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あやかし達との宴は如何?  作者: 桜 さつき
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日常の巻【壱】

もう一つの小説と同時連載します!

『あやかし達との宴は如何?』をよろしくお願い致しますm(_ _)m

その日の夕焼けは気味が悪い程に綺麗だったのを今でも覚えている。


オレンジ色に照らされた近所の神社の前で倒れていた男。小さな俺はただ純粋に心配して近寄っただけだった。


足を怪我をして歩けないと言ってる奴をそのまま放ってはおけないだろ?



「君はとても優しいね。そうだ…お礼に私の力を少しあげよう」

「ちから?」

「特別な力さ。いつかまた君を探せる目印にもなるしね」

「あんたは…だれ?」

「私?私はーー…」



それがこんな事になるなんて。

俺が選択をミスったのは明らかな事実だった。








「………あー久しぶりに嫌な顔思い出しちまった」



ムクリと布団から体を起こして、頭を掻く。


朝を爽やかに迎えたい派の俺にとって、朝イチであの夢は胃がムカムカするしかない最悪の始まりになった。


あれは俺が五歳の頃の出来事。

この出来事がきっかけで俺の人生が変わってしまったのは確かだった。



『お嬢ー!腹が減ったッスー!』

『ワシも腹が減ったぞ』


「あーはいはい…分かったから、もう少し待ってろ…」



朝のボーッとする頭で制服をゆっくり着ながら、外にある池と木の上にいるであろう奴らと話をする。


着替え終わり襖を開けると案の定、二匹の「あやかし」達が目をキラキラさせていた。

もう一度言おう。二匹の「あやかし」が、だ。



(はぁ…アイツら完璧に住み着いちまった…。)



助けた男からお礼に貰ったのは「あやかしを見る力」だった。


「あやかし」とは古くから日本に伝わる妖怪や魔物の類い。例を挙げれば、雪女とか座敷童子とかが有名だろう。



『お嬢…俺は腹が減り過ぎて干からびちゃいそうッス…』

『お前は修行が足りん』

『何の修行ッスか…』



池で腹が減ったと喚いているのが【河童(カッパ)】の茶茶(チャチャ)

木の上にいるのが【猫又(ネコマタ)】の黒杜(クロト)


二ヶ月くらい前から俺の家に出入りするようになって、今では何故か住人になった二匹。



見慣れた光景に溜め息を溢し、後ろ手で襖を閉めて皆が集まる大広間へと歩き出した。

その後をついてくる茶茶と黒杜。


二匹のサイズは小河童と成人並みの猫の大きさとで、黒杜の方が大きい。

こうして移動の時は茶茶は黒杜の背中に乗っている。

これが猫と兎とかだったら当たり前の光景なんだけどな…。




「はよ…皆」

「「「おはようごぜぇやす!若!!」」」


『相変わらず凄い迫力ッスね~』

『ワシらも負けておれんな』




広過ぎる大広間に三十人は軽く超える強面の奴らがズラリと並ぶ。その一番端の全体を見渡せる席に俺も座った。


もう気付いているかもしれないけど…俺んちは普通の一般家庭ではない。


関東最大勢力を誇る江戸時代から続く極道一家。



百目鬼(ドウメキ)組」



それが俺、百目鬼(ドウメキ) (アイ)の家だ。


ちなみに俺はそこの四代目次期当主でもある。



小さい頃から武術というものは全て叩き込まれてきたし、何事にも動じないようにと日頃から言われ続けてきた。


だから大抵の事じゃ何の反応もしない俺。


だが、そんな俺でも戸惑ったのがこの隣で組員達の飯を狙う二匹…「あやかし」達の存在だった。

あの男を助けた次の日から誰もいない筈の場所で声が聞こえたり、急に道で転んだり、髪を引っ張られたりと散々な目に遭う事になった。


終いには、顔見知りの「あやかし」まで出来た。



「おはよう逢。良く眠れた?」

「朝から疲れた顔してるじゃないか…どうした?」

「大丈夫だよ母さん、父さん。少し不快な夢を見ただけだから」


『おはようッス!お母様、今日も綺麗ッスね!』

『父上も中々の風格である』



母さんの膝に座る茶茶と黒杜の頭を叩きたい衝動を抑え、両親達に挨拶をする。


勿論、母さんと父さんには二匹の姿は見えていない。が、見える俺からしたらかなり心臓に悪い。

現に母さんは膝元を気にし出しているしな。



「…何故かさっきから膝が重いのよね。歳かしら?」

「何ぃ?!すぐに医者を呼べ!妻が心配だ!」

「「承知しやした!!」」

「大丈夫だから。父さんは慌て過ぎだし、皆も落ち着け」



ペイッと誰にも気付かれないように母さんの膝の上にいる二匹を回収すると、「あら、軽くなったわ」と不思議がっている母さんに皆は安心した様子だ。

母さんラブな父さんは本当に医者を呼びかねない。


二匹を睨むと流石に悪いと思ったのか慌てて謝ってきた。




「それにしても…若は本当に制服が似合いますね!」

「着物姿も(カシラ)の若い頃にソックリで、正しく美形ってやつですねぃ?!」

「私は女の子の制服も似合うと思うのよね」

「逢は何でも似合うだろう。ね?ママ?」

「ふふっ、そうねパパ」



そう言われて俺は自分の制服に目線を移した。

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