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子育て

本日はついに「俺は星間国家の悪徳領主!3巻」の発売日!


今回も加筆に加え、イラストレーターのナダレ先生が描くキャラクターやロボットたちをお楽しみください。


三巻の巻末には、前回ご好評だったメイドロボ量産機達のエピソードを追加しております。

 クレオが部屋を立ち去ると、部屋の隅にあったおもちゃ箱の中から案内人が出てくる。


 帽子姿の案内人が少女に近付く。


「私の苦労も知らずに失敗ばかり重ねやがって。おかげでそれなりに負の感情は吸収できているが、お前ら本当に役立たずばかりだな!」


 クレオや研究所の責任者に怒りを覚える案内人だったが、少女が帽子を持ち上げて抱きしめる。


「今日は何をして遊んでくれるの?」


 クレオ達がリアムを殺すために用意した少女は、純真無垢だった。


 リアムを殺すという行為に疑問を持たず、その善悪も関係ない。


 ただ言われるから実行するだけだ。


 そんな少女の遊び相手は、案内人だった。


「今日はお話をしましょうか」


「やった! 帽子さんのお話は大好き」


「それでは、極悪人であるリアムに苦しめられる私の話をしましょうね。あれはそう――負の感情を求めて、自ら人々を不幸に陥れている時でした。私はささやかな楽しみさえあればよかったのです」


 帽子に手足が生えた姿で、案内人は力説する。


「ですが! リアムという男は、そんな私を苦しめる悪い奴なのです! ささやかな楽しみを私から奪い、感謝という糞みたいな気持ちを押しつけてくる! ちょっと人を不幸にして楽しんでいただけなのに、それすら許さないのがリアムなのです」


 少女は急激な成長で、必要最低限の事しかインストールされておらず善悪の判断が非常に曖昧だった。


 だから、案内人の話を聞けば悲しむ。


「帽子さん可哀想」


 同情される案内人は、正直に言えば「何でお前に同情されないといけないの? 気持ち悪っ」と思っていた。


 だが、自分の置かれている状況に気付かず、不幸にいる少女が案内人は好きだった。


(それにしても、一番可能性がありそうなのが失敗作とは何とも不思議な話だな)


 リアムのクローンの中に女の子が出現した。


 案内人も最初は失敗作だと思っていたが、リアムと似ているクローン達に助力するよりも女性型の方が幾分か気持ちは楽だった。


 少女が生きていられるのも、案内人の助力があるためだ。


「ふふふ、立派に育ってリアムを殺すのですよ」


「うん! わたし頑張る!」


 案内人の助力を受けて、少女はすくすくと育っていく。



 グリン男爵家の本星付近に集結したクレオ派の大艦隊。


 旗艦が続々と集まり、俺の乗艦である【アルゴス】に小型艇で乗り込むと大会議室へと通される。


 超弩級戦艦は無駄に大きく数千メートル級ではあるが、それでもスペースは限られている。


 そんな限られたスペースの艦内に用意された大会議室には、貴族たちが集まって立食パーティーを行っていた。


 本来であれば勝つために最善を尽くすため、会議を行い少しでも勝率を高めるべきだろう。


 だが、悪党である俺にはパーティーこそ相応しい。


 大きな戦争の前に英気を養うためにと、無駄に豪華なパーティーを行う――実に悪党っぽい。


「ふっ、俺も悪党ぶりが板に付いてきたな」


 パーティー会場でそう呟くと、エクスナー男爵がクルトを連れてやって来る。


「リアム!」


 片手を上げてやって来るクルトは、随分と嬉しそうにしていた。


 俺の方に来ると互いに手を握り笑顔で話をする。


「こうして顔を合わせるのは久しぶりだな。軍隊暮らしはどうだ? 元気にしていたか?」


「元気だよ。軍の方は一時的に離れているけどね」


「相変わらず真面目だな。お前はエクスナー家の跡取りだ。領地を継ぐ前にさっさと除隊して少しは遊べよ」


「遊んでいる余裕がないよ」


「お前らしいな。軍に戻るなら俺に声をかけろ。伝手を使って優遇するように伝えておく」


「リアムも相変わらずだね」


 これまで何度も連絡は取り合っていたが、こうして顔を合わせるのは随分と久しい。


 やはり直接会うと話も盛り上がる。


 俺たちが話をしていると、エクスナー男爵が頃合いを見て話しかけてくる。


「いやはや、これから大きな戦争に向かうとは思えない豪華さですね」


 パーティーや会場、そして俺の旗艦の豪華さにエクスナー男爵は呆れを通り越して感心すらしていた。


 エクスナー男爵もクルトも悪徳領主仲間だが、俺のように派手に振る舞うタイプではないからな。


 領地規模も伯爵の俺と比べれば、男爵家はとても小さい。


 そんな領地から限界ギリギリまで搾り取ろうとする悪徳スピリッツは評価するが、そこで満足しているのが問題だ。


 もっと豪遊しても良いのに、貯め込むことに夢中になっている傾向にある。


「楽しんでください。それより、クルトは男爵家の旗艦で参加ですか?」


 エクスナー男爵との話し合いがはじまれば、クルトは一歩下がって会話には加わらない姿勢を見せる。


 これは当主同士の話し合いであるから、跡取りは身を引いたのだろう。


「うちの艦隊から百隻を任せるつもりです。最前線に出すにはまだ経験不足ですからね。後方で見学させるつもりですよ」


「当主と跡取りが万が一にも同時に、というのは寝覚めが悪いですからね。うちの予備兵力に合流させましょうか?」


「ご迷惑では?」


 俺のように強力な戦艦を持っていれば、当主と跡取りが一緒に乗艦することもある。


 だが、多くは別々に乗るのが普通だ。


 二人同時に亡くなるのを回避するためだ。


「問題ありませんよ。実は他の方からも預かっていましてね」


 跡取りを可愛がる親も一定数存在するし、その逆もいる。


 跡取りを最前線に出し、当主が後方に下がる場合もあった。


 そうした連中を後方の部隊に回して贅沢をさせてやるのも、総大将である俺の務めである。


 ――まぁ、ある種の人質だ。


 大事な当主や跡取りを俺が預かれば、問題を起こせば人質の命がないからな。


 エクスナー男爵も多少ためらいはあるようだが、クルトを俺に預けると約束する。


「それではお任せします」


 別に人質として冷遇はしない。


 俺に従う限り、贅沢をさせてやるつもりだ。



 クルトはリアムから離れると、後方部隊に回される貴族たちと顔合わせに向かった。


 もっと話をしていたいが、リアムは総大将で忙しい。


 こうしたパーティーでも次々に挨拶に訪れる貴族たちがいて、その対応も仕事の内となっている。


「相変わらずしっかりしているよ」


 酒の入ったグラスを持ち、遠目にリアムの様子を確認するクルトはパーティー会場を見渡す。


 戦争前にどうしてパーティーなのか? そんな疑問を持つ者も多いだろうし、軍人達が聞けば呆れるだろう。


 将官クラスなら多少理解するかもしれない。


 だが、軍隊経験があるとは言っても貴族の集まりだ。


 会議よりもパーティーの方が好まれるし、話もスムーズだ。


 貴族たちに合わせて豪華なパーティーを開いたのだろう――というのが、クルトの見解だった。


(軍隊暮らしが長いと、こうした貴族的な事情に疎くなっていけないな)


 リアムが直接顔を合わせ、後方部隊に回すと言われた周囲の当主や跡取り達は不安が拭われた表情をしている。


 事務的なやり取りで後方に回されると、不安を抱く者も多い。


 周囲の顔ぶれを見ていたクルトは、近付いてくる女性に気が付いた。


 ショートヘアーの女性は短いスカートのドレスを着用しているが、恥ずかしがっている素振りも見せている。


 クルトの側まで来ると立ち止まり、挨拶をしてくる。


「オルグレン子爵家のマリオンです。クルト殿ですね?」


「えぇ、そうですよ。オルグレンと言えば――覇王国との国境を預かるオルグレン辺境伯と関わりが?」


「分家になります」


 微笑みかけてくる【マリオン・セラ・オルグレン】を見て、クルトはリアムの話を思い出す。


(リアムにすり寄って情報を流した裏切り者か)


 嫌悪感が出て目を細めると、その僅かな変化をマリオンが察する。


「怒らないでくださいよ。伯爵には既に許されていますからね。――いえ、今も罰を受けている最中ですけど」


 マリオンは男装が好きで、こういうパーティーにも男物の衣装で参加していた。


 それが、リアムに呼び出されて可愛らしい格好をさせられパーティーに参加させられている。


 クルトは一つ疑問に思う。


「今回の戦いに、オルグレン辺境伯は本家も分家も参加していないはずでは?」


「人質ですよ。オルグレン本家はいつも伯爵と共に――と、示したいのでしょう。僕を差し出して内外に示せるなら安い物ということです」


 マリオンがヤレヤレと首を横に振るのを見て、クルトは持っていた酒に口を付ける。


 リアムを裏切った女性ということで、どうしても好意的には見られなかった。


「リアムを裏切ってよく無事だったね」


「辱められて、ついでにこき使われてもいますけど。リアム先輩は本当に人使いが荒いですよ」


 女装させられて悔しさを滲ませるマリオンは「リアムにこき使われている」と言うと、周囲に探るような視線を向けていた。


(何かあるのか? それよりもリアムを先輩呼び――こいつ馴れ馴れしいな)


 クルトは違和感を覚えるが、マリオンが頭を下げて離れていく。


「それでは、これで失礼しますね。僕も色々と忙しいものですから」



 パーティー会場の隅では、グリン男爵が酒や料理に舌鼓をうっていた。


「素晴らしい。この酒も料理も、我が領内では手に入らない品ばかりですね。首都星でも滅多に食べられない高級品ばかりではありませんか」


 その様子を近くで見ているテオドルは、頬を引きつらせていた。


「男爵、あなたの役目をお忘れですか?」


「ご心配には及びません。リアムから支援を引き出し、派閥の切り崩しも進めていますよ。それよりも、そちらはどうなんですか?」


 テオドルは話を振られると、自分の成果について話をする。


「私がリアムの旗艦に同乗し、側で監視することになりました。――情報の取り扱いには注意してくださいね」


「問題ありませんよ」


 酒や料理に夢中なグリン男爵を見ながら、テオドルは苛立ちを顔に出さぬよう努める。


(生まれがいいだけのボンボンは、本当に役に立たないな)


 貴族に生まれても身分が低く、コンプレックスを持つテオドルは会場の風景が滑稽に見えていた。


(戦争前にパーティーとは気が緩みきっている。クレオ殿下が即位した暁には、こいつらを排除して私が相応しい地位に就いてやる)


 いずれ自分こそが立派な貴族になってやると、野心を燃やす。



 パーティーが終わって解散後、俺は自室に戻ってきた。


「おかえりなさいませ、旦那様」


「――どうしてお前が俺の部屋にいる?」


 メイドロボ三体を後ろに控えさせ、お辞儀をしてくるのはユリーシアだった。


 何故かメイド服に着替えている。


「ちょっとは嬉しそうな反応を見せてくださいよ!」


「それは俺のメイド達の衣装だろ。そもそも、今回は俺のサポートがお前の仕事だろうが」


 こいつは何をしているのか?


 自分の役割を忘れているのか?


 若干引いていると、ユリーシアが「酷い!」と言ってその場に泣き崩れる。


「だって、ロゼッタ様と結婚するのに私の扱いをハッキリしてくれないじゃないですか! 戦場でお相手をするのも私の仕事みたいなものですよね? だから、こうして出迎えて夜のお相手を――」


「間に合っている」


 断ると、ユリーシアが残念な姿をさらしてきた。


 俺にすがりついて泣いている。


「いないじゃないですか! どこにも相手がいないじゃないですか!」


「五月蠅い! 俺は結婚前だ!」


 ギャーギャー騒ぐユリーシアを引き剥がそうとすると、通信機が鳴った。


「誰だ? ――ククリか?」


ブライアン(´;ω;`)「――ついにこの日がやって参りました。俺は星間国家の悪徳領主!3巻 本日発売でございます。これも応援してくださった皆さんのおかげ。このブライアンも嬉しく思いますぞ」


若木ちゃん( ゜д゜)「みんなメイドロボが好きよね。いっそ巻末には苗木ちゃんのエピソードを追加してくれないかしら?」


ブライアン(*´ω`*)「ははは、面白い冗談を言う植物でございます」


若木ちゃん(;゜Д゜)「何でよ!? いいじゃない。これだけ宣伝に貢献しているんだから、友情出演くらいさせてよ! 私は目立ちたいの。もっと目立ちたいのよ!」


ブライアン(*´ω`*)「十章も続きますが、書籍版三巻もよろしくお願いしますぞ」

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― 新着の感想 ―
拒否して結婚式挙げればいいんじゃないの。先に予定入れてるんだから。主人公は目の前から逃げてるチキン野郎にしか見えないぞ。 あと、各話毎回宣伝は流石にクドいかな。
[一言] > 案内人の助力を受けて、少女はすくすくと育っていく。 また案内人さんが規格外の存在のトレーナーしてるよ...流石一閃流名誉顧問様だなぁ〜
[一言] ユリーシアさん…最初はここまで残念キャラになるとは思ってなかったなぁ。
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