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新世界 2

「な、なんだよ、おまっ……男っ(ry」


「えっ? あれ」


 前作で知り合いイチャついてた中学生女子が実妹であった兄と、前作で知り合い恋人気分でイチャイチャしていた男子高校生が実兄だった妹が取ったリアクションと似たようなことが、先ほどまで周囲のあちらこちらでイチャついていたカップルたちの間にも起こっていた。


 その光景はまさにカオス。


「げっ! アギト君ってまさかお兄ちゃんだったの?」


「げっ! アキって、お前だったのかよ」


 気が付くとカスタマイズしたはずの容姿は、リアルでの姿そのものに変わっていた。


 ぽかーんっと口を半開きにして、見詰め合う前作でカップル登録をし知らなかったとはいえ、いろいろやらかした兄妹の姿が恋人たちの憩いの場所に相応しい美しい噴水の前で顔を見合わせた。


「きゃぁぁぁーっ! 前のVRMMORPGでラブラブ♡ イチャイチャ♡ していた恋人のアギト君に再会してみれば、まさかの実兄っ! なんかもうなんかもう黒歴史過ぎて笑えないっ。あっ涙出てきた」


 涙目になって妹が睨み付けてきた。


「マジ惚れしたアギト君なら強いし優しいしカッコイイし疑似体験だしいいかなぁーって倫理観念監視システム(EMS)解除して、あたしたちチューしちゃってるし、いろいろイケナイこともしちゃってるよね? ゲーム内とはいえ仮想世界とはいえ、前のだって食べ物の味とかオブジェクトの木や草なんかの物に触れた感触とかあったよね? まさか実のお兄ちゃんにおっぱい揉まれてたなんて、おっぱいの感触を堪能させてたなんて、し、しかも……うんぐっ――え、えええ、えっt(ry……までしちゃってるし、……カオスだ。もう死にたい」 。・゜・(ノД`)・゜・。


 妹よ。もうなに言うな俺にだって黒歴史なんだから。


 やっちまったことも過ぎ去ってしまった過去も、もう書き換えられない事実なんだから諦めろ。


「お兄ちゃんは諦めが良過ぎるっ」


 兄妹が図らずも自前で起こしてしまったサプライズイベントの方が余りにも衝撃過ぎて、先刻告げられたデスゲームのことをうっかり忘れるところだった。


 衝撃的ではあっても、急過ぎて事態を呑み込めてないっていうのが本音だ。


 周囲も同じでデスゲームを告げられた直後は流石にパニックに陥ったりしている者もいたが、事の外パニックは少ない。


 今は俺たち兄妹が得た衝撃に似たことの方が、まだ自身で体験していない、目に見えて体感していない恐怖や不安より、突如目に見えて目の前に現れた衝撃に驚き戸惑っている者の方が多い。


 だってイチャイチャ乳繰り合っていたのが同姓で、しかも萌え要素たっぷりの可愛らしい容姿をした女の子が急に男の姿になってたんだぜ?


 しかも初期状態から用意されてた可愛いファンタジックな衣装やファンシーな衣装とかミ二スカートとか、中には露出度の高いエロい衣装とか着ているデブやらガリやらおっさんやら、中にはまぁ中性的な男の娘とかもいるけど、女装男が突然、無数に湧いたんだぜ?


 俺なんて妹(待ち合わせしていたのが妹とは知らなかったけど)が来るのを待っている間、目の前のベンチに座ってたバカップルの女子がミニスカートで、イチャイチャ乳繰り合ってキャッキャとじゃれるたびにパンチラするもんだから嫌でも目に入っちゃってガン見しちゃったよ。


 もうエロいパンツ履いてるもんだから、危うく俺のバベルの塔が地上に姿を現すところだった。


 見た目は可愛らしい女の子でも実はネカマ男の股間を覆うパンティーに反応するという俺の男としての尊厳を揺るがす人生最大の危機だった。


 まぁ実際はピサの斜塔くらいまで反応してたけど。

 

 ああ~仮想世界の衣装もバリエーション豊富になったなぁ~、あんなエロい下着も用意されてんだなぁ~、電化品って日進月歩なんだなぁ~とか感慨に耽っていたら、ついさっきまで可愛らしい女子だったのが突然、目の前で男になって、そいつのパンツ見て半ば反応しちゃったんだぜ。カオスだろ~? 


 まぁVRMMORPGなんてする女の子は実際には少ないんだよ。


 このゲームは比較的女の子向けのイベントやイケメンNPC相手に擬似恋愛する乙ゲー要素のイベントやサブゲームがリアルに体験できるって売りもあって、見渡した限りでは従来より多いみたいだけど、所詮ネトゲ世界の女子の大半はネカマなんだって。


 実際知らないからそれでもよかったし気にもしてなかったけど、こう現実に見てしまうと……。


 オエッ。


 知らぬが仏、知ればカオス過ぎてある意味、デスゲームを生き抜くより生きるのが辛い。


 なにこの地獄絵図。


 俺はまだ目の前に現れたのが妹で良かったと感じてるぜ? 生物学的にはこんなのでも一応は雌だし。


「雌って言うなっこんなのって言うなっ! いくないっいくないっ全然いくないっ。ゲームの中だけど疑似体験だけどお兄ちゃんにおっぱい揉まれた感触を思い出しちゃってる哀れな中学生女子の妹の心境をもっと知るべきだっ! あの時の感覚思い出してあたし鬱入っちゃってるんだからねっ! ヤバっいろいろ思い出してきたっ! もうお兄ちゃん妹のおっぱい触り過ぎ」><


 失礼なことを言うなっ、お兄ちゃんが触り過ぎたのは妹のおっぱいだけじゃないっ。


「おまわりさ~んっ! この人ですっ」


「待て待て待て待てぇ~いっ! あのな? だから今日までアキがお前だったなんて知らなかったんだって。擬似世界での擬似行為だとしても知っていたら、お前のお兄ちゃんは実妹とイチャイチャなんてしていないっ。アバターに自己投影して非現実を体験するはずのゲームが感覚や感触までリアルに近づき過ぎた結果、仮想世界に生まれた新たな悲劇なんだよこれは。絶対に現実世界で実妹なんかとせっくすなんかするかっ」


「せっ(ry――にゃっにゃっにゃっ……。にゃに言ってんの? あ、あたしだって知っていたら擬似でだって実兄となんかとやるもんかっ! もうヤダこの変態鬼いちゃん……。あっまた鬱入ってきちゃった」


 おまぇ~誰が鬼いちゃんじゃ! お兄ちゃんだっ。


 なぁ妹よ、半狂乱で泣きじゃくってるけど、お前だって結構甘えてきたじゃねーかよ?


「アギト君、だいしゅき♡」とか「きもちーよ♡きもちーよ♡」とか「らめぇ~、そこよわいのっ、そんなとこ、いじめちゃらめぇ~、そ、そんなにいっぺんにされたらぁぁ~、あたしぃぃ~きゅるぅ、きちゃぅぅ~、いっちゃぅぅ~」って蕩けた顔してエロボイス出してたじゃねぇーかよ。


 俺なんか鬱入ってきたどころの騒ぎじゃねぇーぞ、実妹のエロボイスとおっぱいその他もろもろを思い出しちまって、リアルタイムでバベルの塔が鬱〔ぱきゅ~ん〕しちゃってるんだ。


 知らずとはいえ気づけなかったとはいえ擬似だろうとはいえ、実妹とせっくすしてしまった俺は、お前のお兄ちゃんは、兄として人間として霊長類として社会的に死んだも同然なんだよ。


「ぎゃぁぁぁーーーーっ、もう言うなっそれ以上言うなっ! いたいけな中学生女子を辱めるなっ! てかもう死ねよバカ兄ぃ」


「っつーかさ? お前ってリアルでもあんなにエロいの? 疑似体験とはいえ俺とやってたとき反応良かったよなお前? まさか現実でもおまっおまえっまさか中学生にしてもう――」


「わぁわぁわぁわぁ、ぅんなわけねぇーだろバカ兄ぃ! 処女だよ処女っ、まだ失ってねぇーよリアルではっ……あっもうヤダっこのお兄ちゃん」


 これから始まる、いや既に始まったデスゲームのことなんかすっかりこっきり忘れて恥ずかしい黒歴史に半狂乱になっている妹の手を取った。


「さわるなキモいっ。近親相姦上等変態バカ兄ぃ。死ねばいいのに」


「アキ、まぁ落ち着けってゲーム内とはいえ知らなかったとはいえ、過去の自分をぶん殴ってやりたい気持ちは俺も同じだ。俺だってVR擬似体験だとしても妹と乳繰り合って、お前が蕩け顔で喘ぐ姿に興奮して、猿の如くやっちまったなんて正直死にてぇー気分だ」


「な、ななな、なっ……しれっとあたしの恥ずかしい姿を回想してんじゃねぇーよ! 死にてぇー気分ってなんだよ、あ”あ”っ? そこはネカマじゃなくて良かったとか、不細工な他人より可愛い妹で良かったとか言えよっバカっ」


 そりゃまぁお前は確かにお兄ちゃんの俺から見てもぶっちゃけ可愛いと思うぞ?


 もし今日明らかになった驚愕の事実が、お前の前作に置ける擬似恋愛や擬似えっちの相手が俺ではなくて他の野郎だったとしたら、お前のお兄ちゃんはこのゲームに置ける技と技術と知識と戦闘スキルの全戦闘力を持って、お前にちょっかい出した野郎や手篭めにし、お前の擬似肉体を通り過ぎて行った相手を全員PKプレイヤーキルモードを発動し排除する自信がある。


「ぎゃぁぁぁーーーーぎゃぁぁぁーーーーぎゃぁぁぁーーーーっ! シスコン発言きめぇ~! 寄るな触るな息すんなっ子供が出来るっ。でも……可愛いってほんと? お兄ちゃん」


「うん。ぶっちゃけて言うがお前は可愛い。○ード○ート・オンラインに出てくるシリ○ちゃんに似ていてめっちゃ可愛い。ちなみに俺はア○ナちゃんの方が好みではあるけども、妹キャラ属性のシリ○ちゃんと普段のお前が被り過ぎててちょー可愛いと思ってたんだ」


「えへへへ♡ あ、ありがと……お兄ちゃん。あたしもぶっちゃけ、シリ○ちゃん可愛いなぁ~って思ってて、現実のあたしのメイクもゲームのここでのあたしをカスタマイズしてるときもシリ○ちゃんに似せたんだよね」


「まぁそれはいいけど、今はそんなこと気にしている場合じゃねぇーだろ? 本当か嘘かは分らないけど、実際にログアウト出来ないんだ。これからこのデスゲームで生き残ることを考えようぜ。兄妹なんだから力合わせて生き抜いていこうぜ、な?」


「……うん、そだね」


 涙を拭った妹はいきなり現実に戻されたって感じで顔を上げ、俺の言葉に頷いた妹の手を引っ張って、俺は考えていた行動に移すことにした。


 既に同じことを考えて動き出している奴らもいるはずだ。


 恐らくはまだ16000人ものプレイヤーの多くは、まだこの街に留まっているはずだ。本来の仕様は所詮ゲームと言っても、限りはあるソースの奪い合いになる。


 このままここに留まれば近場の狩場は狩り尽くされ、次にリポップアップされてくるモンスターを血眼になって探し奪い合うことになる。


 フィールド全体に広がれば別の話だが、一度に周辺だけの狩場に16000人も集まればあっという間に狩り尽くされる。


 なら他の狩場に今の段階で移動し効率の良い狩場でスタートダッシュをかけ、今の内から他者よりアドバンテージを得ておいた方がいい、と考えた。


 幸い俺は1年間もの間βテストに参加していた。


 その知識と経験を生かして、この世界を生き抜いてやる。


 とはいえ、ランダムに弄られた俺の初期設定値は妹や近くで確認していた奴らで見せ合った数値より遥かに厳しいものだった。


 弄られていても見せ合った限りでの平均HP最大値は72。しかし俺のHP最大値は9。正直最悪といってもいい。


 これで次の街まで行けるかは分らないけど、異常に高かったラッキーステータスと麻痺、毒耐性ステータスに賭けるしかない。


 どちらもスタート時点で余り効果的ではない異常なまでに高いステータスには何らかのメリットがあると信じたい。


 特にラッキーには期待したいものだ。


 幸運が続けば最悪危険なモンスターに出くわしても離脱できる確立は高い。


 それに俺はまだツイてる。


 悪夢の再会いではあったが、待ち合わせていたのは俺の妹だった。


 前作やβテストで知り合った者たちもこのゲーム内を探せばいるとは思うが、幾ら仲が良いと言っても所詮は他人。


 あと暫く時間が経った段階でなら別としても今、この段階で生き残りを賭けたこの状況下で、混乱した状況下でまともな判断を下せる人間がどれだけいるのだろう。


 出し抜き出し抜かれる。


 知り合いとはいえ実際の顔も知らないプレイヤーたちより、遥かに信頼の置ける妹に出会えたことは俺たちにとっては幸運だった、運命めいたものさえ感じている。


 運命めいた再会はカオスだったけど。




 To Be Continued

ご拝読アリガタウ。


もうあれです。

作者さん俺得入れ過ぎっ!><

もういろんなところのリミッターが低くなってきちゃってるよ(笑)



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