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あやかし達との宴は如何?  作者: 桜 さつき
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運命の巻【弐】

精神統一が得意な俺でも驚くこの状況。


【小鬼】【座敷童子】【一つ目小僧】【豆腐小僧】【豆狸】…今日は「あやかし」デーか何かなのか。


眠気も一気に覚めて豆腐小僧が面白がって豆腐を頭に乗せてきそうだった為、体を起こした。



「…どこだここ?」



辺りを見回すと俺の家に似たような日本家屋だってのは分かった。


取り敢えず、ここがどこかは分からないままだが重要な問題は別にある。目の前にいるコイツらだ。


何を言う訳でもなく、さっきから俺をジッと見てくる小さい「あやかし」達。


豆腐小僧はどうしても俺の頭に豆腐を乗せたいらしく、俺の体を登ろうと必死に腕にしがみついてくる。何でそんなに豆腐を乗せたいんだよ。


ちょうど目が合った豆狸の両脇に手を差し込んで抱き上げると、さっきまでのノーリアクションが嘘のように慌て始めた。



「よし、狸。ここがどこか、それと何で俺がここにいるのかを教えて貰おうか」


『やややややややっぱり!あっしらの事が見えてるんですねぃ?!』


「はぁ?見えてないと思ってたのかよ」


『み、見える人間なんて早々会わないでさぁ…』



他の「あやかし」達もうんうんと頷き、コイツらが何も言われずに俺を見ていた訳が納得出来た。


コイツらにとっても、俺ら人間にとって「あやかし」が珍しいように見える人間は珍しい存在だからな。仕方ないか。


豆狸と腕にしがみつく豆腐小僧を降ろして話を続けると、どうやらここはコイツらの主の家だと言う。



(主って…俺を助けてくれた奴か?)



意識を失う寸前に感じた冷たい体温と一瞬だけ見えた黒い羽を思い出す。

体を見ると闇子に付けられた傷やあの気だるい感じが綺麗さっぱりなくなっている。


何の接点もない人間を助ける「あやかし」なんてお人好しな奴だ。



「お礼言わなきゃだな…っておいおい…」



膝が急に重くなったと思ったら、膝で大の字になった小鬼は気持ち良さそうに鼻ちょうちんまで出しながらスヤスヤと寝息を立て寝始めていた。


人間の前で安心し過ぎじゃないだろうか。


起こさないように抱き上げ、座敷童子に小鬼を渡すと布団から出て体の感覚が麻痺ってないかを確認する。

主様がどんな治療法をしたのかは分からないが体が驚く程軽くなっていた。



「そんじゃあ、お前らの主様ん所に案内して欲しいんだけど…良いか?」

「「「それでは折角ですのでお召し物をお変えになっては如何でしょうか?」」」



閉じていた襖が勢い良く開くと、着物を着た三人の「あやかし」達が綺麗に廊下に座っていた。


三人とも皆、顔も髪型も同じだが口に巻いてある布の柄だけがそれぞれ違っている。



右端の「あやかし」が持っている着物に目線を移す。…それに着替えるの?俺。


紫色の生地に紫陽花が咲いた着物で遠目からでも高級品だと分かるくらい生地の光沢が良かった。



「突然、申し訳ありません。私達は逢様の侍女でございます。口裂けの一叉(ヒサ)です」

二叉(フサ)です」

三叉(ミサ)です」

「「「よろしくお願い致します」」」



花柄の布が一叉さん、鯉の絵が二叉さん、手鞠の絵が三叉さん。


三人はきっちりとした挨拶をすると物凄い手際の良さで俺の制服を脱がしていく。

ちょいちょいちょい。駄目駄目駄目だって。


女でも「あやかし」なのでかなり力が強く、シャツを持つ手を必死に止めた。



「じ、自分で着物は着れるんで…あの、待っててくれると有難い…です」

「逢様は影様の大切なお方。そんな方をご自分で着付けさせるなんて出来ません」

「えぇ、譲れません」

「断じて」



そうすると女ってバレちゃうんだよ。


シャツを脱がされたら、さらしで胸を潰しているのが分かってしまう。

さっきも闇子でピンチだったがここでも別の意味でピンチになってしまった。


三人と攻防戦を繰り広げ、それを観戦する小さな「あやかし」達。

収集がつかない事態になっているとヒュオォォォと外から寒い冷気が入ってきた。


座敷童子と小鬼は寒かったのか、俺の足に抱き付いて暖を取ろうとしていた。



「影様がお待ちよ。急いで頂戴」

「「「承知しました、雪璃(セツリ)様」」」

「凄ぇ…」



廊下に佇んでいたのは雪化粧が描かれた真っ白な着物を着た【雪女】だった。

背後に吹雪が吹く姿は威圧感が凄い。


豆腐小僧の持つ豆腐が凍り、それを見た豆腐小僧が泣き、慰める豆狸。


本当に色々と収集がつかなくなっている。



「逢様。ここにいる屋敷の者は全員、貴女様が女性だと知っていますのでご安心を」

「は?え?…知ってるんですか?」

「はい」



何故という疑問を問う前に結局、侍女さん達にシャツを脱がされ着物を着せられた。


マジで力が強過ぎるし優秀過ぎる。


流石にさらしはそのままにして貰った。

自分ち以外でさらしを取るのは落ち着かないからな。


家でも着物か浴衣で過ごしている俺にとったら、着物姿の自分は珍しくないがこんな派手な着物を着るのは七五三以来である。



「ここからは私が影様の部屋までご案内致します。一叉、二叉、三叉、ご苦労。それでは、行きましょう」

「「「いってらっしゃいませ」」」



あれ?俺、ここの家主に会うだけだよな?と今更疑問に思ったが時既に遅し。


雪女の雪璃さんに連れられ、俺は影様の部屋へと向かって行った。

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