◇書籍1巻◇発売記念SS
リーガル帝国の冬は厳しい。
城内でも廊下や暖炉がない部屋を訪れると、吐いた息が白くなるほどだ。
一方で、ヴァイオレットが生まれ育ったハイアール王国は冬でも比較的温暖な気候だった。
そのため、ヴァイオレットは嫁いできてから初めて迎える冬に、体調を崩してしまっていた。
「シュヴァリエ様、お仕事のお休みをいただいてしまって申し訳ありません……」
自室のベッドに横になり、ヴァイオレットは顎辺りまで毛布を被る。
そして、ベッドの横の椅子に腰掛けているシュヴァリエに対して、申し訳無さげに謝罪を口にした。
「これまでのヴァイオレットの働きのおかげで急ぎの仕事はないから、そんなことは気にしなくて良い」
「けれど……」
「むしろ今まで貴女は頑張り過ぎていたくらいだ。風邪を引いた時くらいは、ゆっくり休んでくれ」
「シュヴァリエ様……。ありがとうございます」
ダッサムの婚約者だった時は、体調不良になろうと国のために彼の仕事を代わりに行わなければいけなかったので、シュヴァリエの優しさは体と心ジーンと沁みる。
熱のせいで頬を真っ赤に染めたヴァイオレットは、ふにゃりとした緩んだ笑顔を見せた。
そんなヴァイオレットに、シュヴァリエは「かわ……」となにかを言いかけて、言葉を噤む。
それからシュヴァリエは直ぐ傍にあった瓶を取り、ヴァイオレットに見せた。
「確認だが、これが風邪薬で合っているか?」
「はい。それですわ……」
手のひらサイズの瓶の中には薄茶色の液体が入っている。
これは以前にヴァイオレットが作った風邪薬で、発熱や倦怠感、発熱による関節痛や筋肉痛などに効果があるものだ。
一年を通して冬は体調を崩す者が多いので、ヴァイオレットが城の者たちのために作っておいたのである。
「そろそろ薬を飲む時間か?」
「はい……」
本当は体がきついが、薬を飲むためには起き上がらなければならない。
ヴァイオレットはそう考えて、ゆっくりと上半身を起こそうとしたのだけれど、直ぐにシュヴァリエから「待て」と命じられた。
「無理に起き上がってはだめだ。薬なら俺が飲ませるから、ヴァイオレットは横になったままでいい」
「……! ま、まさかシュヴァリエ様……」
シュヴァリエの発言になにかを察したヴァイオレットだったが、時既に遅しだった。
シュヴァリエは瓶の蓋を開けて、液体を口に含むと、そのままヴァイオレットへと口付けた。
「ん……っ」
──ゴクン。
ヴァイオレットが無事に飲み込んだことを確認すると、シュヴァリエはそっと唇を離す。
「……っ、もう! シュヴァリエ様……! こんなことをして風邪が移ったらどうするのですか……!」
羞恥と困惑の表情をしているヴァイオレットに対して、シュヴァリエは少し意地悪そうに笑ってみせた。
「俺は体が強いから平気だ。……それに、先に薬を口移しで飲ませてくれたのはヴァイオレットだろう?」
「……っ、いつの話をしているのですか……! それにあれは、人命救助で……っ、あの方法しか無くて……!」
「ああ、そうだな。だが俺も、ヴァイオレットが少しでも早く回復してほしくて薬を飲ませたんだけだ。口移しという方法しか知らなかったんだから、仕方がないだろう?」
「〜〜っ」
コップをゆっくり傾けて飲ませるとか、スプーンを使って飲ませるとか色々と方法はある。
シュヴァリエだって、それを知らないはずはないというのに。
(だめだわ……なんか──)
シュヴァリエの甘い行動に、ヴァイオレットは毛布を頭まですっぽりと被り、自身の顔を隠した。
「……はは、可愛い。早く元気になると良いな」
「〜〜っ」
そんなヴァイオレットの頭を、シュヴァリエは毛布の上から優しくポンポンと叩いてから、部屋を出ていく。
(薬を飲んだのに、絶対熱が上ってる……っ)
毛布の中で、ヴァイオレットはそんな確信を持ったのだった。
皆様のおかけで、書籍化決まりました!ありがとうございます……!
12/28日に角川ビーンズ文庫様より発売になります!
よろしくお願いします!
改稿とっても頑張りました\(^o^)/♡甘さマシマシになっております!
アニメイト様と電子書籍サイト様では特典SSもあるので、是非そちらもよろしくお願いします♡




