悪役令嬢ですが、勇者召喚されましたの
ふと思い立って書いた作品です。
流行りの悪役令嬢モノを書きたくなった筈なのにドウシテコウナッタ?
本日、ミステリ王国の王城で行われている夜会は現在進行形で混沌とかしていました。
なぜなら
「エイリアス=ヴォーパルロード公爵令嬢、今をもって貴方との婚約を解消させて貰う!」
私は自慢の翡翠色の長髪を後ろへと梳いて手に持った扇子で口元を隠すとクスリと笑った。
私の前に立ちこちらを指差して怒鳴り散らしているのはこの国の第一王子のアレックス殿下、その後ろには殿下の取り巻きたちが私を逃すまいと睨んでいました。
騎士団長の御子息のウリアム様、宰相の御子息のロイド様、そして私の弟の侯爵家長男のオーラル。
そして、その取り巻きたちに守られるような位置にいるのは彼らを落として得意顔を隠そうともしないフローラ男爵令嬢。
「笑止ですわ」
「なんだと⁉︎」
ああ、本当にお馬鹿な殿方だこと。この私がそこのヒロイン気どりのアバズレの対策をしていない訳がないでしょう。
この乙女ゲームとやらの記憶を持った私の前世が役に立ちましたわ。だから、私が言うセリフは決まっていますの。
「そんなもの当然……」
そこまで言ったところで私の真下の床が光りだし全てが見えなくなり次に見えるようになった時には
「勇者様!我が国をお救いください!」
「…お断りですわ!……ってえ?」
「そんな⁉︎」
見知らぬ場所で指をさして決めポーズをとった私が、大勢の騎士に囲まれていました。
これは、一体どういうことですの?
「………というわけなのです」
「ふむ、大体は理解いたしましたわ」
どうやら私はミステリ王国から異なる世界、つまるところの異世界に召喚されたようですの。
それにしても召喚術とは随分と古臭い技術を使ったものですのね。
「それでは、先ほど言った通りに陛下と謁見して頂きます」
「ええ、構いませんわ」
「陛下!勇者様をお連れしました!」
扉が開かれ、謁見の間に入ると大勢の貴族らしき人物たちと、騎士や宮廷魔術師の姿が。そして、奥の玉座には肥え太った油まみれの豚のような男が座っていました。これは、ダメなパターンかも知れませんわね。
「良く来た勇者よ。この国の為に魔王と戦ってもらえるか?」
豚が私に話しかけてきます。ヒッ⁉︎私の胸や臀部を舐め回すようにして見て鳥肌が立ちましたわ。気持ち悪いです。もう、この返事は決まっておりますわ。
「当然、お断りしますわ」
「なんだと⁉︎」
豚や周りの貴族(見た目が豚と同じ)たちが私を急に批難し始めました。まあ、なんて醜く低脳な輩たちなのでしょう。
「お黙りなさい」
シィーン……
私が少し魔力を流しながら威圧すると豚たちは皆黙りました。流石私ですの。
「無能な貴方たちに教えて差し上げましょう。私はミステリ王国ヴォーパルロード公爵家令嬢、エイリアス=ヴォーパルロード。この私に対して勝手に誘拐まがいの事をしておいてタダで済むと思わないことですわね!」
私がそう言うと、暫くして豚たちが急に笑い始めました。
「ふははははっ!エイリアス公爵令嬢、この世界には君のいた国など無いのだよ?君のような小娘1人に何ができると言うのだね?はははははははっ!」
ふむ、つまりこの豚たちは私が何も出来ないからと勘違いをしていらっしゃるのね?では、格の違いというものを見せてあげましょう。
「私が何も出来ないと言うのは大間違いですわ」
「ならばやってみれば良かろう。できるものならな」
「ええ、やりますわ。空間接続、座標【ミステリ王国王城】、空間門、開門ですわ!」
ビキッバキバキバキバキッ!!!
「なあっ⁉︎」
『エイリアス令嬢!』
「お久しぶりですわ、皆様」
私がやったことは至極単純。私が元々いた世界に普通にいつも通り門を繋げただけ。
これは別に私が特別とかではなく、我が国の宮廷魔術師なら即時発動は無理でも3日もあれば余裕で使える術式ですの。
そうして開けた門から出てくるのは我が国の騎士、騎士、騎士。側に走ってきた私付きの侍従のレナが言うには私が急に消えたので救出隊を国王陛下が急遽編成したらしいですわ。あら?よく見たら国王陛下も騎士と一緒にこちらの世界に来ましたわ。
「なっなっなっなっ⁉︎」
未だに混乱の極みにいる豚に国王陛下が近衛騎士を引き連れて近づいております。何か面白いことが起こりそうですの。
「おい」
「ひぃっ⁉︎」
あら、国王陛下が本気で怒っていますわ。豚は怯えきって脂汗が凄いですわね。あ、国王陛下が豚の胸ぐらを掴んで持ち上げました。流石ですわ。
「我が国の宝とも言えるエイリアス公爵令嬢を誘拐したという事は覚悟が出来ているんだろうなぁ?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「謝って済む問題じゃあないだろう?」
「陛下、その辺で」
もう少し見ていたかったのですが、私も言わせていただきたいことがありますので止めさせて頂きます。私のことですので止めても不敬罪にはなりませんよね?
「エイリアス公爵令嬢、何かあったか?」
「ええ、少し申し上げたいことがございますの」
「ふむ、ならばその前に」
陛下がチョイチョイとこっちに来いというジェスチャーをしています。なんでしょうか?
え?あらあら、それはよろしいですね。わかりましたわ、言わせていただきます。
陛下とコソコソ話をして私は豚に向き直ります。
カツカツとヒールの音を立てて豚に近づくたびに豚は脂汗を垂れ流しています。
ガッ!
「ひぃっ⁉︎」
ヒールを豚の顔のすぐ横に突き立て、私は言いますの。
「エイリアス公爵令嬢としてではなく、ミステリ王国特別筆頭魔導師、魔導の女帝エイリアスとして申し上げますわ。私の国に喧嘩を売っておいて無事でいられると思わないことね、戦争ですわ」と
後に歴史学者たちは口を揃えて語る。この時代こそが今までで最も混沌としていたと。