糾問使
第三章で転生者帝国ことスクトゥム帝国に乗り込んだ際の布陣です。
シルウェステル・ランシピウス名誉導師(正使)
言わずと知れた中身は骨っ子。
正使の座をもぎ取ったのは、実力行使による。
グラミィ
シルウェステル・ランシピウス名誉導師の舌人。という扱い。
以下、ランシアインペトゥルスで押しつけられた方々については逐一面談を行っている。
カプタスファモ魔術子爵クランク・フルグルビペンニス(副使)
トニトゥルスランシア魔術公爵レントゥス・ヴェロクサランシア推挙。
爵位持ちだったことから骨っ子に糾問使の顔にされてしまったかわいそうな副使。
貴族ゆえにプロトコルに通じていることと、気概を買われた。
船に弱い。
一門の中でも変わり者なので有名。
魔術系貴族として爵位を認められているように、魔術師としてもそれなりの腕はある。
だけどあえて魔術にだけ頼らず、それ以外の道をスキップしながら進んでみようという変人。
魔術師が基本的に下手な交渉事に着手。
ちなみに一門のつながりから魔術子爵イドルム・ヴェロクサランシアやラピドゥサンゴン魔術伯ドロースス・フルメランスとも血のつながりがあるが、決して仲が良いわけではないので、彼らの自滅的顛末は正直ざまあと思っている。
シルウェステル・ランシピウス名誉導師の噂については、前の魔術士団長であるクウァルトゥス・トニトゥルスランシア・ランシアインペトゥスの鼻っ柱をへし折ったあたりから噂を聞いて半信半疑の興味津々という状態だったところに推挙され、実物に会えるーとばかり面談に赴いた。
意外といい性格。
面談の一コマ。
全員とは顔を合わせておきたいと――推挙された以上全員連れてかないといけないから意味ないっちゃないんだけど――、面談の機会を設けたのはたしかにあたしなんだが、初対面で「顔を見せていただきたい」って言ってきたのはクランクさんぐらいなものだ。
しかも、見せたら「……なんで動けるんですか?」って、ねえ。
そんなことはこっちが知りたいっての。
しかも、こっちがしてほしい役割を伝えたら「わたくしがイヤと申し上げたらどうなりますか」だとさ。
そう出るんなら、こっちもそれなりに返そうじゃないの。
「『困る。が、それだけのことだ』」
「ほう?」
「『わたしはトニトゥルスランシア魔術公爵より御推挙頂いたからこそカプタスファモ魔術子爵とお会いすることにした。だが当人にやる気がないのではな。無理強いはしたくない、いやできない』」
「とは、いかなるわけでございましょうや」
「『危険だからだ。場合によっては死んでもらう必要もある』」
脅しじゃない。
「『尻込みをなされるならば早い方がこちらもありがたい。また新しい人を探す手間があるのでね』」
軽く煽られたと思ったのか、彼は無言で肩をそびやかした。
エミサリウス
外務卿テルティウス・トニトゥルスランシア・ランシアインペトゥス殿下推挙。
配下の中で唯一夢織草トラップを回避した人物。
きちきちとした性格。真面目な堅物くん。
そのため最初は骨っ子にどん引きだった。
先読みを支える最大の武器である魔力感知能力をオーバーフローする魔力量にあてられたこともある。
平民出身。努力家なので、ハードワークにも身体強化してぜいはあしながらついてくる。
面談にて。
「『我々は魔喰ライに襲われたことがある。魔喰ライは風を操ったとはいえ、塔の下から上まで跳ね上がってきた』」
グラミィの通訳に彼はごくりと息を飲んだ。
「『だが、此度の使命はそれ以上の危険を伴うやもしれない。それでも、同行者となるからには覚悟をしてもらわねばならぬ』」
「わたくしは死にたくございません。ですので、生きて帰れるように相務めます」
声は震えていたが、その目に動揺はなかった。