無色花
記憶の中に残るこの物語
今この景色を見ながら思い出す
暖炉の前に座りながらこの物語を話そう
この冷たく、優しいお話しを...
嘗て神は世界を作った
そしてその世界に色彩を与えた
だが雪にそれを与えるのを忘れてしまった
雪は問う様々な物に
紅く力強く燃える炎に
蒼く静かに流れる川に
豊かな緑の木々に
だがそのどれもが拒絶した
曰く
冷たき物に暑く滾るこの色は映えぬと
命を奪うその冷たさは育むこの色は不釣合いだと
木々を凍らせるその身にこの色は相応しくないと
彼らは言う
雪を溶かそうと其の舌を伸ばしながら
その水圧で雪を押し流そうとしながら
腐った葉で雪を押しつぶそうとしながら
雪は嘆くその冷たき身で
雪は怨む色を付け忘れた神を
雪は怒る総てに対し
独りとなり孤独に震える
其れを遠くから見つめるは天使
その身を翻しある花の元へ行く
其れは小さき白き花
儚く健気に咲く花
天使の話聞き終えた花
雪を呼んでくれと天使に頼む
この身の色で良ければと
彼の者に分け与えると伝えてくれと
巡り合う雪と花
花の慰めに心を落ち着かせた雪
希望となったその花を
冬の寒さから護ると誓う
雪は問う何か礼は出来ぬかと
花は言うもう充分だと
それでも食い下がる雪に一つ望みを言う
今だ名を持たぬその身に名を与えてくれぬかと
これは雪とある花のお話し
雪の中を探してごらん?
護るように寄り添うように
小さき白い花が咲いているだろうから...
いわずもながこの花はスノードロップです
ちなみにタイトルの花は雪のもう一つの名称ともかけてます
感想お待ちしております(ペコリ)