5
*5 贅沢
ピピピピ
「…ふぁ、よく寝た……」
昨日、有紀と会って落ち着いたおかげか、安定剤のおかげか、
目覚めが良かった。
目覚まし時計を止め、障子ごしに指す太陽の光をぼんやりと見つめ、
障子を開ける。そこは5階なので高い位置からの景色で、
和風造りの部屋とは違い、洋風な寮の庭が見渡せた。
少し頭を掻きながら部屋を出て、リビングに行った。
…、そういえばご飯どしよう。
食堂もあるみたいだけど、人が多いから却下。
コンビニで買うのもアリだけど、人と接触するし…。
だからと言って、食料があるはずも無く。
まあ、朝ぐらい食べなくても大丈夫だろう。
それより、昨日お風呂に入ってないな。
風呂の内装は見たものの、その後眠くなってすぐ寝たし。
それに昨日、嫌な夢を見た所為であの時汗かいてたしな…。
一応、目覚ましは早めにセットしてあるので、風呂に入る時間は十分にある。
ということで、お風呂に入ることにした。
折角だから、湯船にも浸かりたいところだけど
お湯を溜める時間も考えると、登校時間ギリギリになってしまうので
湯船に入るのは諦め、シャワーで我慢することにした。
シャワーだけといえど、やはり広い風呂に入るのと、前の家の狭い風呂に入る気分はずいぶん違う。
俺の部屋は、大理石造りだけど、部屋につき、ヒノキ風呂などもあるらしい。
ヒノキもいいなー、など思いながら、やっぱり大理石は贅沢すぎるよ。と思った。
たまには贅沢するのも大切だと思うけど、大理石はちょっと…。
庶民の俺にしては贅沢すぎて、戸惑う。
風呂のみじゃなくて、大体からしてこの学園はお金を使いすぎと思う。
城が3つもあるってどうなんだろう。
それに、生徒会専用室はなくて良いと思うし、
建物自体が無駄に大きいし、カードシステムとかも、無駄に画期的すぎる。
此処に住むと価値観がおかしくなりそうだ。
俺は昨日入ったばっかりだけど、この部屋といい、学園の外観といい、寮の庭といい、
凄い事が多すぎて、逆に普通に思えてきた。
俺も馴染むの早すぎとは思うけど、昨日きた俺がこうなんだ。
今までずっと此処ですごしてた人は余計なんだろうな…。
そういえば、有紀も時々学園を抜け出していたと言っても、
やはり学園で過ごしてたには違いない。確かに、有紀は金払いが良かったし…。
贅沢しすぎると価値観も金銭感覚もおかしくなるのかな…
気をつけないと…
5贅沢 終