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愛國戦隊プラマイゼロ

作者: 稀Jr.

スーパー戦隊シリーズが終了とのことなので、愛國戦隊大日本を大学の頃に見たのを思い出す。名前だけ見れば右翼団体のパロディに見えるが、単純にゴレンジャーから続く戦隊ものと仮面ライダーシリーズのパロディである。怪傑ズバットも同時期であるので、それほど政治的な意味あいを持つものではない。ただ、時代的には冷戦ということもあり、アカと言えばソビエト連邦のことを示し、やっぱりアカと言えばゴレンジャーのアカレンジャーのことを示すのであった。

実は、当時の8ミリ映画ではこの手の戦隊ものや仮面ライダーものがいくつかある。ただし、庵野ら DAICON FILM が描く愛國戦隊大日本についていえば、そのパロディが当時においても突き抜けていたことを指摘しておきたい。つまり、さすがに当時は駄目だろうという良識を覆す...というか、お前ら良識というものをどこにやった? という感じで出されていたものなのだ。あぶないよ、さすがにというのもあったか無かったかとい時代で、青年特有の自由さが突き抜けていたのだ。つまり、タブーに挑戦すること自体が面白い時代があって、タブーを破るような政治的な意識はなかった時代である。いや、制作者たちはどうかわからんけど、大学で見ていた頃はそんな評価だった。


さて、いまでこそ、ポリティカル・コレクトネスという言葉が広まり、途中で政治的に正しい童話などもあり、フェミニズムやブラックマター、MeeTo の運動が広がってしまうと、こうした「愛國戦隊大日本」の直接的な表現では笑いをとれなくなってしまう。それはシニカルな笑いなのか嘲笑なのかさげずみなのかは理解しかねるところだが、ちょっと「面白くない」と「炎上」に陥ってしまうのだ。

そこは、心のブレーキを外して「アクセルを踏み間違えてしまいました」と後から平謝りですますべきだろう!


そもそも戦隊ものが何を基本に考えているのかを思い返してみよう。仮面ライダーが改造人間であり、ウルトラマンが宇宙人であるのに対して、スーパー戦隊は正義の味方である。正義の味方というのは悪の枢軸が必ずいるということだ。それに「スーパー」なのだから、何よりも先立つ五人の戦隊というものがあるという訳だ。

「五」という数に読者は何か見覚えはないだろうか。「五感」「五体」「五大陸」「五大湖」「五大栄養素」「五色丼」という形で、五つの何かというのが日本古来より伝わってきたものである。その話の祖先は「五行大儀」と言える。五行とは「木・火・土・金・水」の五つの要素であり、これらが宇宙を構成する基本的な要素であるとする考え方である。これに基づいて、「五常」(仁・義・礼・智・信)、「五倫」(君臣・父子・夫婦・長幼・朋友)、「五徳」(仁・義・礼・智・信)、「五臓」(肝・心・脾・肺・腎)、「五行説」などが生まれた。また、日本の伝統文化にも「五節句」「五穀豊穣」などが根付いている。すべてを五つに分けて無理矢理分類するのが五行大儀の良いところである。

そこにスーパー戦隊の五人が加わわるのである。五人の正義の味方は五人の悪の枢軸と戦う訳だが、果たして、五人の正義の味方のカラーリングをどうしようかということになる。そこで五行の出番だ。色を考えるときに「五行」の考え方を持ち込むのである。「木・火・土・金・水」をそれぞれに戦隊に割り当てるのだ。すると、火は赤、水は青、土は黄、木は緑、ということになる。ゴレンジャーの場合はモモレンジャーということなのだが、ちょっと色を薄くして金はピンクということになるだろう。そこは味方を変えてしまって、金色でもよいし白でもよかったわけである。当時ピンク色にしたのは、まあ大人の事情であろう。

さて、戦隊メンバーに色を割り当てた後は性格を割り当てよう。五人の戦士が、五人とも同じ性格で被っていては困るのである。水戸黄門のように、水戸光圀と助さん格さんというスタイルでもいいのだが、はやり五人ともなるとできるだけ重ならないようにしたいものである。

そこで、次のように考える。


・赤は、火に対応するので情熱的なリーダーシップをとる者、燃え盛る正義

・青は、水に対応するので冷静沈着な知性派、クールな頭脳

・黄は、土に対応するので土壌をとなる明るく元気なムードメーカー

・緑は、木に対応するので自然を愛する心優しき者、成長と調和

・白は、金に対応するので実は蓄積や豊穣という意味となる


モモレンジャーは、紅一点でもあり女性でもあるところから「豊穣」という役割をあえててもいいものの、さては子供番組としてふさわしくないと考えたかどうかわからないが、戦隊ものの男女比というのは大抵は男性4人、女性1人というものだったのだ。

現在までの戦隊ものの比率がどの程度か忘れてしまったが、スーパー戦隊シリーズとは別となる、セーラームーンやプリキュアシリーズなどの女性戦隊ものでは、男女比が逆転している。いやむしろ女性が5人という形となっている。

試しに、セーラームーンに関して言えば、


・赤(火)=セーラーマーズ(情熱的、攻撃的)

・青(水)=セーラーマーキュリー(知性的、冷静)

・黄(土)=セーラーヴィーナス(明るく元気

・緑(木)=セーラージュピター(力強く頼もしい)

・ピンク(金)=セーラームーン(愛と優しさ)


という形になる。実はリーダー役がピンクつまりは白という点で、そこは月の姫ということで白ということになるだろう。

ちなみにプリキュアの場合は、


・黒:キュアブラック(情熱的、リーダー)

・白:キュアホワイト(冷静沈着、知性的)


という二元論からスタートして


・赤:キュアピーチ(愛と優しさ、豊穣)

・青:キュアベリー(知性的、冷静)

・黄:キュアパイン(明るく元気)


という形となっているので、2つあわせれば五色完成といなる。

これは単なる色分けとおもうなかれ、それぞれに五行の性格が割り当ており、その日本神話からの思想が連綿と現在の令和まで続いてきたんである。その由緒正しい日本思想を受け継いできたのがスーパー戦隊ものであり、意図してか知らずか、おそらくも制作側の無意識に割り込んできて色即是空してしまい、ついついはみ出てしまったのが愛国戦隊大日本なのだろう。これはさすがにヤバいと思ったのか、以降のスーパー戦隊とは一線を画して排除されてしまったのである。


しかし、諸君思い出してくれたまえ。聖闘士星矢も五人の黄金聖闘士がいる。

あらためて黄金戦士の見ていくと、


、牡羊座のムウ(金)

・牡牛座のアルデバラン(金)

・双子座のサガ(金)

・蟹座のデスマスク(金)

・獅子座のアイオリア(金)


あ、ええと、すべて金色、つまりは五行の「金」に対応している資本家の属性が満ち溢れ、いや、すみません。言い過ぎました。


【完】


DAICON FILM - 愛國戰隊大日本&メイキング映像 https://www.youtube.com/watch?v=6d8romXBRTg

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