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グドワール覇王国

乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です6巻 が本日発売しました!


【あらすじ】


「――途中までうまくいっていたのに、本当に残念だよ」


ノエルをめぐって意見が対立するアンジェとリビア。

お互い相手のことを理解し、想っているがゆえに歩み寄れないでいた。


そんな中、死に別れた弟の面影をリオンに重ねるルイーゼが、聖樹の生け贄に選ばれてしまう。

しかもルイーゼ本人は弟が呼んでいると自ら率先して、その身体を捧げようとしていた。


何か裏があるに違いないと、リオンはルイーゼ救出に向かうのだが……。



――と、こんな感じです!


BOOK☆WALKER様ではセール中で一巻からお得になっております。電子書籍版のご購入を考えられている読者さんは、是非ともこの機会をご利用いただければと思います。

 アルグランド帝国に戦いを挑んだ国――グドワール覇王国。


 覇王を名乗る星間国家は、力こそが全てという実にシンプルな国だった。


 力があれば成り上がれる。


 力がなければ、たとえ王族だろうとその地位を失ってしまう。


 そのため、国外よりも国内で激しく争っていたのがグドワール覇王国だ。


 そんな覇王国をまとめ上げ、アルグランド帝国に戦いを挑んだ王子がいた。


 覇王の息子の一人であるが、その身分はとても低かった。


 数千を超える王子の一人でしかなく、継承権も随分と低かった。


 だが、彼は言った。


「このまま国内で争い続けても駄目だ。争うならば、外と戦えばいい!」


 国内で最強を決めるよりも、領土を増やすために他国に攻め込めば良いという持論を展開した。


 彼――【イゼル】は、それを認めさせるために兄たちをその拳で叩き伏せ、継承権の順位を上げていった。


 覇王国の継承権は強さで決まる。


 まだ若いイゼルは、覇王国の未来のために立ち上がって力で王太子の地位にまで上り詰めた男だ。


 二百歳になったばかりであり、その外見は二十代前半にしか見えない。


 しかし、鍛え上げられた肉体にはいくつもの傷がある。


 額にも十字の傷があるのだが、覇王国では戦いで付いた傷は名誉であるため消すことはない。


 そんなイゼルが率いる覇王国の艦隊は三百万隻だ。


 対するアルグランド帝国は五百万もの艦隊を用意している。


 覇王国の総旗艦――要塞級の司令室では、イゼルが戦場全体を簡略化して表示している地図を眺めていた。


「カルヴァンはたいした戦歴もないはずだが、よく粘っているな」


 イゼルの周りには、勇敢な戦士たちが並んでいる。彼らの多くは、イゼルが倒して従わせた強敵と書いて友と呼ぶべき部下たちだ。


 参謀たちですら、何かしらの武術を身につけているため筋肉質の強そうな見た目をしている。


「帝国の皇子は軟弱だと思っていましたが、その部下たちには見るべきところのある戦士たちがいます」


「それにしても、帝国軍の戦力はバラバラですね」


「数だけ揃えたようにしか見えないな」


 イゼルが腕を組んで敵の艦隊のデータを見るが、カルヴァンの周囲にいる艦隊は最新鋭の戦艦を揃えている。


 だが、四割近くはかき集めたようにしか見えない旧式の艦艇ばかりだ。


 対して、覇王国の戦艦は全て統一されていた。


 力こそが全てという星間国家だが、力こそが全てだからなのか、兵器関連では手が抜かれていなかった。


 イゼルが右手を前に伸ばす。


「このまま帝国を破り、我らは新しい領地を手に入れるぞ!」


 勢いのあるイゼルが率いる覇王国の艦隊が、カルヴァンの艦隊へと攻め込む。



 戦士たちが盛り上がっているブリッジ。


 その中には案内人の姿もあった。


(どこまでも力こそが全て、ですか。まったく、理解に苦しみますよ)


 チラリと視線を隣に向ければ、そこにいたのはタコの頭部を真っ赤にしているグドワールだった。


 覇王国が争いを続けているのは、案内人と同じような存在であるグドワールの影響が強い。


 案内人は、グドワールに下手に出ていた。


「いや~、それにしても頼もしい手駒たちですね。あのイゼルという青年が、グドワールの“今”のお気に入りですか?」


 グドワールが案内人を睨み付けてきた。


「――どういうことだ? 血湧き肉躍るような戦士たちの戦いが見られると期待したのに、どいつもこいつも期待外れだ!」


「わ、私に言われましても」


 案内人としては、覇王国が動けばリアムも必ず参戦すると思っていた。だが、実際は修行中を理由に参戦拒否――というよりも、カルヴァンがリアムを戦場から遠ざけていた。


 今はどういうわけか戦場の後方にいるが、案内人にも予想外だった。


 覇王国が快進撃を続ければ、リアムもいずれ出てくると思っていたのに――出てこない。


 グドワールは、噂の一閃流が見られると楽しみにしていた。それなのに、いつまで経っても一閃流が見られない。


 戦場では強者同士の戦いがあるため、気は紛れてもどれもメインではない。


「俺はリアムを見たいんだ! 俺のイゼルが、リアムを殺すのか、それとも殺されるのか? それを戦場で見たいんだよ!」


 興奮しているグドワールは、たこ足で案内人の頬を叩いていた。


「い、痛い。や、止めてください、グドワール」


(この野郎! 私が力を失ってさえいなければ、お前など簡単に消してやれるのに!)


 グドワールが往復ビンタのように叩き、そして胸倉を掴み上げる。


「さっさと連れて来い」


「え?」


「リアムをさっさと戦場に連れて来い! 俺のイゼルと戦わせろ!」


「む、無茶を言わないでください! 近付いたら消えてしまいますよ!」


「いいからやれよ!」


 イゼルにはグドワールの加護がある。案内人とは違い本物の加護だ。


 案内人はリアムを貶めようとするが、グドワールは違う。グドワールは、イゼルに次々に試練を与え、乗り越える度に褒美を与える。


 ただし、乗り越えられなかった場合――グドワールからの寵愛を失ってしまう。そして、あまりに強すぎても、グドワールが飽きてしまう。


 グドワールに愛されることが、必ずしも幸せとは限らない。


 興奮したグドワールは、今の案内人では止めることが出来ずに渋々従うことにした。


「わ、分かりました」


「最初からそう言えば良いんだ!」


 腹を立てているグドワールを前にして、案内人は手を握りしめる。


(――こいつ、リアムが片付いたら必ず消してやる)


 今は我慢する時だと自分に言い聞かせ、案内人は姿を消した。



 覇王国が動きを見せる頃。


 マリオンが惑星アウグルへとやって来た。


 少し遅れてリアムを追いかけてきた理由は、辞令が出されたタイミングが違っていた。


 理由は業務引継のため、などともっともらしい言い訳を用意している。


 惑星アウグルの宇宙港に入る宇宙船の中で、マリオンは外を眺めることが出来る場所で腕を組んで立っていた。


 目の前に広がっているのは、建設途中ながら立派な宇宙港だ。


「――噂通りの怪物だな。短期間でこれだけの宇宙港を用意されれば、そこを突いて弱みにすることも出来ないか」


 急な命令に右往左往して、小さな宇宙港しか用意できていないと考えていた。


 その結果を責めるつもりだった黒幕の手先として、マリオンは調査にも来ている。


「ま、叩けば幾らでも埃が出てくるさ」


 味方のふりをして近付き、リアムの弱点を探ろうとしていた。


「思ったよりも時間がかかったな」


 マリオンは最初から――リアムの敵だった。


 宇宙船が宇宙港の港に到着し、船体を固定されると次々にアームが伸びて来る。


 マリオンが歩き出して出入り口を目指せば、船内のクルーたちが道を譲る。


 首都星の役人であるマリオンの地位は、他と比べても異様に高い。


 それだけ帝国内で役人の地位が高かった。


 宇宙船から宇宙港へと向かうと、そこで待っていたのは出迎えの者だった。その人物は、オルグレン辺境伯に仕える騎士だった。


 マリオンから見れば、本家筋で働いている騎士である。


「マリオン様、お久しぶりです」


「わざわざ出迎えに来てくれたのか?」


「はい」


 周囲にはオルグレン辺境伯に仕える騎士や軍人たちがいて、マリオンを取り囲んでいる。物々しい雰囲気だが、マリオンから見れば彼らは味方だ。


「君たちが来ているとは思わなかったよ」


 騎士は微笑んでいる。


「マリオン様がバンフィールド伯爵から支援を引き出してくれたおかげですよ。辺境伯は大変お喜びです」


 その言葉にマリオンは疑問を抱くが、先に周囲にいる騎士や軍人たちが武器を抜いた。


「――何の真似だい?」


 騎士たちから笑みが消え、代わりに殺気が放たれる。動けば攻撃するという強い意志を感じ取り、マリオンは両手を挙げた。


「バンフィールド伯爵がお待ちですよ」


 マリオンは冷や汗を流す。


(どうなっている? どうしてリアム先輩の名前が出てくる? 僕はまだ、本家にリアム先輩を紹介していないぞ)


 マリオンが首都星で黒幕たちと打ち合わせをしている間に、リアムも動いていた。


 騎士たちが暗い笑みを浮かべる。


「お召し物を着替えましょうか。その服装は伯爵好みではないそうですからね」


「や、止めろ!」


 マリオンが目を見開いて抵抗しようとするが、女性騎士たちがマリオンを取り押さえた。



 宇宙港建造が一段落すれば何をするのか?


 もちろんパーティーだ。


 戦場で味方が戦っていようが、俺には関係ない。


 それに、今日は楽しみなことがある。


 立食パーティーではあるが、無重力を利用して天井や壁にも人が立っている。不思議な光景過ぎて理解できないが、星間国家では珍しくないことだ。


 床だけではなく、壁や天井まで使えるから収容率が高い。


 あと、このパーティーの準備はウォーレスに丸投げにした。


「ウォーレス、ちょっと地味じゃないか?」


 不機嫌そうなウォーレスにそう言えば、こいつなりに色々と考えていたようだ。


「そうは言っても、これ以上派手にやれば戦場の連中に恨まれるぞ」


「いいんだよ。どうせ政敵だ」


「同じ帝国軍だぞ。怒らせたらここだって危ないと思うけど?」


 ウォーレスは呆れているが、俺としては見極めるために辺境に足を運んだのだが――残念なことに、どうやらカルヴァンが俺を辺境に連れ込んだわけではなかった。


 アナベル夫人とは繋がっていなかったようだ。


 非常に残念である。


 手に持ったグラスに入る液体は、無重力でも飛んでいかないようになっている。


 グラスの中で揺らすと、プルプルとゼリー状のように震えていた。だが、口に入れればすぐに液体に変わる。


 酒を一口飲んで口の中を潤してから、俺はウォーレスに今後の話をした。


「問題ないさ。カルヴァンは有能な男だ。カルヴァンは、な」


「どういう意味だ?」


 俺を追い落とそうとする余裕がなかったのもあるだろう。


 アナベル夫人を使ったのは別の奴だ。


「カルヴァンは俺たちと争っている暇がないって事だ」


「なら、一体誰がリアムを辺境送りにしたんだ? いや、アナベル夫人だったな。クレオが許可をしたらしいし、あいつも何をやっているんだか」


 俺はウォーレスに可哀想な視線を向けてやる。本人もそれに気が付いたのか、怒って俺に聞いてきた。


「何だよ! 何かあるなら教えてくれてもいいだろ!」


 自分で考えろと言いたいが、それは置いておく。


 俺は入り口へと視線を向けた。


「それよりも今日のメインだ。おもてなしをするからお前も来い」


 護衛に囲まれた一人の女性が会場に入ってくる。


 可愛らしいドレスを着用しているが、スカートが短いので綺麗な細い足が見えている。普段はパンツスタイルだから気付きにくいが、肩やら脚を出しているとよく分かる。


 ウォーレスが首をかしげていた。


「どこかで見た気がするな」


 当然だ。


 俺たち二人が近付くと、その女性は露骨に眉間にしわを寄せて不快感を示す。俺はその顔が見たかった。


「久しぶりだな、マリオン」


 声をかけると、女性――マリオンは悔しそうにしていた。


 別に女装させたわけではなく、マリオンは最初から女だった。


 マリオンが顔を背けると、その隣にいたオルグレン辺境伯が俺に話しかけてくる。こちらはフレンドリーだ。


「リアム殿、招待していただき感謝していますよ」


「国境を守る辺境伯に来ていただければ箔が付きますよ」


 互いに世辞を言い合って「仲良しでーす!」と周囲にアピールをしているが、俺的にはマリオン個人に見せつけていた。


 ――お前がいなくても、俺は辺境伯と仲良くしていると、ね。


 辺境伯は俺が贈った兵器について話をする。


「支援していただいた最新鋭の兵器ですが、数ヶ月で部隊を編成できそうですよ。おかげで、最前線に増援を送れます」


「それは良かった」


 俺と辺境伯が会話をしていると、それを横で聞いているマリオンが悔しさで震えていた。


 ただ、辺境伯がマリオンを見る目は冷たい。


「――マリオンがお世話になっているそうですね」


「えぇ、首都星では仲良くやっていますよ。そうだよな、マリオン」


 笑顔を向けてやるが、こちらを見ようともしない。


 今の格好を屈辱だとでも言いたげだ。


 ――俺とラングラン家を天秤にかけて、この程度で許してやったのだから感謝して欲しいものだ。


 辺境伯が愚痴をこぼす。


「我々がマリオンを首都星に送ったのは、支援を得るためでしてね。もちろん、バンフィールド家も候補に入っていましたが――それを、事もあろうに勝手に動くなど、迷惑な娘ですよ」


 オルグレン辺境伯、そしてオルグレン子爵家――二つの家の関係者が、マリオンに向ける視線は冷たかった。


 理由は、マリオンが個人の勝手な判断で行動していたからだ。


 有力貴族からの支援を引き出せるように交渉してくれ、という本家や実家からの命令を無視していた。


 いや、その命令を使って、自分の才能を見せつけるつもりだった。


 マリオンはオルグレン家で成り上がるつもりだったようだ。


 探りを入れたら、面白い結果になっていた。


 ま、オルグレン辺境伯が俺を陥れようとしていても、どっちでも良かったけどな。


 敵対するなら、覇王国を使って立ち直れないほどに叩くつもりだった。


 俺はマリオンに話しかける。


「最初に言っただろう? お前の主人を出せと」


 マリオンが憎しみのこもった顔を向けてきて、右手を俺に向かって伸ばそうとすると周囲が動き出す。辺境伯の騎士たちがマリオンを取り押さえようとして、俺の影からはククリたち暗部が動く。


 だが、すぐにその右手を俺が掴んだ。


「楽しかったぞ、マリオン。小物にしてはいい動きだったと褒めてやる」


「――っ!」


 マリオンを手放し、辺境伯に顔を向けた。


「それでは、これで」


「うちの関係者が申し訳ない。リアム殿が納得するように処罰しよう」


「いえ、結構です。むしろ――何もしない方が俺好みですかね」


 辺境伯は俺の申し出を受け入れた。そして、マリオンに視線だけを向ける。


「リアム殿のご厚意を無駄にしないことだ」


 俺はウォーレスを連れてその場を後にする。最後にマリオンに声をかけておこう。


「マリオン、そのドレス姿は可愛かったぞ」


 ウォーレスが俺に「リアムも酷いよね」と呟いていたが、俺は最初から酷い男だから間違いじゃない。


若木ちゃん( ゜∀゜)「真の後書きのアイドルは、PV数の多い方に残るもの! ここで乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です6巻 の宣伝をするわ! でも、色々と語り尽くしてきた気がするから、今日は特典のお話をするわね」


若木ちゃん( ゜Д゜)「……六巻はね、アンケート特典で「マリエルート」をやって脅威の5万字よ。いや、何だよ、五万字って。私のおまけを用意してくれた方が、コスパ最強だと思うのにね」


若木ちゃん( ゜∀゜)「みんなもマリエルートより、この後書きのアイドルの活躍を読みたいわよね? ね!? 感想欄で苗木ちゃんの話が読みたい、って書いてくれてもいいのよ。あと、アンケートの人気投票は苗木ちゃんでよろしく!」


若木ちゃん(#゜Д゜)「……今回はドラマCDで出番がなかったけど、私はここで諦めない。必ず成り上がってやるわ。私、絶対に人気者になるから!」

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前から宣伝が鬱陶しいとは思いつつもタダで読ませてもらってるからしょうがないと黙って我慢してたけど、ついに他作品のあらすじまでねじ込んできたな しかも宣伝に関して苦情言ってる読者が居ると前書きで言及して…
前後で長たらしい他作品の宣伝にうんざり... ホントさ、前書きでチョロっと誘導して、 後書きで好きなだけやりゃ誰も文句言わないだろうに 宣伝するな!何て言わないからさ... 俺はこの作品が読みたいんだ…
[一言] 技術的には同性同士でも子供が生まれそうだから同性で結婚しても良さそうだけど、男尊女卑はあるみたいだし貴族当主は原則として男性なのかな?
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