最初
人には誰しも運命の相手がいる。
それは俗にゆう運命の赤い糸で繋がっていてるが、決して目に見えるものではない。
普通の人には。
「あ、結婚式だぁ!私も早く結婚したぁい!」
すれ違った女性の言葉に釣られてそちらを見ると、道路沿いの教会から
祝福する声と共に幸せそうな新郎新婦の姿。
フラワーシャワーを浴びながらゆっくりと階段を降りていく二人のそれぞれの左手の小指に視線を移す。
普通の人には見えない赤い糸。
しかし僕の目には、赤い糸が絡みつき何処かへと伸びているのが見えてしまった。
「・・・繋がっていない・・・」
あんなに幸せそうに寄り添っているのに、二人は運命の赤い糸で繋がっていない。
僕は物心つく頃から、人々の左手の小指に絡みつく赤い糸が見えていた。
最初は皆見えているものだと思っていたソレの話しを母親にした時は気でも触れたのかと
病院に連れて行かれ、化物でも見るかのような視線を送られた。
父親は僕のことを気味が悪いと言い、離れに住むよう命ぜられた。
人と違うことがこんなにも罪深いのかと、最初は絶望し涙する毎日。
しかし慣れとは怖いもので、日常となってしまえばそれほど気になるものでもなく
両親と接しなければ苦ではないし、見えることを誰にも伝えなければ難なく生活することが出来た。
赤い糸が繋がっていない夫婦、カップル。最初は見るのも辛い気持ちになったが今では何とも思わなくなり、世の中運命の相手と寄り添えることの方が奇跡なのだと知った。
ふと自分の小指に視線を落とす。
赤い糸が絡みつくのは見えても、どこに伸びているのかはぼやけて見えない。
どうやら自分の糸は見えないらしい。
まぁ見えた所でどうすることもしないと思うけど。
きっと僕はこうやって死ぬまで一人で生きていくんだろう、漠然とそう思いながら参考書に視線を落とした。
歩きながら本を読むなんて危ないと思いつつ、人が視界に入らないので赤い糸も見なくて済む。
視野いっぱいに広がる赤い糸。いつか見えなくなる日が来るのだろうか・・・。
そんなことを思いながら今日も一人帰路につく。