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169ストライク 基礎は何にする?

「ソフィアのやつ……なんて事を言い出すんだ。」



 オーウェンは1人で歩きながら吐き出すようにそう呟くと、足元に落ちていた石ころを大きく蹴り上げた。大きく弧を描いて飛んでいく小石は、そのまま草むらに姿を消す。オーウェンはその事にどこかもどかしさを感じ、小さくため息をついた。その原因がいったい何なのか……それはオーウェンにもわかっている。ソフィアが提案した例の訓練の内容のせいだ。

 彼女の提案はいくら考えても見ても無茶としか言いようがない。魔力を常に練っておけるようになれだなんて、そんな事ができるものか。魔力はスキルとして使うために練るものであって、常に練り続けるものではない。それが世の中の常識であり、誰しもが知っている当たり前のことでなのに。



「常に魔力を練っておくとか、普通はやらないんだよ。」



 物心ついた時から魔力を苦労なく扱えていた自分は、その時に応じて使うべき魔力を常に選択してスキルを使ってきた。その方法で自分の身を守ってきたし、これまで生計を立てて生きてきたわけで、そこにはソフィアが言っているような魔力の使い方なんて存在しなかった。だから、ソフィアの提案に対してこれまでの自分を否定された気持ちになり、もどかしさを感じてしまうのだと思う。


 しかし、絶対にできないかと聞かれるとはっきりとは言えないのも確かだ。なぜなら、オーウェンだってこれまで試した事はないのだから。

 


「確かに……あいつの考えの通りに魔力を扱えたら……。魔力倉に溜まった魔力をこうやって巡回させて……いや、この理論の方が……」



 魔力を常に練っている状態……それは確かに理想的な状態である。魔力を練る動作が省略できるため、より素早くスキルを発動できるようになる。

 オーウェンの意識はいつしかソフィア色に染まっていた。すでにソフィアの考えに対する批判は微塵もない。その素直さ……というか単純さが彼の長所である事は間違いなかった。





 一方、ミアはというと練習用のグラウンド……ではなく、近くの森を訪れていた。



「得意な魔力を常に循環させておく……だったかにゃ。」



 太めの木の枝に腰を掛け、そう思案する。

 ソフィアは常に魔力を巡らせるようになれとだけ自分達に伝え、それ以上の事は教えてくれなかった。最近魔力を使えるようになったミアにとっては、魔力を体に巡らせるための具体的な方法なんて正直わからない。それを考えるのも修行のうち、という事なのだろうけれど、少し難易度が高い案件になる事は間違いなかった。

 だが、ミアには迷いはなかった。



「ソフィアができるというならできるって事だにゃ。私はどの属性がいいかにゃ。」



 獣人族としてなら土属性が基本だろう。種族として細胞レベルまで記憶された属性でもあるわけだし。

 だが、それを言うなら魔属性の方がいいのかもしれない。獣人族の起源は魔人族。土属性よりも魔属性の方が本当の意味で獣人の基礎となる属性であり、この特異体質によって手に入れた属性でもある。



「でもにゃ……得意なものがいいってソフィアは言っていたしにゃ〜。」



 幹に膝を掛けたまま、ミアは逆さまにぶら下がる。逆さまに見える景色を眺めながら、小鳥の囀りや樹々の葉擦れの音を聞いていると、昔のことを思い出す。


 村の仲間に馬鹿にされた思い出。

 悔しくもあるが、今はそこまで卑下にする事はなくなった。その理由は魔力を扱えるようになったから。魔力操作とスキルを覚える事ができ、自分に自信ができたからだと思う。今度もし仲間達にあったなら、絶対に見返してやるという気持ちが強いのだ。



「見返してやる……か。そうか……それだにゃ!」



 ミアは何か思いつき、くるりと体を捻ると枝の上に起き上がった。



「いつもみんなに負けていた駆けっこ!私自身のルーツはここにあるにゃ!」



 勢いよく枝から飛び降りて地面に仁王立ちし、体に魔力を練り込んでいく。体の周りに小さな風が巻き起こり、それが木々の葉を揺らし、落ち葉を巻き上げていく。


 風属性。

 それを自分のベースとしよう。


 ミアはそう決心すると、練り込んだ魔力を両足へと移動させ、それを一気に解放する。突風と共に体が風になり、軽くなった体で森を駆け巡る。



「ソフィアの期待に応えるにゃ!次の試合、たくさん活躍するんだにゃ!」



 ミアはそう嬉しそうに笑うのだった。

自分のベースは何なのか。

2人はそれを見つけられたようです。


試合が楽しみになってきました!

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