9-7
「あっ…、ひどい有紀君っ!僕と拓也を引き離すなんてぇ…」
そういって、莉兎さんは泣き出してしまった。
有紀を見たら、少し困った顔をしながら拓也さんを手で押して莉兎さんと離そうとしていた。
「莉兎ー!」
拓也さんは、有紀の手を払おうとしていたが、それが無理で
悔しそうにもがきながら莉兎さんを呼んでいた
「拓也…!!」
「…お前らなぁ、いい加減にしろ。俺が悪者みたいだろ。」
その通りだ。まるで、何もして無い2人のカップルを悪役が引き離してるように見える。
「有紀が悪いだろ!」
「いや、お前らがクラスの真ん中でイチャイチャしてるほうが悪い。」
「ぅ、ひっく、たくやぁぁ」
莉兎さんはまだ泣いてる。
俺はどうしようかとオロオロした。
泣いている人を泣きやます方法を1つだけ俺は知ってる。そして、覚悟を決めた。
莉兎さんの頭に手を伸ばして、2,3回頭を撫でる。
そして、少し屈んで顔を覗きながら、出来るだけ優しい声で喋りかける
「莉兎さん、だい、じょぶ? 泣かない、で…?」
そういって、少し微笑む。
これは、母さんが俺が泣いていた時よくやってくれたこと。
俺は、母さんがこうすると、必ず泣き止んだ。
それで、昔は泣き虫だった有紀も、こうするとすぐに泣き止んだ。
「…も、う、 だぃじょぉぶ…」
莉兎さんも泣き止んでくれた。
「そぅ。よか、た」
俺はそういって、もう一度微笑んで、莉兎さんの頭を優しく撫で、手を離した。
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