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あやかし達との宴は如何?  作者: 桜 さつき
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日常の巻【肆】#栄

難しい顔をして窓の外を眺めている幼なじみに苦笑を漏らす。

多分、また外に「あやかし」でもいるのだろう。



(…しかし、本っ当に綺麗な顔してるよなぁ。)



今も眉間にシワを寄せているけど、それさえも悩ましげな表情として色気が溢れている。


ウェーブの掛かった色素の薄い茶髪に髪と同じ色の瞳。健康的な肌に少し赤みがかった唇とスラリと伸びた長い手足。


学校一のモテ男は全部のパーツが素晴らしいのである。




この幼なじみの隣に立って、胸を張っていられるような人物になりたくて俺は変わったのだ。


俺が逢に初めて会ったのが小三の時。


凄く真っ直ぐで綺麗な目をした奴というのが、俺が逢に対して最初に抱いた感想だった。



神社の息子として生まれたせいかは知らないが、小さい頃から俺は人には見えないモノが見えていた。



「ねぇねぇ、そこに黒い変なのがいるよ」

「は?いねーよ。そんなん」

「いるよ。ほら今動いたでしょ?」

「俺達、嘘つきとは遊びたくねぇから」



俺が当たり前に見えていたモノは普通は見えないモノだと小二の時、初めて知った。

周りはそんな俺を気味悪がって、大人も子どもも次第に俺を避けるようになった。


嘘じゃないのに。どうして俺はこんなのが見えるんだろう。


性格も塞ぎがちになって、出来るだけ変なモノが見えないように前髪も伸ばして度の合っていない眼鏡もかけるようになった。


毎日、小学校から帰って来ると人気が無い公園で一人でブランコにただ座って、夕方になると家に帰るという繰り返しだった。


そんな時に俺は逢と出会った。



「こんな所で一人で何してんだ」

「え…えっと、座ってる…だけ」

「ふーん」

「あ…」



突然、現れて話し掛けてきたと思ったらすぐに帰った不思議で綺麗な男の子。その瞳が妙に印象的だった。


そして、逢は次の日も公園に現れた。



「また座ってるだけか?」

「う、うん…」

「楽しいのか座ってんの」

「……楽しい、よ」

「ふーん」



またその日もすぐに帰って行った逢。


来て少し話して帰るというのが一週間続いて、流石の人見知りの俺も話すのが慣れてきていた。


それと同時に、あれだけ寂しかった一人の公園が名前も知らない男の子が来るのを待つ時間として楽しみになっていた。



(友達に…なりたいな…。)



次に会った時は名前を聞いて、それで勇気を出して友達になりたいと言ってみよう。


そう決心した日の夜は緊張で眠れなかった。


けど、次の日の朝礼で俺は驚きと困惑と苦しさで一杯になった。

俺の小学校に転入生として逢が来たのだ。



「百目鬼 逢です。よろしくお願いします」



足元が真っ暗になった。

俺の力を知らない唯一の子だったのに…友達になれると思ったのに。


変なモノが見えると知ったらまた皆のように離れていってしまう。

俺は泣きたい気持ちを必死で我慢した。



逢は凄く綺麗な子で勉強も運動も完璧で、すぐに学校の人気者になった。


同学年の男子達とは違って大人っぽくて少し近寄り難い雰囲気を出しているのが格好良いと女子達は騒いでいた。


公園で話せていた子が急に遠くに行ったように感じた俺は公園にも行かなくなってしまった。


そして、逢が転入して来て一ヶ月が経った頃に俺にまた逢と話せるチャンスがきた。


クラスの女子に掃除当番を押し付けられ、帰りが遅くなった俺に担任から家が近いという理由で学校を休んだ逢にプリントを届けて欲しいと頼まれたのだ。


周りに生徒はもう誰もいなくて、凄く緊張したけど逢ともう一度話せると思った俺は走って逢の家へ向かった。


でも、そこは日本を代表するような大きすぎる門構えの家でインターホンを鳴らして出てきた人は物凄く厳つい男の人だった。



(逢君って何者…?!どっかのボス?!)



クラスの女子達がどこかの国の王子様やら秘密結社のスパイやら、好き勝手話しているのが実は本当な気がしてならなかった。


そして、厳つい男の人に案内された広過ぎる家の奥にあった池の所に逢は座っていた。



(…?何か話してる?)



不思議に思いながらも話し掛けようとした時、池から逢の方に伸びる黒いモヤを見てしまった俺は咄嗟に逢の腕を引っ張ってモヤから引き離した。



「逢君、大丈夫?!い、今!池から黒いモヤが出てて!それでっ」

「天宮?…つか、モヤって何?」

「あ…っ!!」



クラスの子達が俺の事を逢に話しているのは知っていた。けど、今の行動で俺は完全に変な事を言う奴だと逢に思われてしまった。


そう考えると、いつの間にか俺の目からは涙がボロボロと溢れ落ちていた。



「っ、嫌わ、ないで…!あ、逢君だけには、き、嫌われ、たくっない、んだ…!ひぐっ…うっ」

「落ち着け天宮。さっき言った黒いモヤって…もしかして、お前ってこれが見えんのか?」

「……ひっ、くっ、…え?」



俺の涙を逢が自分の服の袖で拭いてくれる優しさにも驚いたが、何より驚いたのが逢が何食わぬ顔で膝に黒いモヤを乗せていたのだ。


驚き過ぎて涙がすぐに引っ込んだ。



「あ、逢君も黒いモヤ…見えるの…?」

「俺はモヤじゃなくて普通に見える。ちなみにコイツは濡れ女っていう妖怪な」

「えぇ?!よ、妖怪?!」

「おう」



黒いモヤを見ると、さっきよりも動いていて何故だか喜んでいるように見えた。


妖怪…?この黒いモヤが…?


本でしか見たことのないモノを俺はずっと見ていたのかと思うと信じられなかった。

空想上の生き物だと思ってたのに…本当にいたんだ。


少し目線を上げると逢と目が合い、無意識に俺は唾を飲み込んでいた。

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