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2話 屋敷

着いた屋敷は思ったよりもかなり大きかった。

いかにも“由緒ある貴族が住んでいる”感があった。

暗がりでもわかるほど、庭も広いし、各部屋には明かりが灯っている。

デンキ、だろうか。


「何を呆けているの、早く中に入って。」


まだこの広さを堪能したいのに、このお嬢様はすぐ急かしてくる。

まあ、そんな悠長なことを言っている暇がないのも事実。


「お帰りなさいませ。」


メイドと執事たちが一斉に頭を下げる。

思わずビクッとなってしまった。

貴族と関わる仕事に就いていたことはあったが、使用人はやったことがない。

庶民なのだから当たり前だ。

それがこんなに煌びやかなところに連れてこられて改めて我に返る。

本当にこんなところで働けるのだろうか。


「お嬢様、そちらの男性は」


俺のことだと、初老の男性の質問に答えようとした。


「なんだ、その男は。」


広く、大きい階段から太った男性が降りてきた。

柄が悪そうに見えるし、何より怖い。

自分のことを聞かれているとわかっているのに声が出ない。


「この子は私が先ほど拾いました。世話係がこの間体調不良で辞めてしまいましたので、その補充です。」


舐め回されているような目線。

心臓がうるさい。

別に怒られているわけでも、怒鳴られているわけでもないのに、この威圧感はなんだ?

頭を上げることができない。怖い。

どうしよう、どうしよう、どうしよう。


「・・フン。まあ好きにしろ。ただ、そいつが使えない奴場合は即刻クビだ。」


それだけ言うと男は階段を下り別室へと入っていった。

急に呼吸が楽になる。

助かったのか?いや、襲われていたわけでもないけれど。


「そういうわけで、この子は我が家で雇うことにしたから。みんなお願いね。」


お嬢様の一声で、また皆が頭を一斉に下げる。

というか、“この子”って。

俺の方が年上だと思うんだけれど。


「ところでお嬢様、こちらの男性のお名前は?」

「名前?・・・、貴方、なんてお名前なの?」

「えっ。俺は」

「お嬢様!名前すら聞かなかったのでございますか!?」


初老の男性は頭を抱えているようだ。

そういえば、自分の名前も言っていないし、このお嬢様の名前も知らない。


「俺は、カリストって言います。あの、よろしくお願いしま」

「君は貴族ではないのか。」


初老の男性はまた驚いている。

驚くにしたって、このボロボロの格好を誰が見たって貴族になんか見えないだろうに。


「お嬢様、一体彼をどこで見つけてきたのです?全く、いつもいつも貴方という方は!(クドクドクド)」

「うるさいわね!とりあえず、空いている部屋をあの子が使えるようにして。」


お嬢様は言い返すとそのまま自室?に戻っていった。


初老の男性は咳払いを1つ、その後にすごく怖い顔でこっちを見てきた。

辞めようかな。この職場。


「私の名前はサーブ・ロイヤル。このヴィトレイ家の執事長だ。まあ、お嬢様がお決めになったことだ。もう何も言うまい。・・・彼を部屋まで連れて行ってやってくれ。」


今度は俺が固まってしまった。

“ヴィトレイ家”を知らない人はこの街に存在しないだろう。

400年ほどこの街を治めている侯爵家。

今まで働いてきた場所とは全ての格が違う。


「カリスト君、だよね。君はこっち。ついてきて。」


自分と年の変わらない少年が荷物を持って案内してくれた。

でも、俺はとんでもない所に来てしまったものだと顔面蒼白だった。



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