2-1
*2 欧咲学園
「で、かい、なぁ…」
俺は今、かの有名な欧咲学園の門の前に1人で立っている。
有紀が、一緒に着いて行くっていってたけど、今日は平日で有紀は学校もあるから
1人で大丈夫って言って断った。
ちょっと不満そうな顔してたけど、困ったように笑えば諦めてくれた。
有紀は、俺の両親が死んでから唯一安心出来る2人のうちの1人だ。
後1人は有紀のお兄ちゃんで達樹。俺は「たつにい」って呼んでる。
2人は、4歳のとき俺の家の隣に引っ越してきたんだ。
俺もあの頃は極普通の子供だったから、
2人とはすぐに仲良くなった。
明るくて優しくてかっこいいたつにいと
泣き虫で甘えん坊で可愛い有紀。
有紀は今だからカッコいいけど、小さいときは
本当に可愛かったんだ。
昔は良く3人で近くの公園に行って遊んだな…
それも、両親が死ぬまでだけど…。
両親が死んでから、俺は人と関わるのが怖くなった。
最初は、有紀とたつにいも怖かったんだ。
でも、2人は何回も話しかけてくれて、だんだん大丈夫になってきたんだ。
今では、俺が唯一甘えれる存在。
本当は、学園に行くのも嫌だった。
だって、寮で生活するって事は自然と他の人と関わるという事だから。
今だってうまく人と関われる自信は無いけど、
有紀が言ったから、俺はここに来た。
きっと、有紀が居なければ、俺は壊れていたと思うから--。
なんて考えてるうちにもう時間だ。
「はぁ…。い、くか…」
-?side-
今日も退屈な毎日。
ちびっこい奴らにキャキャー言われて纏わりつかれる。
いつもと、変わらない。
そう思いながらもう少しで始業式の準備が始まるからと
理玖と一緒に体育館を目指し歩いていた。
門の前を横切るとき、門の前に突っ立ってる奴を見つけた。
こんな奴見たこと無い。
小柄で、どこか切なげな表情の黒髪の…男?
女にも見えるが、服装的に男なんだろう。
とても綺麗な顔立ちだ。
そう思って足を止めると、理玖は不思議そうな顔をしたが、
俺の視線の先を見つけると、同じように歩くのを止めた。
何をするでもなく、ただボーッと門を見つめてるソイツを
俺達もボーッと見つめていた。
「はぁ…。い、くか…」
ソイツがはかなげな顔で静かにそういった。
その声は顔に似合い、少し高めの甘みを含んだ、それでいて凛とした声だった。
その瞬間、俺は一瞬で落ちた。
俺は自分で言うのもなんだけど、顔は整っていて、スタイルもいい方だと思う。
今まで、それなりに女遊びもしていた。
この学園は、ゲイとバイが当たり前だが、俺は違う。
列記としたのんけだ。
そう思っていたが、そんなことが嘘のように、俺は一目ぼれしたんだ。
喋ったことも無い、ただ門の前に立ってるのを見かけた奴に、だ。
自分の事ながら唖然としていると、ソイツが門のチャイムを鳴らした。
すると門が開き、ソイツが入ってきた。
あんなところにチャイムがあったとは…。
…待てよ。この学園に関係者以外が入れるわけが無い。
なのに、なぜコイツは入れてるんだ?
「…そういえば、転校生が来るって噂になってたよね。」
理玖がニヤッとしながらそういった。
ああ、コイツが例の転校生か。
今までとは違って、これからの生活は楽しくなりそうだ…
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