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僕らの“仮定”恋愛劇  作者: 高橋 香織
僕らの“かもしれない”告白
1/3

開幕

 放課後、人気のない校舎裏。そこにいるのは僕と、僕を呼び出した張本人のみ。生まれて初めてのシチュエーションに柄にもなく動揺した。

 呼び出し相手が男なら恐喝の疑いがあったものの、目の前にいるのは女子。しかもクラスメイト。そんな物騒な言葉を最も発しなさそうな子だったため、僕は比較的落ち着いて呼び出されていた。

 とはいえ。冷静になって目の前の相手を見るが、どうにも違和感が拭えない。

 彼女の名前は藤原(ふじわら)花苗(かなえ)。顔立ちは平凡だけれどいつでも冷静で、人付き合いは狭いが、別に周囲から嫌われているわけでもない僕のクラスメイトだ。長い髪は艶やかで、手入れされているのがよくわかる。

 そんな彼女と僕の関係は正真正銘ただのクラスメイト。用がなければ言葉も交わさない程度のクラスメイトだ。

 なのになぜ、僕は彼女に放課後突然声をかけられ、今ここにいるのだろう。不思議だった。

 僕はよく告白されるような美男子じゃないし、どちらかというと存在感のないタイプだと自分では思っている。制服の学ランが良く似合うと言われるような高校生らしい平凡な顔で、細い黒フレームの眼鏡。髪型だって平凡で、人の目に留まるような特徴なんてどこにもない。

 疑問が尽きないような現状で、僕を引っ張ってここまで連れてきた藤原さんは僕に構わずどこかを見ている。向かい合っているからには何かを言うつもりなのだろうけれど、だからって五分くらいは待たされている。早く切り出してほしいなと思っていたところで、突然彼女が視線を合わせてきて驚いた。

 彼女は眠たそうな表情だ。これはいつものことなので気にすることもないが、今この時する顔でもない気がした。今にも眠ってしまいそうな長い瞬きを一回二回三回……見てるこちらまで眠くなる。

「あの」

 だから、突然かかった声は微温湯に浸っていたところに冷水を差し込まれたようだった。途端に目が覚め藤原さんの口元に目が行く。校則で定められているから当然だけど、化粧っけのない顔だなと悪気なく思った。

 そうやってどうでもいい事ばかり考えながら、彼女の次の言葉を待った。そしてその言葉は僕を硬直状態に陥らせる。

「――好き“かもしれない”ので、付き合って貰えませんか?」

 僕の映えある人生初の告白劇は、そんな一言から始まった。

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