦隊が参加していた。


 本来であればこちらも被害が出て、多少苦戦したかもしれない。


 しかし、周囲に足を引っ張られて満足に力を出せていなかった。


 俺の側に立つクラウス・セラ・モントは、そんな首都星防衛の精鋭艦隊を憐れんでいた。


「艦隊行動を味方に邪魔され、身動きが取れなくなっているようですね」


「指揮官が無能だと本来の力も発揮できないという、いい見本だな。……クレオの奴は、そういう意味で本当に俺たちの役に立ってくれた」


 何もしない無能であれば既に殺していたが、クレオは余計なことしかしない働き者の無能である。


 軍隊では何もしない無能よりも、働き者の無能が一番の害悪とされる。


「帝国軍はクレオという厄介者のおかげで、本来の力も出せずに負けるわけだ」


 俺は悪徳領主を目指し、そして現在は自分が所属する国家を裏切った。


 本物の悪党である。


 互いに全力を出して戦いましょう! などとするわけがない。


 クラウスは俺の方に顔を向けて来る。


「リアム様、一部が混乱から立ち直りつつあります」


 三次元映像が拡大されると、確かに数千隻がよくまとめられていた。


 味方の撤退を支援しようとしている。


「有能な奴がいるな。だが、ここで味方の数を減らすわけにもいかない」


 命令を出す前に、筆頭騎士……ナイトナンバー1を与えたクラウスが、俺の意を汲んで指示を出し始める。


「立ち直りつつある艦隊に攻撃を集中せよ」


 味方が優先して立ち直りつつあった艦隊を攻撃し始める。


 まともに動ける艦隊がいなくなり、気が付けば敵は統制を失っていた。


 俺はシートから立ち上がって命令を出す。


「……突撃だ」



 首都星にクレオの乗艦が逃げ帰ってくると、宮殿内は騒然となっていた。


 何しろ、首都星防衛を担う精鋭たちがいながら敗走……十五万もの艦隊が負けてしまったのだから。


 既にクレオの敗走の情報は首都星で暮らしている一般人にまで知れ渡り、恐怖心が渦巻いている。


 長年、攻め込まれなかった首都星に敵が来る……平和な暮らしを送ってきた首都星の人々には、受け入れがたい現実だ。


 そんな様子を空から見守るのは、両手を広げて負の感情を吸い続ける案内人だ。


 急速に広がる恐怖心が、案内人の力となっていた。


「ふはははっ! 感じる! 感じるぞ! 今、私は全盛期に届く力を取り戻している! 首都星という負の感情がたまりやすい場所で、恐怖心が広がり、うずまき、負の感情を増大させている! 何と素晴らしい惑星か!」


 負の感情を集めるには最適な環境である首都星は、案内人にとって力を回復させるためのパワースポットだ。


 そんな場所が、リアム率いるバンフィールド家の軍隊の接近で、今までにないくらいに活発に負の感情を放出している。


 ……リアムが原因であるために、案内人の負の感情の吸収効率は百%だ。


 全盛期の力を取り戻した案内人は、早速行動を開始する……のだが、これまで幾度もリアムに苦しめられてきた案内人は、正直ビビっていた。


「これだけの力があれば、リアムなど恐るるに足りない……はずだ。そうだ、そうに違いない。首都星を守る艦隊が負けたくらいで、巨大な帝国がリアムに負けるはずはないんだ。きっと、たぶん、だと思う……」


 案内人は不安で仕方がなかった。


 これまで何度もリアムに勝てると思っては、勝負を挑んで負けてきたのだから当然だ。


 力を取り戻したのに、不安で仕方がない案内人は思い付く。


「そうだ! 今回は入念な下調べをしよう! 今までの私は、心の中のどこかでリアムもしょせんは人間と侮っていたのだ。だから、準備不足だった……リアムが人間? あいつ、人間なのか?」


 既に人の領域を逸脱し、自分たち超越者を屠る力を得ているリアムを人間にカウントしていいものか? 案内人は悩む。


 そして気付いた。


「いかん!? こんな認識だから私は今まで負けてきたんじゃないか! 奴を侮るな、奴は恐ろしい敵だ! よし、気を引き締めた!」


 今まで自分をここまで恐れさせた敵と遭遇したことがない案内人にとって、リアムというのは未知の敵となっていた。


 案内人の中で恐怖心が募る。


 冷や汗を流しながら、首都星の状況を調べながら……今までよりも余計に負の感情を吸い上げていた。


「ふふっ、ふふふっ、今回は負けない。いや、勝つのは私だ! 自分を信じろ、私!」


 そう言いながら、案内人は宮殿の方へと向かって飛んで行く。


 そこから禍々しい何かを感じ取ったためだ。



 案内人が目指した場所は、皇帝バグラーダが親しい家臣たちと面会する部屋だった。


 普段は謁見の間を使用しているが、その前段階の打ち合わせをするような部屋である。


 そこにはバグラーダを前に、宰相が有力貴族たちを引き連れて面会に来ていた。


 宰相の表情は険しい。


「皇帝陛下、皇太子殿下であるクレオ殿下の廃嫡にご同意願います」


 有力貴族たちは要職に就く大臣たちであり、本来は派閥の関係で協力などしない者たちだ。


 だが、そんな者たちまでもが、クレオの廃嫡に納得していた。


 むしろ、すぐに廃嫡すべきであると、普段は敵対している者たちが協力している。


 バグラーダは困った顔をしていたが、案内人には手に取るようにわかる。


(おやおや? こいつは何か企んでいますね。しかも、この状況に全く動じていない? それに、宰相や大臣たちも恐怖心よりも怒りの感情が強いが……リアムに勝つ方法でもあるのか?)


 敵が攻め込んで来る状況でも、彼らには誰一人として恐怖心がなかった。


 あるのは憤怒……帝国をここまで追い込んだクレオを処分したいという気持ちだけ。


 バグラーダは、そんな宰相たちを前に笑みを浮かべる。


「私としてはクレオのままでもいいと思うけどね」


 宰相はバグラーダの気持ちを聞いて、深々と頭を下げる。


「平時であれば構いませんが、今の皇太子殿下では我ら一同が安心して働けませぬ。バンフィールド家の決起だけが問題ではないのです。今回の騒動をきっかけとして、周辺国が帝国を侮り、そして攻勢を強めております。今後も続くと予想される厳しい状況の中、クレオ殿下が皇太子では将兵たちが安心して戦えません」


 皇帝に皇太子を廃嫡しろと迫っている状況だが、宰相たちも普段であればこのような暴挙に出るつもりはなかった。


 だが、状況が許してくれないのだ。


 バグラーダは小さくため息を吐くと、話を逸らす。


「だが、その厳しい状況も勇者たちがいれば解決すると思うけどね。そうだろ、お前たち?」


 バグラーダが声をかけると、部屋の中に三人の騎士が入室してくる。


 その三人を見て宰相は目を見開いた。


「もうお目覚めになっていたのですか?」


 宰相ですら敬語を使うその騎士たちは、帝国の三騎士……帝国を代表する最強の騎士たち、だ。


 剣聖と同じく三騎士は称号のようなもので、たった三枠しかない特別枠だ。


 その三騎士たちだが、これまで姿が見えなかったのは理由がある。


 三騎士の代表を務め、現時点で最強の騎士【コーネリアス・セレ・クランシー】侯爵が首の後ろに手を当てて首を傾げる。


「目覚めたら帝国の首都星が攻め込まれようとしているとは……宰相、不手際ではないか?」


 髪の長い整えられた髭を持つ美青年の容姿であるコーネリアスは、皇族である。


 だから、宰相にも上から目線なのかといえば、そうではない。


 宰相がコーネリアスにも深々と頭を下げた。


「申し訳ありません。バンフィールド家のリアムを見誤っておりました」


「俺が生きていた時代では、存在していても無名だったはずだが?」


 コーネリアスの話を聞いて、女性騎士が笑い出す。


 彼女は獅子のたてがみのような青髪を持つ【ディーディー・セラ・ドリュー】だ。


「あたしらが生きてた時代なんて今から二千年前じゃん」


 最後の一人は緑色の髪をポニーテールにした男性騎士だ。


 名前を【エルジン・セラ・サンダース】。


「……俺が生きていた時代では聞いたことがあるな。辺境で活躍していた伯爵家だったか?」


 今まで三騎士が帝国にいなかったのは、全盛期の状態でコールドスリープ……冷凍保存されていたからだ。


 二千年前の皇帝が、その時代の最強の騎士たちを三騎士にするのではなく、歴代最強の騎士たちを三騎士とする、と方針を変更した。


 彼らが目覚めるのは、彼らに代わる騎士が誕生したと皇帝が判断した時か、もしくは今のように帝国が危機に直面した時だ。


 つまり、帝国にとっては切り札である。


 バグラーダは言う。


「この三人にはバンフィールド家討伐後も働いてもらうつもりでね。しばらくは周辺国の相手もしてもらうつもりだよ。それで、とは言わないが、クレオの件は少し保留にしてくれないか? 私はクレオに期待しているんだ」


 宰相が大臣たちと顔を見合わせ、何やら話をしていた。


 そんな中、案内人だけはコーネリアスの方を見ていた。


(……いるところにはいるものですね。リアムと同じく人外に足を踏み入れた人間。しかも、負の方面に足を踏み入れている)


 リアムが感謝……光ならば、コーネリアスは闇だ。


 禍々しい気配を放つコーネリアスを前に、案内人は微笑む。


 ついにリアムに対する切り札を見つけたからだ。


(お前ならばリアムに勝てる。いや、絶対に勝たせる! 私が、全力でお前たちを支援してやる! だから、今度こそはリアムに勝ってくれ! お願いだからぁぁぁ!)


ブライアン(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ


苗木ちゃん(# ゜Д゜)「私が後書きのヒロインよ! ブライアン? ちょっと呪ってやったらこの様よ。私を舐めたらみんな光合成できない体にしてやるんだから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
苗木ちゃん。人間は、元から光合成をしない身体なんだよ。 って、苗木ちゃんは教育を受けていないから、知らないのか?!
フルパワーの案内人が協力しないといけない程の相手か……これは手強そうですね
>帝国でも精鋭と呼ぶべき首都星防衛を担っていた艦隊 長年、攻め込まれなかった首都星防衛って実戦の感風化してそうなんだが?本当に精鋭なら邪魔な味方は避けるか排除できそうですじゃない? >「これだけの(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ