表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/260

ブレインブレイク

【俺は星間国家の悪徳領主! 8巻】

【1月25日】発売予定!!


予約も開始しておりますので、是非ともご利用ください。


予約してもらえると作者としても嬉しいです!!

「エド! 無事でよかった。本当によかった」


 エドワードが屋敷に戻ってくると、ロゼッタに優しく抱きしめられた。


 周囲には屋敷の使用人たちもいるのだが、そんなことはお構いなしだ。


 無事に屋敷に戻れたことは嬉しいが、エドワードは気恥ずかしく感じていた。


「た、ただいま」


「心配したのよ。屋敷の外で寝泊まりするかと思えば、今度は大騒ぎが起きたでしょう? ダーリンがうまく片付けてくれたみたいだけど」


 出産間近のロゼッタを心配させたエドワードは、申し訳なさを感じていた。


「……ごめん」


 反省しているエドワードを見て、ロゼッタは一度目を丸くしたが、すぐに微笑みを浮かべた。


「いいのよ。ダーリンはちゃんとエドと向き合ってくれたみたいね」


 エドワードが反省している様子から、リアムがちゃんと対応したのだとロゼッタは察したようだ。


 間違いではないのだが、エドワードからすれば少し納得がいかない。


(あれを向き合ったと言っていいものか? 僕からすると強引に向き合わされただけだよな? そもそも、一閃流の役目が僕には重すぎるよ)


 人外の化け物たちを屠る者たち。


 いきなり事実を突きつけられたエドワードは、まだ子供ながら責任の重さを感じていた。


(闇とか化け物とかまだわからないけど、師匠が勝てない相手と戦わされるとか不安しかないぞ)


 エレンは凜鳳に負けてしまったが、エドワードは実力を疑うことはない。


 師としても尊敬しているし、エレンは自分では及ばない強者だ。


 そんなエレンでも凜鳳に勝てなかったというのに、いずれ自分も同等以上の化け物たちと戦わされる。


 リアム曰く、全盛期の安士ですら勝てなかった相手がいる、と。


(一閃流って領主貴族の跡取りが学ぶ剣術じゃない気がする)


 どう考えても跡取りの自分が教わる剣術ではないな、と思うエドワードだった。



 凜鳳と風華が病院に運ばれると、治療を受けた後に病室に運ばれた。


 二人とも重傷ではあったが、金に糸目を付けず治療されたおかげで元気だった。


 それでも入院は必要だった。


 個室にベッドを二つ用意された。


 並んだベッドを使用する二人は、最初は無言のままだった。


 しかし、互いに話すきっかけを作ろうとあれこれ思案し――話し出すタイミングがかぶり、その度に黙り込んでしまう。


 かれこれ一時間以上もそんな時間を過ごした結果、諦めて凜鳳が風華に謝罪をする。


「悪かったよ」


 小声だったが、無言の室内には十分な声量だった。


 風華が驚いて飛び起きようとするが、まだ傷が痛んでうまく動けない。


「お、お前! ……謝るなら最初から暴れるなよ」


 風華が凜鳳に文句を言うのだが、その声は涙声だった。


 安士が間に合わなければ、風華は大事な姉妹を失うことになった。


 それを思うと怖かったのだろう。


 凜鳳がそんな風華を見てクスクスと笑う。


「相変わらず泣き虫だね」


「う、うるせーよ」


 風華は顔を背けると、そのままふて寝をするかのようにベッドに横になって背中を向けた。


 その背中を見ている凜鳳は、懐かしい記憶を思い出す。


「強くなっても、師匠に拾われる前と同じじゃないか。少しは成長したら?」


 ニヤニヤしながら凜鳳がそう言うと、風華は背中を向けたまま答える。


「成長した方がいいのはお前だろ? ――さっさと力を操れるようになれよ。そうじゃないと、安幸が悲しむぞ」


 闇に堕ちた今の凜鳳は、いつ爆発して暴走するのかわからない爆弾と同じだ。


 精神を鍛えて制御できるようにならなければ、また周囲を傷付けることになる。


 凜鳳もそれを理解していた。


「言われなくてもわかっているよ。僕だって家族を傷付けたくないからね。――でも、この力を扱うには時間がかかるかも」


 凜鳳は自分の手の平を見た。


 紫色の炎のようなオーラが出現すると、それを握り潰して消し去る。


 こうしている間にも、闇の力は凜鳳の心を蝕もうとしていた。


 凜鳳は真剣な口調で風華に頼む。


「もしも僕が次に暴走したらさ。今度は風華が止めてよ。師匠や兄弟子には迷惑をかけられないからね」


 風華が寝返りをうって凜鳳に顔を向けた。


 真剣な顔をしていた風華は最初に何かを言おうとして――結局、止めてしまう。


 代わりに笑みを浮かべて軽口を叩く。


「その頃までには、お前より強くなってやるよ」


 凜鳳は口角を持ち上げて笑う。


「僕に負けたのに、随分と強気だね。もう少し真剣に鍛えないと、次も負けるかもしれないよ? そうなったら、泣いたって許してやれないから気を付けるんだね」


 再び今回のように堕ちてしまえば、風華だろうと殺してしまうという自覚があった。


 風華が最初は軽口で返そうとするが――空元気を止めて悲しそうな顔をする。


「そうならないように鍛えろよ。俺は楽しくない喧嘩はごめんだ」


 凜鳳が天井を見上げる。


「そうだね。やるなら楽しい方がいい」



 オフィス街が吹き飛ばされたことで、事後処理が大変なことになっていた。


 俺は屋敷に戻ってくるなり対応に追われるし、仕事量が倍近くまで増えてしまった。


「――戦う場所は選ぶべきだった」


 今になって後悔しているわけだが、それよりも大きな問題がある。


 愛弟子であるエレンだ。


 俺の執務室を訪ねてきたエレンは、思い詰めた表情をしていた。


「師匠の前で醜態を晒してしまいました。どのような罰でも受ける覚悟です」


 凜鳳に敗北した自分を責めているのだろう。


 ただ、今のエレンでは凜鳳に勝つのは難しい。


 戦わせてはみたが、勝利するとは最初から思っていない。


「俺はむしろ、凜鳳に挑んだお前の勇気を評価している。そこまで思い詰める必要もない」


 罰は与えないと言うと、エレンが目に涙をためていた。


 こういう時は子供の頃と同じだな。


 泣きたいのを気丈に我慢している仕草だ。


「私は! ――師匠の弟子でありながら敗北しました。それだけでも許されないのに、騎士として与えられた任務も放棄しています」


 一閃流の事情を優先したエレンは、自分の艦隊を待機させて一時的に帰還していた。


 軍からすれば問題行動だろうが、そもそもナイトナンバーズには独自の判断で行動する権利を与えている。


 今回の件もその範疇で片付けられる問題だ。


 ――まぁ、軍関係者はいい顔をしないだろうけどな。


「そちらは俺から軍に伝えておく。お前が責任を取る必要はない」


 ここまで言っても、エレンは自責の念に駆られていた。


 表情は暗いままだ。


「エド――エドワード様の教育にも失敗してしまいました。大事なご子息を預かっておきながら、この体たらく。罰して頂かなければ、私の気が済みません」


 相変わらず真面目な愛弟子だ。


 真面目すぎると言ってもいいし、少しばかり融通が利かない。


「エドワードの件は、あいつ個人の責任だから気にするな」


「いえ、私の責任です」


 生真面目なところも気に入っているのだが、あまり自分を責められても困る。


「お前は真面目すぎる」


「師匠、私は真面目な話をしています!」


 からかわれたと思ったのか、興奮して声量が大きくなるエレンの顔は赤くなっていた。


 仕方がないので真剣な話をしてやるとしよう。


 まったく――悪徳領主である俺の弟子が、こうまで清廉潔白に育つとは思わなかった。


「お前に騎士の働きを求めたのも、エドの教育を任せたのも俺だ。正直に言えば、お前に頼りすぎたと反省している」


 人手不足を理由に、優秀な弟子にあれこれ仕事を押し付けすぎてしまった。


 エレンが焦りながら俺の評価を否定してくる。


「私なんて師匠と比べればまだまだですよ!」


 エレンと俺では生きてきた時間が違いすぎるから当然だろう。


 それを加味して、エレンは優秀だと思っている。


「お前ならいずれ俺も追い越す。いや――追い越せ。それが一閃流の剣士としての務めだ」


「っ!? は、はい!」


 剣士としての心構えを説くと、エレンが背筋を伸した。


 俺は小さくため息を吐くと、真面目な空気を壊すように振る舞う。


「俺も安士師匠を追い越せるか不安だから気持ちはわかるぞ。だが、お前は俺くらい追い越してもらわないと困る」


 いずれはエレンも人外の化け物たちと戦うのだから。


 ただ、仕事を押し付けすぎて修行時間が確保できていないのが問題だな。


「――エレン、俺はお前に頼りすぎた。むしろ、褒美を取らせたいくらいだ。罰がほしいと言って俺を困らせないでくれ」


「師匠……その言い方は卑怯です」


 エレンが根負けして折れたので、俺は胸をなで下ろした。


「悪かったよ。でも、褒美を用意したいのは本音だ。何か希望はあるか?」


 頑張っている愛弟子にプレゼントを贈りたい。


 むしろ、色々と迷惑をかけているので何かしてやりたかった。


 エレンは少し思案をすると――恥ずかしそうに頬を赤らめて俺から視線を背けた。


「それでしたら、一つお願いがあります」


「何だ?」


「む、昔みたいに……抱き締めて頭を撫でてほしいです」


「え?」


 お前――その程度のお願いでいいの? 確かにエレンが幼い頃に、抱きかかえて頭を撫でてやっていた。


 そういえば、エレンは嬉しそうにしていたな。


「お前がそれでいいなら構わないが――本当にいいのか?」


 心配になって確認すると、エレンは何度も頷いていた。


「是非とも!」



 リアムに今回の件をきちんと謝罪するため、エドワードは執務室を訪れた。


 扉の前には護衛する騎士たちの姿があるのだが、何故か困惑していた。


 守るべき扉も数センチ開いていた。


 そんな扉の前に立っているのは、無表情の天城だった。


 エドワードは天城を見て首を傾げる。


(相変わらず無表情だな)


 生まれた頃からメイドロボたちに囲まれているため、エドワードは人工知能に忌避感はない。


「父上の執務室を覗くのは駄目だと思うんだが?」


 素直に疑問を問えば、天城がエドワードに体を向けてカーテシーをする。


「申し訳ありません。旦那様に急用があったのですが、取り込み中でしたのでこの場にて待機しておりました」


「取り込み中? 何をしているんだ?」


 エドワードが扉の隙間を覗き込もうとすると、騎士たちが目に見えて狼狽していた。


「若君、覗きは駄目ですよ!」


「ここは一度引き返した方が――」


 彼らの忠告を無視して、エドワードが室内を覗き込むと――そこには、リアムに抱き締められたエレンの姿があった。


 頭を優しく撫でられている。


「――へ?」


 エドワードの頭は、最初は理解を拒んだ。


 リアムとエレンは師弟の関係であり、子供の頃から面倒を見ていると聞いている。


 だから、可愛い娘の頭を撫でているだけにも見えるのだが――エレンの表情が、今まで見たこともないものだった。


 それは最近になって女性を侍らせるようになったエドワードだから、嫌でも理解させられてしまう。


 エレンの恋する乙女のような顔に、エドワードの脳が破壊される。


 自分には絶対に見せない顔だった。


(僕が最初に好きだったのにぃぃぃ!!)


ブライアン(´・ω・`)「……BSS? 最初かどうかはわかりませんが、エドワード様が脳破壊されて辛いです」


ブライアン(`ゝω・´)「それはさておき 俺は星間国家の悪徳領主! 8巻 が 今月25日 発売でございます。応援よろしくお願いいたしますぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
リアムがハーレムを作ってたら普通に正規メンバーだもなぁ…エレン… それが頭なでなでだけだなんて、そんな
これはいいヤリチンざまぁ案件w
既に色んな子を侍らせてるヤリ◯ンじゃ、エレンがエドの気持ちに答える目は無かったと思いますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ