(10-2)
「いい加減にしろよっ!!」
俺は、耐え切れなくなってそう怒鳴った。
前にある澪梓の背中がビクッと反応した。
でも、その背中がとても悲しそうで、寂しそうだったので俺は安心させるように、
澪梓の背中をゆっくりと抱きしめた。
「澪梓?大丈夫か?」
そう言って、先ほどの怒鳴り声は感じさせないように、優しく、優しく声を掛けた。
「だい、じょぶ…」
澪梓はそういったけど、全然大丈夫そうじゃない。
それに、澪梓の肩に回した腕に、小さな雫が落ちたから。
「あいつ等の言う事なんて、気にすんな。 俺が守ってやるから。 --だから、泣くな」
そう、澪梓は泣いていた。傷ついたって事だ。
澪梓は、泣いていることに気づいていなかったのか、驚いたように、自分の目に手を持って行った。
「ん、ごめ、ん。だいじょぶ。 ありがと、有紀。」
「いや、俺こそごめんな。さっさと止めとけばよかったのに。」
「うう、ん。有紀は、全然悪く、ない…」
いや、俺が悪い。さっさと止めて置けばよかったのだ。
なんて俺はこんな無力なんだ。
泣いたから眠くなったのか、澪梓が腕に掛けてくる体重が段々増えていく。
眠り堕ちる寸前に、
「せん、せ。」
「あ、ああ、何だ。」
「その式、答え… S(2)=4/3…で、す…」
そう、澪梓は黒板の式の答えを呟いた。
暗算したと言うことだ。
その答えを聞いて、田中が悔しそうに
正解を認めた。
俺は、澪梓が眠ったのを確認して、周囲を睨みつけ、澪梓を抱いたまま保健室に向かった。
有紀side 終