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1話 運命的な出会い

どこに行っても“役立たず”だと言われてきた。

今回も。


「・・・どうしてあんなミスを犯したんだ?いつもやっていることじゃないか。まったく・・・。」


ここは寂れた街にある飲み屋だ。

大通りからは外れた位置にあり、庶民しか来ないような街、のはずだった。


今日に限って貴族がなぜか来店した。

いつものように接客したにも関わらず、

「注文したものと違う」と口論になった。

俺は受け取ったメモに書かれていた料理を持って行った。それだけなのに。

持っていくと、「これは食べられない、そもそも違う料理だ」と言われ、「注文されたものだ」と口答えしてしまった。

俺も悪い、のかもしれない。


その後、貴族が「こんな店潰したっていいんだぞ!」と脅し、騒ぎを聞きつけたオーナーが謝罪する事態になった。

で、料理を持って行った俺が今怒られている。

店の奥ではメモを渡してきた子が怯えた表情でこっちを見ているけれど何も言いには来ない。


「君さ、前も似たようなミスをしていたじゃないか。今回だって貴族相手にあんな・・。

悪いけど、そういう子はいつまでも雇ってはあげられないよ。」


つまり、クビってことだ。


「申し訳ありません。荷物を取ってきます。」


ここは住み込みで働けるし、ご飯もついてくるし、働く環境はとても良かった。

でも、昼休憩に食べたサンドイッチが最後だったらしい。


「今日は本当に、申し訳ありませんでした。今までありがとうございました。」


店の扉はバタンと閉められた。

外は雪が降っていて、道路は白く様変わりしていた。

深夜だけれど、街灯が雪の光を反射していて明るい。

景色が綺麗になって、それは結構。

でも、荷物はわずか。金はない俺は今日凍え死ぬかもしれない。


さっきまで働いた分の給料は、貴族たちが暴れて壊れた椅子の買い替えとか、その時間店が営業できなくなったから、とかで貰えなかった。


とりあえず、歩く。

安い宿を探す。

でも、探しても探しても手持ちが足りない。

これは本格的に「死」を意識する。


つまらない人生だった。

父親も母親もロクな人じゃなかった。

だから周りが遊んでいる中、働きに出た。

あの人たちはどうでもいい。

でも俺は生きたかった。


最初は今よりは少しいい都会のレストランで。

次は服屋の店員。

そして、馬の世話とか、掃除とか、色々転々と働いた。

ミスはよくやらかした。

でも、その度なんとか次の仕事を紹介してもらっていた。

そんな運のいい事も今回はなかったわけだ。


次の仕事がないということは、今日を生き延びても、いつまで生きていられるかわからない。

紹介なく仕事を探すのは本当に難しい。


大体、今日のミスは俺だけではなかったように思う。

それなのになんで俺はこんな目に合っているのだろう。

なんかムカついてきた。

意味ないし、役に立たないけど。


雪は止むことなく、住んでいるのか住んでないのかわからない家の屋根の下、雪宿りすることにした。

フードを被っていたが、雪が積もっているようだったので雪を払い除けて座る。

今までのことをグルグルと考える。

でも、寒いせいか思考がまとまらない。

いよいよ俺もー。


ガラガラと音が聞こえてきた。

見ると、馬車がこっちに向かってくる。

貴族か。こんな時間まで出歩くなんて。

馬だって寒いだろうに。可哀想だ。


俺はまたイチャモンをつけられたら嫌なので下を向いて縮こまっていた。

馬車の音はだんだん近づき、もうそこまで来ている。

早く行ってくれ、と思っていたのに馬車の音は急に止まった。


扉が開き、誰かが降りてくる。


「ねえ、そこの貴方、そんなところで何しているの。」


声の主は幼い少女のようだ。

周りに人はいないが、話しかけているのは俺じゃないことを祈って黙っていた。

もう懲り懲りだ。貴族と関わるのは。


「無視するなんて、いい度胸じゃない。」


頭の上とフードの間に、人差し指が入って来た。

驚いて固まっていると、被っていたフードが剥がされる。

反射的に上を見ると、黒い傘を刺し、赤くて高そうなドレスを着ている少女が目の前に立っていた。


「す、すみません、俺じゃないと思って。」


とりあえず謝る。


「貴方、こんなところに座っていては邪魔よ。」


道からは離れたとこに座っていたから邪魔というほどではないと思うが、口答えは良くない。

もう一度謝ってから退こうした。


「邪魔だから早く馬車に乗りなさい。」

「えっ・・・・?」


意味のわからない指示。

聞き間違えかもしれない。


「早く乗って、寒いわ。」


少女はそう言うと、馬車に向かって歩く。


「乗れません、馬車が汚れてしまうし、第一、俺みたいな奴を、なんで」


少女のことは知らないし、このままついて行ったら危険な気がした。


「じゃあ、貴方が明日この馬車を掃除すればいいじゃない。それとも、こんな寒い雪の中死んでいくの?」


これは仕事をもらえた、でいいのだろうか。

少女は続けて「まあ行き先があるなら別に構わないけど。」と言ったが、行き先なんてどこにもない。


俺は馬車に乗った。

御者(馬車を運転する人)はかなり戸惑っているようだったが、「靴の泥を払ってから乗ってください」と言ったきりだった。


扉を閉めると、馬車は動き出した。


「これは、どこに向かっているんですか?」


多分年下だけど、一応敬語で聞いてみた。

少女は横目に「屋敷に決まっているじゃない」と答えてくれた。

もっと色々聴きたかったけど顔に鬱陶しいと書いてあったので、それ以上は何も聞けなかった。



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