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アナベル夫人

AmazonのKindle――ライトノベル売れ筋ランキングで二位になっていました(;゜ロ゜)!?

BOOK☆WALKERさんではライトノベルで日間三位!!!


初日にこんな順位なんて、嬉しいですね。


電子書籍版も好調のようですが、書籍版は専門店などで特典SSも付くのでそちらを狙っている読者さんは、専門店さんで買われるといいかもしれませんね。


特典と言えば、メロンブックスさんですが、一巻なのにメロン限定版まで用意してくれて驚きました(^_^;

 帝国内で次期皇帝を決める争いは、大半の予想に反してクレオ優勢で進んでいた。


 リアムがクレオの支援を表明してから、急速に派閥は拡大している。


 何度も危機を乗り越え、今ではカルヴァンよりもクレオを推す声が増していた。


 ただ、そんな状況になっても嬉しくない人物がいた。


 ――クレオ本人だ。


「俺ではなく、どいつもこいつもリアムの名前ばかり出す」


 自室で愚痴をこぼすが誰も聞いていない。


 今は一人でくつろいでいた。


 部屋に入ってくるのは、最近浮かれている姉のリシテアだ。皇族ながら、クレオを守るために騎士になる道を選んだ女性だ。


 オレンジ色の髪をポニーテールにしているリシテアは、嬉しそうにクレオに報告してくる。


「クレオ、聞いたか! 今日も面会者が多すぎて、ついに面会は数年待ちの状況になったぞ」


 クレオに対して挨拶に来る貴族や商人たちが増えていた。


 また、色んな組織もクレオに会おうと面会を求めてくる。


 以前では考えられない状況に、リシテアは興奮している。


「やはり、派閥がまとまったのがいいな。それに、今はカルヴァン兄上が不在だ。お前に会いたいという貴族は多いぞ。カルヴァン派から鞍替えを希望する者たちも増えている」


 皇帝の座に最も近い者は、今ではクレオであると噂されている。


 もっとも、カルヴァンとの差はあまり大きくない。


 何かあればクレオなど吹き飛ぶような危うい状況に変わりなかった。


「俺ではなく、バンフィールド伯爵に会いたいのではありませんか?」


 皮肉に対して、リシテアは表情を少し険しくする。


「バンフィールド伯爵も目当てだろうが、それは仕方がないぞ。お前の最大の支援者で後ろ盾だ。伯爵の資金と軍事力がなければ、我々は今頃どうなっていたことか」


 クレオは、姉であるリシテアに責められて素直に謝罪することにした。


「冗談ですよ。しかし、朝から陳情ばかりで嫌になりますね」


「それだけお前を頼りにしている者が多いのさ」


「――無視されるよりも嬉しいですね」


(俺のことなど、伯爵のお飾りと考えている者が大半だけどな)


 本当は嬉しくなかった。


 自分の力ではなく、リアムの力で今の地位にいられる。


 皇子である自分は、相変わらず弱い立場のままだと認識していた。


「今はバンフィールド伯爵も首都星にいるから、何があっても安心だからな! さて、今日の予定だが――」


 リシテアが秘書のように今日の予定をクレオに教えようとすれば、ドアの外が騒がしくなっていた。


 護衛の騎士たちがクレオに確認を取ってくる。


『クレオ殿下、少しよろしいでしょうか?』


「何事だ?」


『じ、実は――殿下の母君が来られているのです』


「母上が?」


 座っているクレオが立ち上がってしまい、リシテアも口を開けて驚いていた。二人にとっての実母である【アナベル・セレ・ラングラン】が、わざわざ尋ねてきた。


 今まで娘たちに会おうとしなかった人物の登場に、クレオもリシテアも困惑を隠せなかった。


 顔を見合わせ、クレオはリシテアの意見を求める。


「姉上、どうします?」


「――何の用件で訪れたのか確認する。返事はその後でいいだろう。私が応対するから、クレオはこの場に残ってくれ」


 リシテアが慌てて外に出ていくと、クレオはそれを見送って椅子に座る。


「今更、何をしに来た?」



 アナベル夫人と面会したクレオは、驚きを隠せなかった。


 アンチエイジング技術により、アナベル夫人の見た目は若い女性と遜色がない。


 子供が三人いて、孫がいてもおかしくない年齢だと言っても誰も信じないだろう。


 クレオの姉と名乗っても通用するレベルだ。


 そんなアナベル夫人は、独特な派手なドレスを着用している。襟が大きなドレスは、まるでエリマキトカゲのように見える。


 髪型も独特で、タマネギのようなまとめ方をしていた。


 以前はクレオたちを見ても無関心だった母親が、今は笑顔で話しかけてくるのも違和感しかない。


「クレオったら、見違えるように大きくなったわね。聞いたわよ。あのカルヴァン殿下よりも宮殿内で発言力を得たそうじゃない」


 アナベル夫人は基本的に後宮に引きこもり、外の世界と関わりを断っていた。そのため、世間の流行に疎く、独特なファッションをしている。


 そんなアナベル夫人にも、クレオの飛躍が聞こえたのだろう。


 こうして娘――息子に会うために、わざわざ出向いてきたようだ。


 アナベル夫人をクレオの斜め後ろに立って見ているリシテアは、苦々しい顔をして視線を背けていた。


 アナベル夫人はクレオには笑顔を見せても、リシテアには見向きもしない。


「このままいけば、クレオが次代の皇帝陛下になれるわね」


「まだ決まった話ではありませんよ」


「何を言っているの! ――カルヴァン殿下は皇太子でも、今は宮殿から離れているわ。覇王国と戦うために隙を見せているのよ。これを突いて、あなたの地位を盤石にしないと駄目じゃない」


 アナベル夫人の意見は間違いでもない。


 カルヴァンが不在の今こそ、クレオ派閥は宮殿内での勢力を拡大するべきだ。


 だが、クレオはその件に関われていなかった。


「バンフィールド伯爵に任せていますよ」


 アナベル夫人の視線が鋭くなる。


「――クレオ、あなたがバンフィールド伯爵を優遇するのはよく理解できるわ。辛い時に支えてくれたのは彼だったからよね?」


「えぇ、そうですね」


(貴女は俺たちを助けようともしなかった)


 クレオは内心で毒づいていたが、それを声には出さなかった。


 ここで実母と揉めるのを避けたからだ。


 ただ、アナベル夫人はクレオの気持ちを察しているようだ。


「辛かったわね。本当に申し訳ないことをしたわ。本来なら、わたくしの実家に頼んであなたを守ってもらうべきだったのに」


 クレオの手を掴むアナベル夫人は、本当に申し訳なさそうにする。


 その白々しさに、後ろで控えているリシテアは眉間にしわを寄せていた。「今更」と小さい声で呟いていたが、それはアナベル夫人には聞こえなかったようだ。


「でもね、誰かに頼り切るのはよくないわ。このままバンフィールド家に頼れば、あなたの治世で問題が出てくるわよ」


「それはそうですが」


 クレオにとって問題は、皇帝になってもリアムを簡単に切り捨てられないことだ。派閥をまとめているのはリアムだし、恩もある。


 これを簡単に裏切れば、貴族たちは「恩を仇で返す皇帝」として認識する。


 極力関わらないようにするだろう。


 そして、クレオの派閥は弱体化して、思うように治世が行えない。


 それを受け入れたのはクレオ自身だ。


「ここはラングラン家を重用しなさい。バンフィールド伯爵を切り捨てるのではなく、少しずつラングラン家を使うのよ。そうすれば、彼の独裁を防げるわ」


「なっ!」


 驚いて声を上げたのはリシテアだった。


「クレオ、耳を貸すな! 今更、ラングラン家を重用しても、派閥の貴族たちが納得しないぞ!」


 リシテアの忠言にクレオは耳を貸すが、ここで考えてしまった。


(このままバンフィールド伯爵に頼り切って本当にいいのか? ラングラン家という力を使い、少しでも権力を奪う方がいいのではないか?)


 クレオが皇帝になる可能性が出た瞬間に、近付いてきたラングラン家だ。信用には値しないが、それよりもリアム対策で重用するのは悪くないと思えた。


 信用できない家というデメリットを知りつつも、受け入れようとするのはリアムの存在が大きい。


 クレオは――リアムへの劣等感から、理由を見つけてラングラン家を受け入れる決断をする。


「いいではないですか。俺もラングラン家の血を引いているのです。親族を切り捨てては、他の貴族たちも面白くないでしょう」


 リシテアはそれを聞いて言い淀む。


「それはそうだが、この件はバンフィールド伯爵に何と説明するつもりだ?」


「俺が直接説明しますよ。バンフィールド伯爵にも理解してもらいますよ」


(今はまだ俺の方が弱い。だが、いつかはきっと――)


 こうして、クレオ派閥にラングラン家が加入することになった。



 職場で忙しくしている俺に話しかけてくるのは、マリオンだ。


「先輩も大変ですね」


 何を聞いてやって来たのか知らないが、マリオンは俺の事情に随分と詳しい。


「何のことだ?」


「ラングラン家の事ですよ。ランディーさんがクレオ殿下に特別に面会を許されたと聞きましたよ。ここだけじゃなくて、宮殿中で噂になっています」


 端末を見せてくるマリオンは、前世の掲示板のようなものを見せてくる。


 そこには俺を煽るような書き込みが沢山あった。


 そんな書き込みは無視して、俺は“自分”の仕事を進める。


「今は忙しいから話しかけるな」


「リアム先輩は相変わらず真面目ですよね。口では色々と言っていても、真面目な性格は隠せていませんよ」


 ――こいつは本当に何も理解していないな。


 俺が今、何をしているのか分かっていない。


「それで? わざわざ俺にこれを見せに来たのか? 俺がこいつらを探し出して、血祭りに上げると思ったか? 忙しいからそんな暇はないぞ」


「激昂してくれると思ったのに残念です」


 そんな暇はない。


 俺たち二人が話をしていると、相変わらず派手なスーツ姿のランディーがやって来る。これ見よがしに勝ち誇っていた。


「リアム、これもやっておけ」


 投げて寄越してきたのは、ランディーたちに任せられた仕事だ。


「何の真似だ?」


「同じ派閥の仲間同士、仲良くしようじゃないか。俺たちは忙しいからな。お前が代わりに仕事をしてくれ」


 去って行くランディーは、取り巻きたちと俺を見て馬鹿にしたように笑う。


 俺にまだこんな態度を取れる奴がいたとは驚きだ。


 しかも、俺よりも弱い立場で、だ。


 マリオンが俺に声をかけてくる。


「手伝いましょうか?」


「何の問題もない。お前は自分の仕事をしろ」


 今は大人しくしておくとしよう。



 アナベル夫人は、甥っ子であるランディーを呼び出していた。


 ランディーは緊張した様子で、リアムについて報告している。


「こちらが横柄な態度を見せても落ち着いた様子です。本当に研修先で暴れ回ったのかと疑いたくなりますよ」


 二百歳が目前に迫り、慌てて修行を開始したランディーはお世辞にも真面目とは言えない。だが、そんなランディーでも教育カプセルを使えば周囲の有能な官僚たちについていけるほどの能力が得られる。


 それでも、リアムとの間には大きな壁が存在する。


 アナベル夫人は、出来の悪い甥っ子に溜息を吐いた。


「リアムは注意して見張りなさい」


「任せてください。既に見張りを用意しています。それで、ラングラン家がクレオの派閥で筆頭に立てるのですか?」


 ランディーが気になっているのは、クレオ派閥でトップに立つことだ。


 そんなランディーを見て、アナベル夫人は首を横に振った。こいつは何も理解していない、という顔をしている。


「どうしました、叔母上?」


「ランディー、あなたはもっと賢くなりなさい。私がいつ――クレオを支援すると言いましたか? クレオ派閥には中から崩れてもらいます。それが、あのお方の意思ですからね」


 アナベル夫人は、最初からクレオを支援するつもりなど無かった。


「それでは、ラングラン家にはメリットがありませんよ!」


「落ち着きなさい。ちゃんと利益が出るようにするわ」


「それはつまり、カルヴァン殿下との繋がりがあるのですか? クレオがいなくなれば、もっとも利益が出るのはカルヴァン殿下ですよね?」


 クレオを追い落として利益があるのは、カルヴァンだ。


 ランディーは、叔母であるアナベル夫人が裏でカルヴァンと繋がっていると予想する。


「――ランディーはこのままリアムを見張りなさい。隙を見せるなら、追い落としてもいいわ。ただし、証拠は絶対に残さないようにするのよ。あいつが今まで、どれだけ他の貴族を潰してきたか覚えているわね?」


 ランディーは冷や汗をかきながら頷いた。


「も、もちろんです」


 クレオが派閥内に招き入れたラングラン家が、怪しい動きを見せる。


ブライアン(´;ω;`)「案内人もいないのに、次から次に厄介事が舞い込んで辛いです。あ、でも――」


ブライアンヾ(*´ω`*)ノ「本日発売の【俺は星間国家の悪徳領主! 01】でございますが、好調なようでこのブライアンは嬉しいですぞ」









若木ちゃん|д゜)「7月30日発売の【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 6】もよろしくね。今回はドラマCDつき限定版が発売されるの。ちなみに私の守護者のリオンしゃんは【CV 小林 祐介】さんで、一つ目のルクシオンは【CV 白井 悠介】さんよ――凄くね?」

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― 新着の感想 ―
[一言] クレオはこういうキャラじゃないとリアムが皇帝になる理由がないから仕方ないね
[一言] クレオがもう少し頭が良かったら、自分は傀儡だと開き直って自分に出来る事をするのに 中途半端に頭が回る無能は、劣等感やら能力不足やらなんやかやな自分の感情に振り回されちゃうのは致し方ないっち…
[一言] 一番の敵は無能な味方ってのはよく聞くよね。 自分一人では周りに嘲笑されて置物扱いで人生が終わった男(元女?)なのに、今更劣等感を拗らせてもしゃあないやん。 自分には能力が無いと腹をくくった…
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