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1.私の嫁ぎ先(予定)の国がまたも私の美しさが原因で滅びたようです


「陛下っ!大変です!!!公主様の嫁ぐ予定である国が……清蔡国が従者の裏切りによって滅亡しましたっ!」

「はぁ……またか。ようやく人格者が婚約者になってくれたから今度こそうまく行くと思ったのに。まさか謀反によって滅亡とは……我が娘が美しすぎるせいで嫁ぎ予定の国が次々滅びることになるとは……」

「まあ、お父様。また私の結婚話がなくなってしまったのね……今度こそ結婚できると思ったのに」

「春麗、君には全く非がないのに『美殺』と呼ばれた僕譲りの美しさのせいで結婚もまままならないとは……君を国を滅亡させるほど美しく産んでしまってすまない!美しすぎる父を恨んでくれ!」

「いや、確かに私の美しさはお父様譲りですが、産んだのは亡きお母様です。お父様も混乱されてますのね」

 嫁ぎ先予定が滅んだという側近の報告に皇帝であるお父様は私が婚期に入って何度目かわからない嘆きとため息をついた。

 まさか結婚が決まり、来月嫁ぐ娘と最後に思い出をつくろうと計画しているときにまさかの報告であったであろう。

 他の理由で結婚がなくなる方がまだましと思えるほど、私の今までの婚約は散々だった。

 私、彩光国の公主である春麗は自分でいうのもあれなのだが、世間では絶世の美女と噂されるほどの美しさをもつ15歳の少女である。

 春麗というその名に恥じず誰よりも春が似合うお人形のような美しさをもつ少女だと周りから絶賛されてきた。

……だというのに、現在進行形でこの国では美しくて聡明な公主の嫁ぎ先が決まらぬことが最大の問題だった。婚約の話自体は何度もでるのだが、私と婚約した国はもれなく滅んでしまう。

 最初の婚約者は美しい私に釣り合う国にしようとし、国を広げようと戦を引き起こし、戦いに負けて滅んだ。別に私は国を広げて欲しいなんてたのんでないのに自滅したのだ。

 また二人目の婚約者は国の金を使いきるほど私に貢ぎ、不満がたまった民たちによって滅ぼされた。一応弁明はさせて欲しい。私はお父様から『王族は民によって支えられてるのだから、必要以上に贅沢をしてはいけない』と育てられてるため、過度な贅沢品は必要ないと思っているし、婚約者にねだったことは一度もない。それなのに、一方的に婚約者が私に貢ぎ続け、その結果……彼の国は革命で滅びた。

 最後に婚約した国の皇子は人格も見た目も優れ完璧だったのだが、私に一目惚れし、手に入れようとした皇子の腹心だった従者によって殺され、それがきっかけで国が滅んだ。ちなみにその謀反を起こした部下は、その後、同盟相手であり、私の結婚先予定だった国を滅ぼされたお父様とお兄様によって弔い合戦をはじめ、その結果、謀反を起こした部下は処刑され、滅びた国の土地はうちの国に統合された。

 私には全く非がないのだが、どれも私の美しさが原因で三つの国が滅んだ経緯から、『美滅』というあだ名が世間に広まっている。

 それどころか最近では『彩光国の公主は美しさのあまりに国が滅びるらしい。そのことを利用して美殺皇帝は滅ぼしたい国と婚約させている』という不名誉な噂も流れ出した。

お父様は世間では『化け物のようにいつまでも年を取らず、その人外の美しさで人を狂わせて殺す』と言われるほどのこれまた人外じみた美しさをもつ。国民からは『美殺皇帝』と呼ばれるほどの美しさであり、実際に私のお母様である梅鈴皇后以外の女はすべてお父様の美しさで狂って死んだ妃は山ほどいるらしい。

 お父様の側近であり、乳兄弟であり、とある呪いがかかった一族である司馬家の一族以外、同性ですら下手したら気が狂いそうになる美しさを持つお父様だ。もちろん噂は事実ではないが、そんな噂が出るのもわかる気がする。

「もう!たった三つの国が私の美しさで滅んだからってなんなのよ!お父様なんて三十人の女を美しさだけで殺してきたわよ!」

「おや、桁が違うよ。誰がそんなデマを流したんだい?」

「やっぱりデマですよね? いくら人から人外のような美しさといわれているお父様といえども三十人の人を美しさだけで殺せませんよね」

「いや、逆。男女あわせてその十倍は死んだな。なんか僕の美しさは性別を越えるらしいよ」

「はい?!美しさだけでその数の人が狂って死ぬとは化け物級の美貌では?」

「君も自覚ないのだろうけど、その化け物級の美貌を受け継いでるから三つも国を滅ぼせるんだろう。普通は美貌だけで簡単に国は滅びないよ」

「美貌だけで人を殺せる方にいわれても説得力がございませんわ」

 そんなこんなで三つの国を滅ぼした実績とそんな噂も相まって私の四度目の婚約先は見つからないでいた。そりゃあ、世間では嫁ぎ先に選ばれると国が滅びるといわれて婚約するような国はあるわけない。まともな国ならそんな地雷な国はいくら同盟を組みたくても避けるだろう。自分の命と国民の命が大事。それがまともな王家としての判断だ。

 だといえども、私の美貌のせいで縁談がこないのは納得できない。私も普通に結婚したい。

「このままだとまともな国は縁談を組まないだろうから、臣下に降嫁も考えなくてはね……といってもあまり候補がないけど」

「あらお父様、私とお父様の美貌に耐えられる臣下に心当たりがおありなの? そんな臣下がいるのなら嫁いでもいいですわ」

「とりあえずそうなれば一番の候補は司馬家だね。一族の呪いで君の美しさが効かないだろうし……年の差的にも君の兄の皇太子の側近である司馬充になると思う」

「司馬家……特に司馬充だけは絶対に嫌っ!お父様、他でお願いします」

「他といっても司馬家の男子以外で君の美貌が効かないとなると、春麗の母と兄のように人の顔が認識できない人間でない限り無理だとおもうけど」

「それでも司馬充だけは嫌!小さい頃からやつと関わってろくなことないし!あんな男と結婚するくらいなら出家します!」

「……そこまでいうなら仕方ないね。春麗がそこまでいうのなら、一年だけ猶予をあげよう。一年以内に次の婚約が決まらなければ司馬家の者と結婚してもらうからね!」

「一年もくださるのならきっと嫁ぎ先はみつかりますわ、ありがとうございます!お父様」

 なんとかだだをこね、期限を伸ばしてはみたが、一年以内に婚約とは……無理なのでは? なんてことを思っていた私に救いの手がやってきた。だがその私にとっての『救い』と思っていた話はまた別の地獄の始まりだった。


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