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惑星シャルロー

俺は星間国家の悪徳領主!3巻 がそろそろ店頭に並びだして、ご購入報告が届くようになりました。

大変ありがとうございます。

ただ、まだ発売日前なので、ネタバレなどは控えていただけると助かります(^_^;

 帝国首都星。


 宮殿のある場所に集められたのは、クレオ派の貴族たちだった。


 参加する名のある貴族たちの側には、信頼されている騎士や部下たちの姿がある。


 大会議室は階段状になっており、中央が低くなっている。


 中央から放射状に広がった会場には、大勢の貴族や騎士、軍人達が参加していた。


 その様子を更に上に用意された特別席で見下ろしているのが、クレオ殿下だった。


 中央には惑星シャルローが立体映像で表示され、回転している。


 司会役を任されたのは【テオドル・セラ・ザック】だ。


 ショートヘアーをオールバックにした髪型は、光に照らされてテカテカ光っていた。


 美丈夫ではあるが、その表情は太々しい。


「この惑星シャルローを制した者が帝国を手にするのです! この戦いがどれだけ重要かを皆さんにもご理解いただきたい」


 言葉よりもその態度が「お前らしっかり理解しろよ」と語っていた。


 出自は準男爵家。


 領地を持たない宮廷貴族というやつで、宮殿から何もしなくても毎年のように給与が支給される。


 役職があれば更に手当が付くらしいが、テオドルはこれまでずっと無職だったらしい。


 それが自信満々に俺たちの前に立てるのは、クレオ殿下が独自に用意した親衛隊だからだ。


 特別に用意された制服に身を包み、特務中将という階級章を付けている。


 俺が軍で特務参謀をしていた時と同じく、わざわざ用意させた階級だろう。


 そんなテオドルが、惑星シャルローについて説明する。


「惑星シャルローは居住可能惑星としても素晴らしく、手を入れなくとも入植可能な惑星です。ですが、一番重要なのはレアメタルが存在していることでしょう。かなりの量が採掘可能と報告が来ています」


 手元の資料を確認すれば、確かに欲しくなる惑星だ。


 レアメタルが存在するために、掘り返されて悲惨な姿になるだろう惑星シャルローは――とても綺麗な惑星だった。


「青い星だな。地球を思い出す」


 前世の地球を思いだしていると、俺の隣に座っているクラウスが尋ねてくる。


「ちきゅう、ですか?」


「何でもない。さて、お前はどう見る?」


 資料を眺めたクラウスは、とても素直な感想を述べる。


「確かに条件の揃った素晴らしい惑星ではありますが、継承権争いがなければ我々が出るような価値はありません」


 ――そういうことだ。


 確かに素晴らしいが、惑星シャルローを得るためにクレオ派閥の貴族たちが全力を出すような価値はない。


 テオドルの側にいるのは、惑星シャルローの所有権を主張する【グリン】男爵だ。


 細身で中性的な男性のグリン男爵は、床に届きそうな長い黒髪が印象的だった。


 スーツ姿なのだが、どうしても髪に目が行ってしまう。


 細目で狐のような顔付きをしていた。


「クレオ派の皆さんの協力に感謝しております。シャルローは我らがグリン家の領地であるのに、それを【マイアット】子爵家が奪おうとしているのです。皆さんの力で、何卒正義を示していただきたい」


 俺は小声で呟く。


「何が正義だ、白々しい」


 クラウスがご機嫌斜めの俺に理由を尋ねてくる。


「リアム様はグリン男爵に正義はないと?」


「そんなものはこの世に存在しないからな。魅力的な惑星があるから欲しい。それだけの話だろう? レアメタルが発見されなければ、ずっと放置していたはずだ」


 これまで居住に条件がいいだけの惑星だと思っていたら、レアメタルが出たから本気を出して開発しようとした。


 だが、それを近隣の領主であるマイアット子爵も狙って奪い合いに発展だ。


 そもそも、グリンの野郎が本当のことを言っているとは限らない。


 帝国からしてもどちらでもよく、最終的に税が手に入れば何の問題もない。


 どちらが勝とうが問題ではない。


 ただ、カルヴァンとの争う理由になっているだけだ。


 周囲もグリンの野郎に冷たい視線を向けている。


「自領すら守れない腰抜けが」

「本当に自分の領地なら、さっさと開発すれば良かったのだ」

「それも出来ない無能なのだろうさ」


 周囲が言いたい放題になると、グリンの野郎が下がってテオドルが出てくる。


「静粛に! バンフィールド伯爵のご意見を伺いたい」


 俺の名前が出ると、騒いでいた貴族たちが口を閉じる。


 何しろ派閥のトップはこの俺だ。


 強面の悪い奴らが俺にしたがっている姿は実に気分がいい。


「お前らの話に興味はない。敵に勝つための話をしろ」


 命令すれば、テオドルとグリンが露骨に機嫌を損ねる。


 それでも取り繕う程度は出来るらしく、テオドルが俺に注意してくる。


「困りますね、バンフィールド伯爵。確かに勝つことも重要ですが、グリン男爵は我々の仲間ですよ。戦争で領内が疲弊しているとうかがっていますし、救援物資の手配などもしなくてはなりません」


 表向きの話を大事にするのは結構だが、悪党共が集まる場にはそぐわない。


 それに、用意するのはクレオではなく――俺たちだ。


 どうしてグリンに施さないといけないのか?


「そんなに助けたいならお前たちでやれ。俺たちが集まったのは、カルヴァンに勝つためだ」


 助ける気はないと告げると、会議を見守っていたクレオが立体映像として空中に現れる。


 上半身だけの姿だが、大きく投影されているので見上げる形になった。


 見下されているのが妙に腹立たしい。


 そんなクレオが俺をたしなめてくる。


『そう言わずに助けて欲しい。グリン男爵も我々の仲間なのだからね。バンフィールド伯爵に任せたいと思っている』


 クレオが怪我をしたと思われる右腕に視線をチラリと向けた。


 その態度は「お前のせいで怪我をしたんだからここは譲歩しろ」と言っているように聞こえてくる。


 隣にいるクラウスもこれには逆らえないと判断したのか、俺が視線を向けると首を横に振っていた。


 立体映像ではなく、天井にある部屋からこちらを見下ろしているクレオを睨む。


「すぐに支援物資を送りましょう」


『頼むよ。マイアット子爵に手ひどくやられたそうだから、十分な支援物資を送って欲しい。人も派遣して領内の復興にも力を貸してくれると助かるね』


 ――面倒事を次々に押しつけてくれる。



 会議が終わると、クレオは親衛隊のトップであるテオドルを呼び出した。


 クレオの前でテオドルは不満を口にしていた。


「殿下、バンフィールドの振る舞いは我慢なりません! 会議の場でもまるで自分がトップであるかのような態度ではありませんか!」


 そんなテオドルの言葉に怒りを見せるのは、クレオの側にいたリシテアだった。


 リシテアは皇族でありながら騎士になった女性だ。


 妹――今は弟になったクレオを守るため、継承権を捨てて騎士になった。


 そんなリシテアからすれば、テオドルの言葉が許せないらしい。


「バンフィールド伯爵の支援があるおかげで、今のお前たちの地位があるのを忘れていないだろうな?」


 テオドルもリアムの支援は理解をしているが、それでも我慢できないらしい。


「リシテア様、この派閥はクレオ殿下の派閥です。それを支える貴族たちが支援するのは当然ではありませんか?」


「我らが苦境に立たされている時に、手を差し伸べてくれたのはバンフィールド伯爵だけだ。お前たちの振る舞いは、恩を仇で返すようなものだぞ」


 テオドルが渋々口を閉じると、クレオが発言する。


「姉さんもそこまでにしましょう。――テオドル、君には軍監として今回の戦争に参加してもらう」


「――はい」


 先程まで不満そうにしていたテオドルだが、クレオの命令を素直に受け入れた。


 妙に嬉しそうにしている。


 リシテアはそれが気になるらしい。


「クレオ、戦力が増えるならまだしも、軍監とはどういうことだ? 参加せずに様子を見守るだけでは反感を買うぞ」


 クレオはその意見を聞いても判断を変えなかった。


「もう決めたことです。大丈夫ですよ。――バンフィールド伯爵ならきっと勝ちます。我々は高みの見物をして待っていましょう」


 リシテアは最後まで納得できない顔をしていた。



 会議が終わると、俺は派閥の主立った面子を集めて話し合いの場を作った。


 参加したのはクルトの父親であるエクスナー男爵。


 そして、白髪の優男【フランシス・セラ・ギャンヌ】。


 筋骨隆々で眼帯を付けた海賊みたいな【ジェリコ・セラ・ゴール】。


 この三人がクレオ派閥の中核に位置している。


 ジェリコは用意された酒のつまみを鷲掴みにすると、口に放り込んでバリバリと食べていた。


「親衛隊の腰抜け共が調子に乗っているな」


 フランシスは酒をチビチビと飲みながら、ジェリコの話に賛同する。


「我々が貢いだおかげで、クレオ殿下は三万隻の艦隊を用意したそうだよ。私も腹立たしいが、一番腹に据えかねているのはリアム殿じゃないのかな?」


 ジェリコとフランシスが俺を値踏みするような目で見てくる。


 クレオをどう扱うのか見定めているようだ。


「職にありつけない宮廷貴族たちを救済したそうだな? 良いことじゃないか」


 口ではそう言いながらも、俺は酒を一気にあおった。


 それだけで、この場にいる三人は俺が不満に思っているのを察したらしい。


 エクスナー男爵が親衛隊の扱いに悩んでいる。


「その親衛隊も軍監として参加するようです。我々の活躍を側で見たいと言ってはいますが、どうなることか」


 ジェリコが腹を立てているのはそこだった。


「まともな実戦経験のない腰抜け共が足を引っ張るだけだ。リアム、お前から奴らの参加を拒否できないのか?」


 俺なら拒否も出来るだろうが、今はクレオに負い目がある。


 ――なんて理由ではなく、俺はテオドル達の参加を歓迎していた。


「間近で見たいなら見せてやればいい」


 三人が顔を見合わせ、代表してエクスナー男爵が俺に尋ねてくる。


「あ~、それよりもリアム殿の結婚式はどうなるのでしょうか?」


 問題はそこだ。


 俺が本星を出発する際にロゼッタが見送りに来たが、結婚式の話題は一度も出さなかった。


 ただ、無理をして笑みを作っているような気はしたな。


 ジェリコがこの規模の戦いは時間がかかると言い、さっさと式だけ挙げたら良いと提案してくる。


「下手をすれば何十年とかかる。簡易な式だけを済ませて、戻ってから本番をすればいい」


 フランシスは仕方がないと思いつつも、焦るつもりはないようだ。


「タイミングが悪かったが、こればかりはどうにもならない。早く片付いたとしても、数年はかかるだろうね。もっとも、あちらは後がない。死に物狂いの敵は恐ろしいよ。リアム殿には悪いが、長期戦を覚悟するべきだね」


 エクスナー男爵は黙ったままだが、二人と同じ意見なのだろう。


 俺自身は別に時間をかけても問題ない。


 結婚しない正当な理由が出来たから、これで時間を稼げる。


 ――ただ、出発前に見せたロゼッタの悲しそうな顔が今も頭をチラついていた。


「心配はいらない。全ては勝ってからの話だ」


 そろそろカルヴァンとの決着をつけよう。


 俺を追い込んだカルヴァンは油断できない相手だ。


 足をすくわれないようにするさ。


ブライアン(´;ω;`)「ロゼッタ様が可哀想で辛いです」


ブライアン(`・ω・´)「そんなロゼッタ様とリアム様の出会いを描いた書籍版3巻は、加筆されボリュームアップでございます。是非とも書籍版をよろしくお願い致しますぞ」


ブライアン(´;ω;`)「――出会いから七章が過ぎているのに、結婚から逃げ回るリアム様が辛いです」

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― 新着の感想 ―
やっぱり逃げる口実にしてるのね...グズ! リアムの評価益々下げるだけ、いいのかそれで?
リシテア姉上、愚弟(妹)を殺してください!
そもそもリアムに助けを求めたのはクレオなのにその恩を裏切って皇太子に付くなら元から皇太子に付くとか王位継承問題に首を挟まないとかあり得たはず 今になってちゃぶ台をひっくり返しとか死んでいった第二王子に…
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