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 ――イゼルはここで殺す。


 そう心に決めた俺はアヴィドの姿を見た。正確には、アヴィドが合体した巨大戦艦の方だ。


 表面はボロボロで、一部が貫かれて爆発している。


 今もコックピット内部でレッドアラートが鳴り響き、各部が危険状態であると報告してくる。自動で修理を行っているが、間に合っていなかった。


 非常に危険であると表示されている。


「よくも壊してくれたな」


 アヴィドの強化パーツに、いったいどれだけの維持費がかかっているか理解しているのか? 下手な艦隊なら揃えられる額だぞ。


 希少金属を使った変形機構を持つ巨大戦艦だ。


 ここまで壊れたら、数年がかりで修理をすることになる。


 アヴィドのエンジンが唸りを上げた。


 同時に、モニター画面に許可を求める項目が次々に出現してくる。


 その内容に片眉を上げた。


「マシンハートのおかげか? ――お前の好きにしろ。手伝ってやる」


 俺以上に激怒したのはアヴィドのようだ。


 何やら凄い武器を持って自慢してくるイゼルに、腹が立ったのだろう。


 俺も腹が立つが、アヴィドはそれ以上だ。


 許可を出してやれば、アヴィドが巨大戦艦との結合部分をパージする。


 ハッチが開き、そこからアヴィドが外へと出ると、今も強化パーツである巨大戦艦を破壊しているイゼルの機動騎士の姿があった。


 大きさは四十八メートルとアヴィドの倍はある。


 イゼルがアヴィドに気付いたようだ。


『ようやく出てきたか』


 随分と楽しそうなのが忌々しい。


 人の玩具に何てことをしてくれたんだ。


 アヴィドの関節から余剰エネルギーが放電している。


「イゼルと言ったな? 本来なら俺が激怒してやりたいところだが、今日はアヴィドに譲ってやることにした」


『何を言っている? サブパイロットか?』


 確かにサブパイロットと言っても間違いないだろう。


「そうだ。今回は俺がアヴィドのサポートをしてやることにした」


『逃げるのか?』


 挑発的な言葉に失笑する。


「逃げるような相手なら、一目散に逃げてやる。俺がここにいて、お前の相手をしている理由をよく考えろ。――勝てるからに決まっているだろう」


 俺は勝利を約束された存在だ。


 そのための全てを持っている。


 操縦桿を握りしめてやると、アヴィドの装甲にひびが入る。割れた場所から赤い光が漏れて、今にもバラバラに吹き飛びそうだった。


 モニター画面にタイムリミットが表示された。


「三分だ。三分でお前を殺す」


 タイムリミットは三分。


 イゼルの機動騎士が持っていた武器の一つを俺に向けてくる。それは球体で、レーザーを放ってくる。それも数百のレーザーがホーミング機能を持っていた。


 アヴィドの装甲にレーザーが当たるが、そこが赤くなるだけでたいしたダメージはない。


 ただ、防御フィールドを突き破ってダメージを与えるだけでも褒めてやっていい。


『この程度では落ちないか。それでこそ俺の獲物だ!』


 突撃してくるイゼルに勘違いを正してやろう。


「狩られるのは俺じゃない。お前だ」


 アヴィドの右手に魔法陣が出現し、そこから刀の柄が出現する。手に握り、引き抜けばアヴィドのために用意された特別な刀が出現した。


 イゼルは八本の腕を持つ機動騎士を構えさせ、アヴィドを前に二つの武器を向けてくる。


 一つは剣。


 もう一つは杖。


『その意気だ! ならば俺も全力で応えよう! あらゆるフィールドを無効化するこの剣と、軍団を操る杖がお前を圧殺する!』


 イゼルの握った剣の刃が輝き、アヴィドを包んでいた防御フィールドが霧散する。


 そして、周囲に漂っていた敵と味方の機動騎士たちが動き出し、全てがイゼルに従うように整列した。


 全てを斬り裂く剣。


 そして、破壊された機動騎士たちを無理矢理動かす杖。


 どれも確かに凄い武器だ。


 ――だが、全て無駄だ。


 アヴィドが刀を振れば、集まった機動騎士たちがバラバラに吹き飛んだ。それを見たイゼルが驚いたのだろう。


『一瞬で全て粉々にしたのか?』


「全力を出すと言って、二つしか使わないのはどうかと思うな」


 イゼルもようやく本気になったのだろう。


 八つの武器を構えて俺に向かってくる。


 アヴィドとの距離を一瞬で詰めてくる四十八メートルの機体は、とても大きく感じるが――それだけだ。


 アヴィドがイゼルの攻撃を紙一重で避けていく。


『俺の攻撃を先読みしているのか? だが、こちらは――』


「機体が未来を予想している、か?」


 イゼルの機体は高度な計算能力でアヴィドの動きを先読みしているようだ。もしくは、もっと魔法的な方法で、だろう。


「その程度で勝てる敵としか戦って来なかったのか?」


 相手の動きを予想する。


 そんなの、一閃流の基礎である。


 アヴィドがイゼルの突き出してきたランスを蹴り飛ばし、刀で他の武器を斬る。


 しかし、イゼルの機体はすぐに液状になると、切り離された部分とくっついて元通りになった。


「自己再生か」


『そうだ。俺の機体はどれだけ斬り刻まれても再生する。生半可な攻撃では傷一つ付けられない!』


 八つの武器も再生するし、幾ら攻撃を当てても無意味。


 古代の兵器の性能は実に魅力的だ。


 いくらアヴィドがパワーを上げてイゼルの機体を蹴り飛ばし、斬りつけても勝負は敵側が有利ということだ。


 イゼルの機体は、アヴィドに胴体を斬り裂かれてもすぐに再生した。


 コックピットを斬り裂いた感触はあった。


 イゼルにも当然のように届いたと感じたが――どうやら、本人も改造済みのようだ。


「お前、取り込まれたな」


 イゼルの機動騎士がポーズを決める。


 それはまるで、多腕の神聖な彫刻のような雰囲気を出している。


『違う。俺が取り込んだ。この機体は、これまで多くのパイロットたちを取り込み、殺してきた。だが、俺はこの機体を屈服させてここにいる』


 どうやら本人も斬られようが撃たれようが、再生するようだ。


 機体の一部になったわけだ。


 ――本人もそれなりに強いらしい。


 タイムリミットまで、残り二分を切った。



 古代兵器を操るイゼルの活躍に、案内人は両手を振り回して応援している。


「いけ! そこだ! 止めを刺せ!」


 隣でもグドワールがたこ足を振り回して応援していた。二人揃って、格闘技の試合を観戦しているおっさんの雰囲気を出している。


「イゼルゥゥゥ! もっと出力を上げろ!」


 グドワールがイゼルのためにその力を貸し、イゼルの機動騎士が更に出力を上げていく。


 先程までアヴィドに押されていたイゼルの機体は、パワーやスピードでもアヴィドを圧倒していく。


 アヴィドが徐々に下がっていくと、イゼルが興奮していた。


『今日の俺は今までで一番強い! 強敵を前に心躍るとはこのことか!』


 ハイテンションになっているイゼルは、本来持つ能力を超えた力を発揮していた。


 だが、それでもアヴィドを倒すのに一歩足りない。


 案内人が手に汗を握る。


「あと少し! あと少しでリアムの命に手が届くんだ! こんなところで諦めてられるかぁぁぁ!! 頼む、お前だけが頼りだ!」


 案内人はイゼルに手を貸すために残り僅かな自身の力を与える。


 その力がイゼルの機体を変化させる。


 多腕の機体は神々しさを放ち、手に持った古代兵器は一段階上の性能を発揮する。


 リアムを助けようと駆けつけた機動騎士たちは弾き飛ばされ、戦艦の攻撃は届く前に全て霧散する。


 アヴィドとイゼルの機体の戦いに誰もが介入できず、見守ることしか出来ない。


 イゼルは人を超え、一段階上の存在へと片足を踏み入れる。


 グドワールも大興奮だ。


「おぉぉぉ! 俺の手駒から人を超えた存在が誕生するぞ!」


 その瞬間に立ち会えることに喜び、案内人はリアムを葬ってくれるなら何でもいいと声がかれるまで応援する。


「頼む! リアムに止めをぉぉぉ!!」


 ――しかし。


『アヴィド、残り一分を切った。交代だ』


 リアムが本気を出すことになった。



 コックピット内のモニターには、アヴィドがまだやれると言いたげに拒否を表示する。


 俺との交代を認めたくないのだろう。


 だが――。


「代われと言った。二度も言わせるな」


 少し声を低くして伝えれば、アヴィドは素直に俺に操縦の全てを預けてくる。


「さて、相手をしてやろうか」


 目の前の古代兵器とやらは、輝いて見える。


 その姿は実に神々しい。


『無駄だ。今更本気を出しても遅い。俺は――人を超えた』


 何やら思い出したくない過去を量産しているイゼルだが、よく考えると未来がないのでいくらでも恥をかける状態だ。


 存分に粋がるといい。


「人が人を超える? お前は馬鹿か? 人を超えて何になるつもりだ?」


 イゼルの機体が姿を消した瞬間に後方へと下がり、刀を横に振るうとランスとぶつかって火花を散らす。


 アヴィドの持っていた刀が粉々に砕かれたが、すぐに再生していく。


 カッターのように次々に刀身が用意される仕組みだ。


『人を超え、武神になる。それこそが俺の望みだ』


 その言葉にゲラゲラと笑ってやった。


「武神!? お前が? お前程度が武神か!? 武神の地位も星間国家規模になると安くなるのか?」


 イゼルが俺の言葉に怒りを覚えたのか、絶え間なく攻撃が降り注ぐ。


 それらを避け、斬り、全て処理してアヴィドの両手を広げる。


「俺程度を超えられないお前が、武神を名乗るのは許されない」


『もう俺はお前を超えている! パイロットとしての技量も、そして機体性能もこちらが上だ!』


 その勘違いを正すために、アヴィドの肩に刀を担がせる。


 隙だらけの姿をさらした俺に、イゼルが戸惑っている。


『負けを認めるつもりか?』


「今の話の流れでそう思うのか? ――やっぱり、お前に武神の地位は相応しくないな。立派な機体が泣いているぞ」


 確かに古代兵器は素晴らしかった。


 だが――欲しがるほどでもなかったな。


『何を――』


 次の瞬間、イゼルの乗った機体の多腕が全てズタズタに引き裂かれて散らばって液体に変化した。それらが集まって再生を開始する。


 その間に、アヴィドに刀を構えさせる。


「楽しめたぞ、覇王国の王子様」


 今のアヴィドに一閃を再現させると負担が大きいが、耐えてくれると信じて呟く。


「一閃」


 呟いた直後に、イゼルの機体が歪む。


 僅かに空間が歪み、その歪みに機体が巻き込まれて歪な形になった。


 そのせいで再生してもうまくいかずに、歪な形になって――結局まとまりきれず、醜い姿になってしまった。


 こちらもアヴィドの関節が悲鳴を上げている。


 マシンハートが自己修復を試みるが、追いついていないようだ。


「一撃でこれか。いや、一撃でも再現できたと喜ぶべきか?」


 イゼルの機体は歪に再生し、動けずに崩れはじめていた。


 間違った再生を行い、そのためにエラーでも発生したのだろう。


 モニターに小窓が出現し、血を吐いたイゼルと思われる男がこちらを見ている。


『――見事だ。俺の負けだ。最後に話をしたい』


「好きにしろ」


 周囲を確認すれば、イゼルが負けたことで総大将を失った覇王国軍の士気が落ちていた。いや、交戦を止めて下がっていく。


 驚くほどに潔い。


『宇宙は――広いな。君のような強者がまだいるなんて』


「当たり前だ。俺の師匠はもっと強いぞ」


『――それはいいな。一度お目にかかりたかった』


 血を吐き、咳き込むイゼルの姿を見て、その望みは叶いそうにないと確信する。


 機体が破壊されれば、運命を共にするようだ。


『ど、どうして、最初から本気を出さなかった? 合体などせずとも、その姿で戦った方が強かっただろう?』


 イゼルは、アヴィドは強化パーツである巨大戦艦を使わない方が強いと気が付いたようだ。


 理由は色々とあるが、一番は――。


「遊びだ」


『遊び? はは、そうか――やはり宇宙は広い。覇王国相手に遊びだと言い切れる者がいるとは、予想していなかったよ。今度は生身でたたか――』


 イゼルが事切れると、機体が液体になって周囲に散らばった。


 最後まで戦いたかったとは、こいつは人生を何だと思っているのか?


 まぁ、戦いたくて仕方がない人間で、最期は戦場で死ねて本望のようだった。


「――ふん、迷惑な連中だな」


 だが、こいつは最後まで自分の意思でわがままを貫いた。


 悪徳領主かどうかは知らないが、そこは評価してやろう。


 動くのがやっとのアヴィドだが、タイムリミットが来てしまい戦闘機動が不可能になってしまう。


 ただ、ギチギチと動きながら刀を掲げる。


「敵将イゼルは、このリアム・セラ・バンフィールドが討ち取った!」


 すぐにその情報が全軍に広まると、覇王国軍は撤退を開始する。


 追撃をしたいところだが、俺の艦隊では少なすぎて心許ない。


 アヴィドの周りにバンフィールド家の親衛隊が集まり、アヴィドを守る。


『リアム様、ご無事ですか!』


「遅い! さっさとアヴィドを回収しろ。イゼルの機体だった液体も全て回収しろよ。第七兵器工場に解析させる」


『は、はい!』


 壊してしまったが、何かしら情報は引き出せるだろう。



 イゼルが敗れた。


 それを見ていたグドワールは放心状態だ。


 そして、案内人は力を使い果たして、いつの間にか帽子だけの状態に逆戻りしていた。


 案内人がプルプルと震えている。


「次元を歪めるとか、そんなの卑怯だろうが」


 古代兵器を次元を歪めて倒しました! という、あまりにも酷い結末に、案内人は我慢できなかった。


 イゼルは間違いなく最強格の人間だった。


 パイロットとしての技量も高く、その機体もアヴィド以上の性能だ。


 だが、激怒しているのは案内人よりもグドワールだ。


 グドワールはたこ足で帽子の案内人を掴み、締め上げる。


「おい、あれは何だ?」


「な、何だとは、どういう意味ですか?」


「あれをどうやって育てた!?」


「ど、どうと尋ねられても、どうしてこんなことになっているのか、私としても説明を求めたい立場でして」


 グドワールが案内人を投げ捨てる。


 帽子はくしゃりと歪んでしまった。


「ひ、酷い」


 グドワールはたこ足を激しく動かし激怒する。


「殺す。あいつはこの俺が殺してやる! お気に入りのイゼルを殺した報いを受けさせてやる! 必ずだ!」


 グドワールが本気でリアムの命を狙う。


 それを見て、案内人はニヤリと――出来ないが、気持ちではニヤけている。


(ふふふ、今回は失敗しましたが、グドワールが本気になりましたね。これで、リアムの命もありませんよ)


 リアムはグドワールに感謝しておらず、おまけに認識すらしていない。


 案内人のように、リアムの感謝を受ける心配がないグドワールは――リアムにとって強敵だった。


アヴィド(´・ω・`)「怒られちゃった」


若木ちゃん(;゜Д゜)「た、大変ね」


若木ちゃん( ゜∀゜)「そんなことよりも、乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です6は好評発売中よ! 今週はコミカライズ版23話の更新と4巻の発売もあるからチェックしてね!」


アヴィド。・゜・(ノД`)ヽ(゜Д゜ )ブライアン

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ナメプが多過ぎる。 相変わらず会話中心の戦闘、 >「三分だ。三分でお前を殺す」 とか完全にナメプだろう。ゴルゴ嫁。あれが本気の戦いだっつーの。黙って遠目から一発で終わらせるんだよ。…
2022/12/20 04:33 退会済み
管理
[一言] なんで全盛期の自分より劣る相手が全盛期の自分より強い相手に勝てると思うんだこの案内人
[良い点] リアム最高。 アヴィド最高。 アニメ化して、 スパロボにも参戦しないかな リアムとアヴィド。 マシンハートの力によりアヴィドが どう進化するのか楽しみです。
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