March 1小節目
窓からの光が嫌になるほど眩しい。
太陽の光って意外と白く見えるもんなんだなあ。
この部屋の中の様子みたいに。
部屋一面、病室一面が、白の世界に満たされて、あたかも僕だけが色として取り残された気分だった。
陸上選手のホープとして期待されていた存在だったのに、どうして僕はここにいなければならないんだろう。この部屋にいればいるほど、焦りのせいで自分が自分でなくなってしまうような気さえしてしまう。僕はもう夢を諦めないといけないのか。いや、絶対に諦めたくない。僕はこの部屋のように、真っ白な無の世界で、じんわりと存在を滲ませて消えていくしかないのだろうか。
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私がこの学校の桜の門を通るのは2年目。ついに私が後輩からの憧れの視線を向けられる、そんな時がやってきたんだ。
私の名前は菊池聖奈。吹奏楽部の高校2年生で、トランペットを担当している。トランペットを始めたのは中学生から。それまでスポーツや遊びしか興味が無かった私を惹きつけたのは、全ての音を切り裂いて私の胸に飛び込んできたトランペットの音だった。
それをきっかけとして、私は吹奏楽部の一員となり、トランペットを必死に練習する日々が続いた。中学生の時のコンクールは部員が少なかったので、少人数で行うコンクール、いわゆるB部門に参加していた。結果としては3年連続地区大会で銀賞という、自慢できない成績だった。それでももっと上達したいと思った私は、自宅に近く、大人数で挑むコンクール、いわゆるA部門のコンクールで県大会金賞を毎年受賞できるレベルのここ、城島高校に進学しようと決意した。もちろん、城島高校は県内では進学校の部類だったので、勉強はしたが、家から近くてトランペットがたくさん練習できる環境はとても良かった。
高校初めてのコンクールは、地区大会を突破したが、県大会では金賞を受賞したものの、西関東大会には進めない「ダメ金」だった。私はたくさん練習してきたのに、他の高校に一歩届かなかったことにひどく落ち込んだが、当時の3年生は、これが普通だと言わんばかりに、平静を保っていた。私はもう来年はこんな悔しい思いしたくないと思ったし、こんな3年生みたいに悔しいはずの結果を当たり前の運命だとも思いたくなかった。