鎧の追記――過重によるパフォーマンス低下の考察
※ 注意書き
・貴方は、この文章を全面肯定しなくても良い
・貴方の感想と作者のそれとが違っていても、貴方が馬鹿にされている訳ではない
・異なる考えの持ち主は数え切れないし、それらと分かり合えなくともよい
・だが他人の顔にウンコを塗ろうとすれば、相手は当然に怒る
・そして相手と友達ではないのなら、礼儀正しく話しかけるべきである
1、30キロという重さ
自衛隊の訓練の一つに、100km行進というのがあるそうです。
幹部候補生の卒業試練だったり、現役自衛隊員の訓練だったりするようですが……二日間かけて走破するとか。
この時の荷物が30kgだそうです。
つまり――
『あの化け物ぞろいの自衛隊員ですら、30kgの荷物だと二日間でヘタる』
のです!
一人でも知り合いがいれば判ると思いますが、あの人たち――
『全員が常人レベルではない』
ですからね?
スポーツをやっている程度で敵う体力ではありません。
本気でプロ選手を目指したことがあるレベルで、やっと比較になる程度!
(あくまでも体力比べ。筋力などはアスリートの方が高め)
このことから――
『30kgの鎧を着て戦場を一日過ごすだけでも、非常に厳しい訓練が必要』
となります。
言っときますが、過ごすだけ。戦いに割り振る労力は別計算です。
2、50キロという重さ
同じく自衛隊の訓練に、10km行進というものがあります。
これは新人に課すテスト的側面もあるようですが、きつくて厳しいことに変わりはありません。
そして、この時の荷物が50kgです。
素人考えだと――
『でも新人向けだろ? 慣れれば誰にでもできるはず』
などと思われるかもしれませんが――
『厳しい自衛隊ですら、50kg荷重では短距離!』
と目を覚ますべきでしょう!
自衛隊は世界でもトップレベルな厳しい訓練をしていいます。強いかどうかはさておき、それは認めるべきです。
また、いざという時なら長距離もやむなしでしょうが――
『基本的に当日だけのスケジュール』
です!
一定距離を行進させ、現着と同時に戦闘開始、そのまま陣地防衛――なんて時に、ここまでの荷物は持たせないでしょう。
……ほぼ無理ですから。
先行部隊は最小限の荷物で急行。バックアップ部隊が荷運び兼任。
素人である作者にですら、その方が正しいと分かります。
ですから不慮の事故でも起きてなければ、50kgの荷物を連日、さらには朝から晩まで運ばせたりはしないのです。
……レンジャー部隊は、やりそうですが。
3、どういうことだってばよ?
ようするに……人間は一日で100kmマラソンができます。だから――
『100km×10日で1000km! 10日で着くな!』
なんて考え方は駄目ということです。
100kmマラソンをしたら次の日には使い物にならなくなっているのが、人間という生き物です。
そして格闘技経験者に――
『防具のあるなしで、どっちが動ける?』
と聞けば、全ての人が同じ答えを返すと思われます。
『そんなの当然、防具なし。極限状態だとスーパーセーフどころか、胴着ですら重くなる』
と。
これについては作者も同意見です。
ほんの数kgにも満たない安全具ですら、身軽の時には避けれたものを避けれなくします。
それが10kg単位だった日には?
防具という代物は、決して着け得ではありません。
4、鎧不要論というわけではない
以下の遊びを、服を着た場合と裸で行った想像をしてください
・参ったといった方が負け
・攻撃方法は『もみじ』――素手の張り手に限る
・例外として真後ろからタックルされた場合、判定負けとする
当然、服を着ている方が有利です。
服の部分に当たっても痛いですが、裸よりはマシ! 場合によっては相打ち――一撃は覚悟して倒す戦術すらありでしょう。
しかし、裸の方は、何処へ命中しようと悶絶必死!
呻いている間に連打されて「参った」という暇すらない可能性も?
ここから――
『防具には一定のメリットがある』
と断定できます。
さらに――
『普通の服ではなく、分厚い生地だったら?』
防御へ意識を割り振る必要も少なくなり、より相手は厄介でしょう。
となると――
『どこまでも分厚くしていけばよい』
のでしょうか?
仮に着ぐるみレベルの服を着れば、絶対に『もみじ』で痛くありません。
反面、その分だけ後ろからタックルされる可能性も跳ね上がります。
重装備をすればするほど相手の運動性能についていけなくなり、こちらの活動時間も短くなるからです。
装備なしの格闘家ですら連続3分も動けばヘロヘロとなります。重装備での場合は、推して知るべきでしょう。
結論として――
『裸でも駄目だが、着込めば良いというものでもない』
となります。
ですが、それは――
『鎧否定論ではありません』
この例でいうのなら……適切な布の厚さ、形状、防御部位――これらは検討の余地がある、でしょうか?
5、数キロの装備ですらパフォーマンスを下げる例
判りやすい例として――
『体育祭で剣道部が剣道着でリレー』
を想像してください。
あれだけ体育の時間で俊足を見せつけた剣道部員くんは、トップでしたか?
まあ、ほとんどの人が――
『剣道部惨敗! だが、それが良い!』
な想像をしたと思います。
……実際に見たことがある人もいる?
この剣道防具一式ですが、トップレベル――日本代表選手クラスの品で4kgだそうです。
学生レベルで5~7kg。授業用の型落ち廉価品でも10kgはないとか。
このことから――
『5kgの過重で、駆けっこに勝つのは絶望的となる。動きにくかったら尚更』
といえます。
また、5kgというと老化体験スーツが近いです!
だいたい3~5kgをウェイトとして負荷とし、老化の衰えを再現するので――
『3~5kgの過重で、初老程度まではパフォーマンスが落ちる』
と言わざるを得ません。
※ 老化体験スーツは過重負荷以外に視界や聴覚、関節駆動域なども制限する
なので額面通り受け取るのはやり過ぎか?
しかし、老化といっても鍛え上げた戦士が前提。
なので現代の例でいうと――
『全盛期にレジェンドクラスだったイチロー選手は、44歳になっても一流プロ』
です。
また3~5kgも倍くらいに考えて――
『7kgの過重で、1ランク下のパフォーマンスとなる』
程度に考えるべきでしょうか?
(つまり、全盛期のイチローに7kg荷重すると、いま現在のイチローとなる想定)
これなら鎧側に甘い裁定だし、そう的外れでもないような?
6、10kgでパフォーマンスが下がる例
老化体験スーツに近いもので、妊娠体験スーツというものがあります。
これは製品によってまちまちですが、おおよそ7から15kgほどの負担を使用者に加えます。
この最大値である15kgは臨月の頃で、ほぼ全ての男性が「辛かった」と感想を。
※
まあ、大したことないと言える人は体験しない可能性も?
それに重さもあるけれど、足元が見えなかったり転んだりできないなど……他にも大変さがある。
しかし、戦前などの実例で――
『産む直前まで野良仕事をしていた』
なんてのも、よく耳にします。
これを以て妊婦は意外と平気というつもりはありませんが――
『体力的に優れた女性レベルだと、常時10~15kgの過重でも軽作業ができる』
とも言えるでしょう。
なんといっても実例があるんですから。
また女性の登山などで、荷物を10kg程度に収めるセオリーにも一致します。女性レベルの体力なら妥当な数字なんでしょう。
これを男に換算すると――
『常時でも総荷重10~15kg程度なら、ほぼ確実に軽作業をこなせる』
でしょうか?
7、20kgの過重という条件
男性の場合、登山での荷物は20kg程度が標準です(この登山は本格的な方。ハイキングなどではない)
なので標準的な男性だったら登山――重作業をしながら20kgの荷物を持って歩けるのですが……
この時のカロリー消費を舐めてはいけません!
なんと推定2500カロリー! フルマラソンと同じかそれ以上!
つまり――
『20kgの鎧を着て、一日3~5時間ずつ活動。それを一週間続けた』
は――
『一週間、毎日フルマラソンしてた』
です!
うん、無理!
生命維持に必要なカロリーは別ですから……みるみる痩せ細っていくことでしょう!
活動時間を半分にして、ハーフマラソン相当ならいける?
毎日のように走るプロボクサーでも、トップレベルでロードは15km。他のトレーニングもしているだろうし……毎日ハーフマラソン相当ならギリ?
籠城戦でヤバくなった瞬間でも、鎧武者は一日に1.5~2.5時間程度……いや、戦闘の分まで考えると、多くても2時間程度が活動時間?
より長い活動も無理ではないけれど、連日だと絶望的?
それに食べなかったらハンガーノックを起こすだろうから……兵糧攻めはあっという間に決着したのかも?
で、40kgの鎧の場合、この半分?
50kgなら……4割程度? 動けて1日1時間未満?
そしてプレートメイル着た戦士が、歩いてダンジョンへ行くとか自殺行為! 止めてあげて!
プレートメイルで20kg、3日分の水と食料が切り詰めても10kg、武器や野営に必要な色々で10kg――なんと総重量40kg!
戦士さん死んじゃう! 急いで馬かロバ買ったげて!
うーん……でも、20kg鎧なら運用次第な気もします。
それ以上な重鎧は、より専門的な方法が必須……かな?
8、素材として鋼鉄があり得ない
そして中世レベルの場合、鋼の鎧が絶望的です。
どうしてか中国のみ、鋼の量産に成功していたそうですが……それ以外の国では量産できませんでした。
なので、同じ重さの金と同等だった時代すらあります(当然に中国は、鋼を輸出して儲けていたそうです)
一般的に金貨一枚というと5g程度ですから……20kg=20000gを5で割って……しめて金貨4000枚。
お馴染み金貨1枚=1万円で考えたら1領4000万円!
貧乏なトアール王国は、隣国ドッカーノへ攻め入った! 財政再建のためにである。その兵力、重装歩兵1000人!
……え?
4000万×1000人だから……それ材料費だけで400億じゃ? 貧乏?
いや……重装歩兵を作らない方が平和に暮らせたんじゃ?
大貴族が自分用に特注ならともかく、一般兵士に鋼の鎧はあり得ないでしょう。
また、鉄や鋼鉄を溶かせるようになったのも中世後期から。
なので整形は――
『熱して柔らかく粘土状になったところを、ハンマーで叩いて形を変えていた』
のが実情だそうです。
つまり、鎧の形となるまで叩き続けなければならず、比較すれば安い鉄でも人件費は莫大なものとなり――
『鎧作るのなら青銅の方が簡単』
ですらあります。
青銅なら、かなり早い段階で溶かせたんですから。
結果、金属鎧は鉄か青銅製なのに――
『武器だけ鋼鉄』
という鎧側が不利な状況に。
そりゃ叩いて鎧作るより、剣の方が簡単です。材料だって少なく済みます。
なので仕方がない?
色々と素材強度から真面目に考えている方も多いのですが……だいたい武器と鎧を同じ金属にしていらっしゃいます。
でも、鋼の板金鎧が当たり前の時代には、銃器全盛期は幕開けしていて……鋼の板金鎧でも、銃弾は防げなかったわけで……。
これは「どうして日本にフルプレートが誕生しなかったか?」で読者さんから指摘され、作者も追跡調査したのが下地で……まあ、覆せないと思います。
だから鋼の鎧を以て性能を語られても、「はあ、そうですか」程度の返事しかできなかったりします。
判りやすくいうのであれば――
『火縄銃とか防弾チョッキ抜けないから!』
と言われるようなものです。
ましてや素材がステンレスなどの場合――
『このフォースフィールドなら、火縄銃は無効だ!』
レベルの話です。
確かにそうだろうし、否定もしませんが――作者が話している内容からは、かけ離れているように思えます。
9、平均0.8ミリは平均0.8ミリだ
せっかく平均で話しているのに、特別に厚い部分を作りたくてしょうがない方が一定数いらっしゃいます。
では、胸の部分が倍の1.6ミリ厚だったとしましょう。
横は肩幅の平均である40センチ。縦も同じくです。
なるほど。胸の部分はかなりの強度となりました。下手な刃物では斬り裂けないでしょう。
しかし――
『同じだけの面積、鎧のない部分を作る必要が出てきます』
偏らせたんだから、それが道理というものです。
もしくは――
『倍の面積だけ、通常の半分――0.4ミリの部分が必要』
です。
0.8ミリでも抜けるときは抜けるのに……わざわざ0.4ミリ部分を倍も?
というか、0.4ミリって意味あるんですかね?
それに作者も――
『全身鎧に拘らず、急所の部分に重点置いた方が効果的では?』
と自説を述べています。
そして全身鎧であるのなら――
『薄いところを作るより、全体的に均一な方が効果的』
訳です。
急所に重点を置く場合、意味不明な0.4ミリ厚の部分も省略できますから、効果を高くでき――
平均的な全身鎧の場合、何処を攻撃されても似たような効果を期待できます。
つまり、偏らせるのは――
『なぜ、わざわざ長所を捨て、弱くならなくては?』
としか思えません。
10、曲面装甲はバリアでもないし、一方的でもない
平均0.8ミリ程度で鋳鉄の場合、指で押しても曲がるレベルな訳です。
その辺にある車のボンネットを指で押せば多少は凹みますし、同じかそれ以下の強度なんだから納得するしかないでしょう。
……曲面?
思いっきり叩いたら凹んでしまいます。打撃を滑らすどころの話じゃありません。
おそらく鋼やステンレスの鎧と取り違えています。
一応は凹まない様に骨組みで支える方法もありますし、それなら曲面装甲も成立するのですが――
『どのような形で曲面装甲を利用するべきか?』
は、結論が出ていません。
簡単に曲面装甲が可能となった頃には、フルプレートが退役してしまったからです。
なので実戦的なフィードバックは得られなかったといいます。
つまり、曲面装甲は一種のペーパープランで、実用化と実戦効果には疑問符を付けざるを得ません。
11、斧でフルスイングされたけど痛い程度で済んだ
気を付けて下さい。
鋼鉄やステンレスより信頼性のある防具でも、凶器をフルスィングされたら危険です。
外身が平気でも、関節などを痛める場合があります。
また、特に否定する材料も肯定する材料もないので、とくに意見もありません。
(よーく考え直したのですが、これが唯一の正解だと思われます)
12、おそらく来年あたりには、また違ったことをいっている
……一生勉強です。