ランディー
通販サイト様で「俺は星間国家の悪徳領主! 01」が売り切れ続出と嬉しいような、申し訳ないような状態です。
今だとお店で手に入れるのが確実でしょうか?
もしくは、電子書籍ですね。
作者の自分はどちらで購入してもらっても嬉しいです(*^▽^*)
※活動報告を更新しております。書籍版の感想やら諸々はそちらを利用していただけると助かります。
マリオンは自宅で目を覚ます。
ベッドの隣で眠っているのは、昨晩声をかけた女性だ。
起き上がったマリオンが手を掲げると、窓が遮光を中断して光を取り込む。室内が勝手に動き出し、朝の準備を始めた。
マリオンも起き上がり、出仕するため身支度を調える。
そして、いつまでも目覚めない女性に声をかける。
「レディ、そろそろ時間だよ」
甘く優しい声で語りかけると、女性が目を覚ます。
昨晩のことを思い出したのか、女性は慌てて自分の体を隠した。
「可愛いよ」
その姿を愛おしく思うマリオンが、女性の髪に手を伸ばした。女性は顔を真っ赤にして、そのまま周囲に散らばっていた衣類を持ってシャワールームへと駆け込む。
「昨晩はあんなに盛り上がったのに。――さて、僕もそろそろ出仕しないとね」
窓から見える景色を見下ろす。
首都星らしく灰色の景色が広がっていた。
「ここはゴミゴミしていて好きじゃないな。――首都星の女性は美しいから好きだけど」
そんな感想を呟いた。
◇
「おはようございます、リアム先輩」
人懐っこい笑顔で挨拶をしてくるのは、マリオンだった。
毎回のようにエレベーターで遭遇する。
「今日も香水の匂いがするな」
マリオンは端末を取り出して昨日の成果を自慢してきた。
「可愛い子を見つけましてね。口説き落としました。あ、この子ですよ」
香水の匂いは女性が理由、としたいようだ。
前に見せられた女とは別人だ。
こいつ、夜は常に女を口説いているイメージしかない。
可愛い見た目に騙される女が多いようだ。
俺の感想は――よくやる、だ。
マリオンはここ最近の成果を見せてくる。気の強そうな美人が好みなのか、どれも大人の女性ばかりだ。
「リアム先輩も一緒にどうです? 入れ食いですよ」
こっちが宮殿に勤めているお役人だと分かれば、一般の女性たちは目の色が変わる。何しろ、お役人は帝国では勝ち組中の勝ち組だからな。
首都星では大人気だ。
「修行期間が終われば田舎に戻ると教えてやれ。すぐに逃げるぞ」
「別れる時にはそうしますよ。それにしても、リアム先輩は女遊びをしませんね。婚約者さんに悪いからですか?」
ロゼッタに悪いから? こいつは馬鹿か?
どうして俺がロゼッタに気を遣わなければならない? あいつは俺の物であって、俺はあいつの物じゃない。
あまり遊びすぎると、天城とブライアンが五月蠅いからだ。
天城は「手を出したら責任を」と言い出すし、ブライアンは「リアム様がついに女性に興味を持ちましたな! ――ですが、ハニートラップだけにはお気を付けください。それ以上は、何ももうしません」――あれ? あいつら、むしろ推奨していた?
だが、一人でも手を出せば、五月蠅く騒ぎそうなので却下だ。
「俺に相応しい女がいないからだ」
「言いますね。でも、食い散らかして遊ぶのも楽しいですよ」
ニコニコしているマリオンを見て、こいつはいつか刺されるのではないか? そう思ったが、こいつも貴族だ。
一般人に刺されるようでは、貴族失格である。
エレベーターが目的のフロアに到着したので降りる。職場に向かえば、朝からランディーが取り巻きたちと俺の机の周りで話をしていた。
「ランディー様、おめでとうございます」
「ありがとう」
「クレオ派閥加入で、益々ラングラン家の重要度が増しますね」
「これから忙しくなる。手伝ってくれよ」
わざわざ俺の机の周りで、クレオ派閥に加入したことを話していた。
マリオンが俺を見て面白そうにしていた。
「挑発されていますよ」
「させておけ」
ランディーたちを無視して席に着けば、俺の机の上にファイルが一つ置かれた。
「やぁ、リアム」
呼び捨てにしてくるランディーは、俺の肩に手を置いてきた。
「馴れ馴れしいな。手をどけろ」
忠告してやれば、ランディーは馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。
「今日はクレオ殿下に呼び出されていてね。忙しいから俺の仕事を代わりにやっておいてくれ。同じ派閥の仲間なんだから、別に構わないだろ?」
――数日前にクレオから、ラングラン家の派閥入りを認めたと事後報告が来た。それ自体は驚くことじゃない。
むしろ、この程度かと肩透かしされたような気分だ。
「別に構わないぞ。新人の面倒を見てやるのも、派閥のトップの仕事と思えば悪くない。精々、クレオ殿下に気に入られるように尻尾を振ってこい」
笑顔で言ってやると、ランディーの表情が少しだけ変化する。笑顔のままだが、頬だけがピクピクと震えていた。
貴族なのにポーカーフェイスすら出来ないのか――そんな疑問も浮かぶが、地元や屋敷ではかしずかれて当たり前なのが貴族だ。
煽られることになれていないため、我慢が出来ない。
こいつも地元で王様気分を味わってきたタイプなのだろう。
「それでは頼むよ」
悔しさを滲ませながら去って行くランディーと取り巻きたち。様子を見守っていたマリオンは、俺に呆れていた。
「面倒なことになりましたね。まさか、クレオ殿下がラングラン家を取り込むなんて。クレオ殿下の派閥規模なら、急いで取り込む必要があるようには思えません」
有象無象の貴族たちが一つ二つ増えたところで、状況に変化はない。
しかも、情勢を見てすり寄ってきた連中は、状況次第で裏切る可能性が高い。
信用できない奴を懐に抱え込むなどあり得ない――とは言い切れない。
「ラングラン家がどこまでやれるか、楽しませてもらうとしよう」
ランディーが置いていったファイルを手に取れば、中身は随分と――データ量が多かった。小さなファイルに、これでもかと仕事が用意されている。
わざわざ、仕事をかき集めて俺に押しつけたのだろう。
ファイルを閉じると、マリオンが話しかけてきた。
「その仕事量なら残業確定ですね。手伝いましょうか?」
「問題ない」
俺は残業をしない主義だ。
だから、定時までに終わらせてやろう。
◇
取り巻きを引き連れたランディーは、仕事中だというのにビルの中にある休憩所に来ていた。
そこはカフェのような空間で、ウェイターやウェイトレスたちの姿もある。他の貴族たちも朝から利用しており、酒の臭いをさせている者もいた。
本来は修行中である貴族の若者たちが、仕事をさぼっている。
ランディーは、クレオとの面会時間までの暇潰しのために立ち寄った。
取り巻きたちは、リアムの態度を虚勢だと感じたのか馬鹿にした様子だ。
「結局仕事を押しつけられただけだ。あいつはその程度なのさ」
「軍歴と個人の技量は認めるが、政治に疎すぎる。辺境の田舎貴族丸出しだ」
「そんな馬鹿な田舎貴族をまとめるのが、俺たちの仕事になる」
ランディーの実家であるラングラン家は、帝国の首都星に近い――帝国全体で見れば近い距離にあり、発展してきた領地を持つ。
そのため、リアムたちのような田舎貴族を馬鹿にしていた。
ただ、ランディーだけは取り巻きたちとは少し違う。
「その田舎貴族の武力に頼っているのが、クレオ殿下の派閥だ。いいか、絶対に政治以外では勝負をするなよ」
「わ、分かっていますよ、ランディー様」
リアム個人の力も、そしてバンフィールド家の軍事力もランディーは侮っていない。
海賊貴族バークリー家を倒したのはリアムだ。
ランディーは今後の計画を思案する。
(近い内にリアムを首都星から追い出せる。それまでの辛抱だ)
クレオを味方に付けたランディーは、リアムを首都星から追い出すための準備に入っていた。
(いくら武力を持とうとも、政治の世界で生き残れると思うなよ)
武力ではどうにもならない政治力で、ランディーはリアムに戦いを挑もうとしていた。
◇
後宮にあるクレオの住むビルでは、リシテアが憤慨していた。
「クレオ、どうしてランディーの意見を聞き入れた!」
クレオは執務室で電子書類にサインをしていた。
その書類は、クレオに対する陳情書だった。
貧困に喘ぐ貴族から支援の申し出だったが、中には怪しい内容のものもある。
それなのに、クレオは散財するかのごとく支援を約束していた。
「何の話ですか、姉上?」
陳情書に気付いたリシテアは、不用意に支援を約束するクレオを咎める。
「お、お前、その陳情書全てにサインするつもりか? 安易に支援をすれば、すり寄ってくる連中が増えるぞ!」
「グドワール覇王王国に攻め込まれ、困窮する者たちです。放っては置けませんよ」
それらしい理由を言われては、リシテアでは強く言い返せなかった。
「バンフィールド伯爵に相談した方がいい」
クレオはそれを小さく笑う。
「な、何だ? クレオの資金を援助しているのはバンフィールド伯爵だろう? 何も相談しないのは不義理だと思うが?」
当然のことを言うリシテアに、クレオは小さく頷いて書類にサインをしていく。
「もちろんですよ。バンフィールド伯爵には相談しますし、大きな仕事も任せようと思っています」
リシテアは、それを聞いて安堵した。
ラングラン家を取り込み、リアムの対抗馬にしようとしているクレオに危機感を覚えていたからだ。
「それがいい。バンフィールド伯爵を蔑ろにするのは悪手だぞ」
「分かっていますよ。飾り物の俺が生き延びるためには、大貴族の支援が必要ですからね」
政治に口を出せないリシテアは、クレオの言葉に納得する。
「それで、バンフィールド伯爵に任せる大仕事とは何だ?」
クレオは電子書類に視線を向け、中身もあまり気にせずサインしていた。
「取り潰された家があります。領地は帝国が直轄地としたのですが、辺境にあるため誰かを派遣する必要が出てきました。それを、バンフィールド伯爵に任せます」
「――え?」
驚くあまり、リシテアの反応は遅れてしまった。
ある貴族の家が取り潰しにあった。その貴族が管理している惑星に、領主がいなくなってしまったので代官を派遣する。――そこまではいい。
だが、そこにリアムを派遣するというが問題だった。
「首都星からバンフィールド伯爵を離すのか!? だ、駄目だ! バンフィールド伯爵がいるから、有象無象が動かないんだぞ! クレオ、考え直せ!」
「バンフィールド伯爵は武威と統治に非常に優れています。実家の領地を見事に復興したのも彼ですからね」
「適任だろうと、替えのきかない人間を動かすな!」
泣きそうになるリシテアに、クレオはリアムを派遣する惑星の状況を伝えた。
「姉上、それだけ重要な惑星なのですよ。グドワール覇王国の侵攻で、帝国の領民たちが避難しています。受け入れ態勢もそうですが、後方支援の基地も足りません。軍隊経験もあり、能力も優れた人物を派遣して欲しいと泣きつかれては断れませんよ」
帝国のためには必要と言われ、リシテアは言葉を詰まらせる。
クレオはダメ押しをする。
「宰相の許可も取りました。修行中の若者には厳しくとも、バンフィールド伯爵なら期待に応えてくれるだろうと、認めてくれましたからね。それに、この依頼を達成すれば、カルヴァン兄上の一人勝ちは防げます。少なからず戦争に貢献したと認められますから」
リシテアは肩を落とした。
「クレオも色々と考えているようで安心した。だ、だが、バンフィールド伯爵がいないとなると、お前の護衛というか後ろ盾が不在となるぞ」
クレオは平然と言ってのける。
「そこはラングラン家に頑張ってもらいましょう」
ブライアン(´;ω;`)「辛いです。次から次に敵が出てきた辛いです」
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若木ちゃん(;><)「くっ! 宣伝のためにもっと頑張らないと――」
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ブライアン(; ・`ω・´)? 「……植物は普段から全裸では?」